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Lv1、召喚士の日常  作者: きょーりゅー
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Lv1、召喚士の日常 0日目

人は、孤独だ。

僕は、友達がいなかった。学校でも、近所でも、友達と呼べる存在はいなかった。

唯一、鳥や小動物、そう言ったものに好かれる傾向はあったものの、人間の友達を作るのは、僕にはハードルが高かった。

人は何を考えているのか、よくわからないのが怖かった。それもあって、休みの日や暇な時はしょっちゅう近所の森に行っていたが、母も父も、僕が森に一人で行くのを止めはしなかった。

「これ、お守りね。お外で遊ぶんだったら、ちゃんとこれを持って行く事。」

母に渡された小さなお守り、首から下げて、僕は森に走って行った。


森はいい、木陰で休んでいると、リスや鳥が寄ってきて、寂しくない。

「今日は給食のパンを持ってきたんだ。食べてね」

パンをちぎって渡すと、動物たちは喜んでくれる。動物たちは、僕にとってはかけがえのない友達だ。

いつものメンツたちがパンを美味しそうにほうばる。鳥のさえずり、木々のなびく音。僕の一番好きな時間だ。

そんな時、ふと茂みから見たことのない動物が出てきた。

「君も食べるかい?」

僕は残りのパンを、その動物に渡す。ウサギのようだけど、頭にツノが生えていて、ちょっと大きい。動物図鑑にも、こんなウサギは載ってなかった気がする。

「キュキュイ」

不思議な鳴き声のそれは、パンを咥えて茂みに戻ってしまった。

「怖がらせちゃったかな」

しょんぼりしていたところ、また茂みから顔を出して、すぐ茂みに戻ってしまった。

「もしかして、着いてきてってこと?」

僕は他の動物に「またね」と言い、ウサギを追いかけることにした。


茂みに入ると、ウサギは少し遠くにいて、こっちを振り返り、走り出した。

「ちょ、ちょっと待って!」

どんどん奥に進んでいくウサギ、追いかける僕。こんなに森の深いところまでくるのは初めてだから、ドキドキする。

「もしかして、不思議の国のアリスみたいに、どこかへ連れてってくれるのかな」

暫く追いかけっこをして、茂みを進んでいくと。

「わ、大きい洞窟だ」

いつの間にかウサギの姿はなく、どうやら見失ってしまったようだ。


「…て」


洞窟の方から、声が聞こえた。

慌てて茂みに身を潜める。人が、こんな森の深くにいるのだろうか。僕みたいな物好きもいるのか、などと考えていると、声が鮮明に聞こえてくる。

「誰…、け…助けて。」

確かに、僕には助けてと聞こえた。辺りを見回すが、人の気配はない。

「…どこにいるの?」

僕は、思わず声を出した。目の前にある洞窟に、僕の声が響いていた。

「助けて。」

はっきりと、助けを呼ぶ声がした。

「待ってて!大人の人を呼んでくる!」

僕は、洞窟に向かって叫んだ。が、随分進んできた道だ。帰り道が、わからなかった。

これでは大人を呼んでくるどころか、自分も迷子になってしまう。その間に助けを求めている声の主が、どうなってしまうのかと考えた。

「い、今行くよ!」

僕は、また洞窟に叫び、心を決めた。助けなくちゃ。


洞窟の中に入って、どれくらい経っただろうか。依然声は止まず、奥に進むにつれて大きくなっていく。

洞窟の中は暗いと思っていたけれど、緑色の光が奥まで続いている。

本当は、怖い。知らない人を助けて、何て言われるだろう。感謝されるのかな。それとも、怒られてしまうのかな。僕は子供だから、頼りないかもしれない。でも、誰かが助けを求めているなら、僕が助けないと。そういい聞かせて、首から下げたお守りをぎゅっと握りしめた。


「わあ、きれい」

一番奥に着くと、洞窟全体が宝石箱みたいにキラキラしていた。あっちは赤、こっちは青、それから…

「…誰かいるの?」

「ひゃああ」

声に驚いて、僕はとんでもない声を出した。声の主は、岩陰にいるようだ。

「だ、大丈夫?声がしたら、僕、来て、それで…えっ」

言いながら岩陰に回り込むと、そこには泣きながら足を摩っている、動物の耳が生えた女の子がいた。

「寂しかったの、来てくれてありがとう。」

人でもなければ、何だろう。僕が見たことのない声の主は、泣きながら笑って言った。


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