表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lv1、召喚士の日常  作者: きょーりゅー
2/4

Lv1、召喚士の日常 1日目

人付き合いが苦手な僕は、森で動物たちと戯れる日常を送っていた。

そんなある日、ひょんなことから見知らぬウサギに案内され、洞窟に辿りつく。

助けを求める声を頼りに奥へ進むと、動物の耳の生えた女の子が泣いていた。

女の子は、どうやら足を怪我しているようだった。

「大丈夫?」

「足を捻っちゃったみたいで、動けないの。」

足を覗き込む僕を見て、女の子はしゅんとして言った。女の子は小柄で、僕よりも小さかった。全身もふもふで、動物のような耳はピンと立っていた。洋服はフリフリで、女の子なんだなあと僕は思った。

「作り物の耳?かわいい格好だね。」

泣いている女の子の頭を撫でる。作り物にしては、ちゃんとぴこぴこしていて可愛いなあ。

「ひゃうっ!?」

「ご、ごめん!」

耳を触った途端、女の子はびくりと体を震わせた。僕は瞬間、距離を取った。

「驚かせるつもりはなかったんだ。ただ、動物の耳が生えてるから、作り物かと思って。」

「こ、これはナノのなの!作り物じゃないの!」

「ご、ごめん。僕、耳の生えてる人見るの初めてで。」

頭を下げながら僕がいうと、女の子は耳を整えながら足を摩った。

「足、痛い?」

「痛くて動けないの。ここに石を取りにきたんだけど、高いところのを取ってたら落ちちゃって。その拍子に足を捻ったの。」

てへ、と笑う女の子。でも、ここの石は綺麗だから、高いところのものも取りたい気持ちはなんとなくわかる。女の子の傍らには、とても大きいカバンがあって、その中から綺麗な石が見えていた。

「こんなに取ったの!これでねーねのところに持って行ったら、私も『まじゅー』になれるの!」

「そうなんだ、でもこんなに大荷物じゃあ、歩いて帰れないんじゃない?」

「これは、重さを軽減する『ばふ』が付いてるの!だから重くないの!」

僕が心配すると、女の子はカバンを差し出して言った。僕は言われるがままにカバンを持ってみる。

「ほんとだ、思ったより軽いね。全然持てる。」

「そうなの!でもね、足が痛いから持って帰れないの。困ったの〜。」

うーんと唸る女の子、僕もうーんと唸りながら、二人でどうすればいいか考えていた。


「お母さん、疲れたからおんぶして!」

「もう、しょうがないわね。はい、どうぞ。」

「わーい!」


僕は、お母さんに一昨日おんぶしてもらったことを思い出した。そうだ、おんぶだ!

「えーと、君、歩けないよね。おんぶしてあげるよ。」

「ほんと?それならねーねのところに帰れるの!」

「カバンも軽いし、君くらいなら、僕でもおんぶできると思うから。」

僕は女の子に背中を差し出し、カバンを肩にかけた。女の子はヨイショと背中に乗ってきたが、ふわふわの綿を抱えているみたいに軽かった。


最初洞窟に入った時より、出る時の方が早い気がした。お話ししながら歩いたからかな?

