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Lv1、召喚士の日常  作者: きょーりゅー
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Lv1、召喚士の日常 2日目

気がつくと、僕は知らないベットで寝ていた。知らない天井だ。

みたところ、木でできた小屋のようで、近くにはみた事のない女の人が座っていた。目が合うと、女の人は嬉しそうに声を上げた。

「気がつかれたんですね!」

ゆっくり体を起こすと、体がとても重く感じた。さっき感じた軽さはどこかへ行っており、お腹の暖かさも無くなっていた。

「ここは、どこ…?」

僕が泣きそうになると、女の人は慌てて背中をさすってくれた。

お花の香りが、少しした気がした。

「だ、大丈夫ですよ!怖くない怖くない…!」

少し落ち着いたところで、女の人が木でできたコップを差し出してくれた。

「はい、これをどうぞ。安心してね、これはマナポーションで、甘く作っていますから。」

差し出されたコップをもらい、ごくっと一口。

「おいしい!」

ハチミツの効いたそれは、口の中にフワッと甘さを残してくれる。お腹に流れると、またさっきみたいに暖かくなって、消えた。

「これで、トモヤさんの体に魔法エネルギーが溜まったと思います。なので、私も元気になりました!」

「ま、魔法?」

「申し遅れました、私は、エルフのリリアンと申します。正確にはダークエルフと申します。」


リリアンさんによると、この大陸は水の都ウクスといい、水資源や自然が豊かな大陸なのだそうだ。古屋の外には湖があり、湖畔にはお魚がたくさんいて、中には「サハギン族」という種族も住んでいるらしい。

その他にも大陸が多くあって、海の旅や空の旅をしないと辿り着けないほど遠くにあると教えてくれた。

リリアンさんは、ダークエルフという種族の中でも、魔力が高いらしく、エルフの集落では居場所がなく困っていたところを、アイテルさんに救われたと言っていた。

「トモヤさんは、召喚士としてこの大陸に降り立ちました。なので、私のことは自由に呼び出してくださいね。」

「しょうかんし?」

「トモヤさんは、魔法もご存じないんですよね。では説明させていただきますね。」


僕は、この世界では召喚士という役職だということを教えてもらった。召喚士は、モンスターや契約している異形族を召喚することができる能力があると、リリアンさんは言った。

「つまり、お友達になれば、いつでも駆けつけてくれるってこと?」

「その通りです!トモヤさん、すごいです。もう覚えたんですね!」

ぎゅっと抱きしめられ、僕はリリアンさんの胸に押しつけられる。く、苦しいよう。

「アイテル様から、身の回りの世話を仰せ使っているので、心配はいりません。何をするのも、どこへ行くのも自由です。あ、でもあんまり一人で遠くに行かないでくださいね。」

リリアンさんに鼻先をツンと触られ、僕はくすぐったい気持ちになった。


「じゃあちょっとお散歩してくる!」

「行ってらっしゃ、あ!ちょっと待ってください!」

僕がお散歩に出かけようと外に出ると、リリアンさんは慌てて追いかけてきた。

「どうかしたの?」

「もし、道に迷ったり困ったことがあったら、「はせ」と大きな声で言うことをお約束してください。」

「言うとどうなるの?」

リリアンさんは、僕が聞くとちょっと考えてから

「私がなんとかしますから」

とだけ言い、古屋に戻っていった。

なんのことかよくわからないけど、「はせ」と言えばいいことは、とても大事なことなんだと思った。僕はポケットに入れていた紙とペンを使って、「はせ」と10回書いた。これで忘れないと思う。


「はーせ、はーせ、せーはーせーはー。」

リリアンさんに言われた言葉を忘れないように、口ずさみながら、僕は森の中を探検していた。

近くに落ちている木の枝を拾い、大きく振りながら前に進む。途中、知らない小さい生き物たちがたくさんいたけれど、みんな僕の後ろをついて歩いてくる。なんだか冒険してるみたいだった。

しばらく歩いていると、森の先が原っぱになっているところがあった。

「あ、森の出口だ!」

僕は嬉しくなり、走って飛び出した。生き物たちも、僕に付いて走り出す。

「おや、見かけない子だね。」

「わあっ!」

僕は、ビクッとした。原っぱだけ見えていたから嬉しくて走ってきたけれど、その先に人がいるのに気づかなかった。

「どうしたんだい?迷子になったんか?」

「ぁ…、えと…。」

そのおじさんは、僕のことを迷子になった子だと思っているみたいだった。髭が生えていて、目はちょっと怖く見えた。

心臓がドキドキする。僕は、人が苦手だ。大人は特に苦手なんだ。

髭がたくさん生えているおじさんは、顔がよくわからなかった。僕は、緊張して言葉が出なくなっていた。

「な!?お前、モンスターを連れているじゃないか!!」

おじさんが僕の後ろを見て、びっくりした。僕もびっくりした。

「も、もんすたー???」

「お前、魔族だな!?誰か来てくれ!魔族が出たぞ!!!!」

「ち、ちが。」

後ろの生き物たちは、おじさんが叫ぶと驚いて森に帰ってしまった。残された僕は、怖くて、動けなくて、そのままおじさんにぶたれて倒れた。

怖くて声も出せないし、急にぶたれたから何もわからなくて、僕は倒れたままで泣き出した。

「魔族だって?」

「まだ子供じゃない!子供を攫いに来たのかしら!」

「今のうちにとっ捕まえて、奴隷にしよう!!」

僕の知らない言葉が、次々に聞こえてくる。僕はうずくまって、顔を上げることができなかった。ぶたれたところが、すごく痛いし、それに、大勢の大人が集まってきて、怖い。

「魔族め!子供だからって容赦しないぞ!!!」

僕が顔を上げると、大人たちは僕を囲んで大きな声を出していた。この人たちは、一体何を言っているんだろう。

その時、僕はふとリリアンさんが言っていたことを思い出した。

『もし、道に迷ったり困ったことがあったら、「はせ」と大きな声で言うことをお約束してください。』

「…せ」

大人たちは、木の棒やフライパンを持っていた。

「…っ!」

このままだと、僕、もしかして、死んじゃう。

「は…っ!」

助けて、誰か…!!!

「何言ってやがる!このクソ魔族が!!!!」

僕に、フライパンが降ってくる。避けられない、当たる。

その時、僕はすごく大きな声が出た。お腹の中が、急に熱くなった。


「「馳せ(はせ)!!!」」


バチィン!!!!!!!!


僕は、当たったと思った。自分に、フライパンが。ぎゅっと目をつむって耐えるつもりだった。でも、当たった音はしたけれど、僕は痛くなかった。

怖くて目は開けられないけれど、なぜか花の香りがした。

僕はハッとして目を開けると、そこには、フライパンを背中で受けているリリアンさんがいた。


「ね…?私が、なんとか、したでしょう?」

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