女の子をおんぶしながら、洞窟を出ると、辺りは夕暮れになっていた。

「ここから帰り道はわかる?送っていくよ。」

「ありがとうなの!ちょっと待つの。」

女の子は、スカートのポケットから光る時計を出した。時計…ううん、これは時計じゃなくて、方位磁石だ。とてもキラキラしたそれを空に掲げると、すごく光り出した。

「な、なに!?」

「ちょっとだけ眩しいの、我慢するか目を瞑るの!」

「う、うん。」

言われるがままに目を瞑る。森の音が、消える。周りが真っ暗になり、僕は驚いて目を強く瞑った。


「ありがとう、もう目を開けていいの。」

女の子に肩をトントンされ、僕は目を開けた。

「ここ…どこ?」

中央に噴水がある。その周りにはベンチがあり、一人の羽根の生えた…そう、まるで、天使のような人が座っていた。

「あら、どなたかしら。」

その人は、座ったままこちらに視線を移す。近くには、鳥や動物…いや、鳥や動物の人がいた。みんな、その人を慕っているようで擦り付いたり寄り添ったりしている。

「後ろにいるのは、ナノね。お帰りなさい。遅かったわね、心配したのよ。」

「足を怪我しちゃって、動けなくなってたところを、この子に助けてもらったの!」

「あらあら、うちのナノがごめんなさいね。ささ、こちらに来て。」

ベンチに案内され、僕は歩き出した。その人の周りにいた子たちは、そそくさと雲の中に消えていった。怖がらせちゃったかな。

僕は、ベンチに女の子を降ろし、カバンを差し出した。

「はいこれ。」

「ありがとうなのー!」

カバンを大事そうに抱きしめ、嬉しそうにする女の子。僕は、何だかいつもより体が軽く感じた。女の子やカバンは重くなかったけど、背負う前より軽くなった気がする。

「…あら、貴方。…そうね、お礼をしたいから、お名前を伺ってもいいかしら。」

視線をこちらに向けて、うーんと唸りながらその人は言った。そういえば、女の子にも名前教えてなかったっけ。

「お礼なんて、僕はただおんぶしただけなので!」

お礼と聞いて、僕はびっくりして手を前に出して、大きく振って答えた。

「お、男だから、女の子を守るのは…その、当然というか…なんというか…。」

後ろを向いて、モジモジしていた僕に、その人は、続けて言った。

「私は、名をアイテルと言います。汝、名前を。」

凛とした声が空間に響く。僕は、その声が脳に直接届いたのではないかと錯覚するくらい、はっきりと聞こえた。息を呑む。次いで。

「ナノは下級魔族ですが、人の子に助けてもらえなければ、ここに辿り着くことは叶わなかったでしょう。貴方は、心優しい少年です。是非お礼をさせてください。さ、名前を。」

木野瀬きのせ 友也ともやと言います。」

僕は、ハッとした。気がついたら、名前を言っていた。吸い込まれるような声に、本当に吸い込まれてしまったようだ。

「友也さんですね、ありがとう。貴方は生まれつき、野生の動物に好かれる性質があるようですね。」

「はい、森ではいつも動物たちと過ごしていました。」

「貴方は、今の暮らしに満足していますか?」

急に、どういう意味だろう?僕は目を白黒させてしまう。言葉に詰まっていると、アイテルさんは続けて言った。

「貴方は、もっと過ごしやすい環境にいる必要があるかもしれません。貴方の環境は、何か苦しくありませんか?」

確かに、僕は孤独だ。他の人のいる環境では、落ち着かないし、話に入ることもできない。もしかしたら、それを変えることができる環境なら、僕は—————。

「どこか、知らないところで人じゃない——動物たちと仲良く暮らしたい。僕は、人が苦手なんです。」

「人は愚かな生き物です、互いを尊重し合うことが難しい、非常に矮小な生き物だと、私は思いますよ。」

「家でも、学校でも、居場所がないんです。だから、森でいつも動物たちと過ごしていました。だから、そんな暮らしがしたいです。」

僕は、ぽつぽつと言った。思い出したら涙が出てきた。僕は学校では空気のような存在で、友達はいなかった。勉強も好きじゃなかった。勉強の時間は、いつもノートに動物や空想の動物を描いては「早く終われ、早く終われ」と思っていた。

僕は、涙が止まらなかった。嗚咽混じりに泣きじゃくっていると、アイテルさんは僕に手を差し伸べると、涙を拭いてくれた。

「よほど人間の世界が辛かったんですね。」

「ふ…え…、ぁい…」

「では、貴方に選択肢を与えましょう。」

アイテルさんが手を合わせ、僕に祈るようにすると、僕の体が突然光り出した。

「えっ!?な、何!?」

「大丈夫です、そのまま、そのままで。」

慌てる僕を言葉で制し、祈り続けるアイテルさん。次第に光が僕のお腹の中に収まっていく。とても、暖かい。

「そのまま目を閉じて、暖かさを感じて。」

言われるがままに目を閉じる。お腹の中が暖かく、体が軽くなるのを感じる。

「貴方は選択できます。このまま家に帰るか。」

頭の中に、アイテルさんの声が響く。心臓が、早くなる。

「それとも、私たちの世界で暮らすかを。」

僕は、心の中で祈るように思った。

アイテルさんたちの世界に、行きたいと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