比べるなんておこがましい
服のバランスで合う合わないもあるから、と布を当てて雑に縫い合わされた。
何となくの服の形を作り、このバランスは合うとかもうちょっと袖膨らませた方が似合うかもとかを測っているそうだ。
「まあ、当然ながら俺はその日の晩にこっそりと宿屋の裏側に行き、サックリ殺されてキメラになった……って感じ。町の中でキメラにするのは色々と問題あるからって事で山奥に移動して、その辺に居たのを仕留めて混ぜ込んではい出来上がりってなったみたい」
「凄い話だ……」
「本当にね」
素早い動きで布に糸を通して袖の絞り具合などのバランスを見つつ、クスクスと仕立て屋は可愛らしいお顔で笑う。
その顔はとても楽しそうだ。
先程までの過去を語っている時も、思い出したくない忌まわしい記憶を語るというより、どこか懐かしさを楽しむような表情だった。
……大分、吹っ切れてるんだろうな。
実際どのくらい時間が経過しているのかは知らないが、キメラになってある程度の時間が経過すれば、その分だけ過去も遠くなるものだ。
織姫として仕事をしたり護衛と楽しく過ごしているなら、尚の事過去の辛い記憶は塗り潰されていく事だろう。
「で、キメラの説明を受けて、その辺の通行人を襲うキメラも多いし空腹時はどうしても襲っちゃうけど、そうならないよう悪人を狙って仕留めつつストックしておくと便利だよーって教わったり」
「私達の場合は適当にその辺で転がってるヤツ食べてるからストックとか全然してないなあ」
「そういうのが平気なタイプのキメラに何言っても無駄だとは思うけど、そーいうのをやらないようにしてる俺の目の前で言うかな普通……」
「あてっ」
人喰ってる時点で同じ穴の狢とはいえドン引きだよ、と布に通された針が皮膚に触れてチクっとした。
別に針が刺さるくらいは何とも無いが、激痛じゃない場合は普通に痛みが伝わるのでなんともかんとも。
……注射器とか駄目なタイプだもんな、私……。
歯医者も駄目だったが、こういうチクチク系は駄目だ。
お尻を叩かれるとかのプレイ的なスパンキングなら全然ウェルカムだけど、チクチク系は論外である。
マゾと聞くと痛いなら何でも良いんだろとか言ってくる人も居たりするが、マゾにだって案外アウトセーフはあるんだぞ。
「最初の頃は適当にあちこち移動してたけど、ほら、ここって糸が無尽蔵にあるだろ? 都合が良かったし、森の奥なら良いかなって思って住み着いたんだ。元々は自分が好きで……っていうか気分転換とかを兼ねて好きなように服を作ってたけど、結果的にそれが馴染んだのも良かったな」
「織姫の噂が出回るくらいだもんなあ」
「ふふ、客にもなれないような厄介さんは作業の邪魔をしてくる事もあったから食い殺してたけど、そうじゃない真っ当な人が相手なら普通に接してたのもあるかな。ズマンが来るまではここに来たら普通に応対してたし」
「護衛はわりと最近って事?」
「うん」
えーと、と仕立て屋はまた別の布を背中の脚で確保しつつ、思い出すように宙へと視線を向けながら指折り数えた。
「俺がキメラになったのは十四歳の時でー」
「十四!?」
「そんな驚く?」
俺より若い年齢でキメラになった人は他にも居るけど? と首を傾げられたが、そんなあっさりで良いんだろうか。
つまり家族からモラハラとかを受け、精神的に繊細な時期である思春期に限界を迎え、十四で死を考える程に世を儚んでいたという事だろうに。
まあそれ言っちゃうと妹猫なんて流行病で周辺がほぼ全滅で大事な家族も見送って心神喪失状態だったところをサックリやられ、何ならキメラになった現在でも痛みと恐怖に怯えながら暮らしているわけだが。
うーむ、改めて考えると妹猫の環境が酷過ぎる。
……でも将来有望そうに見えてもキメラな時点で将来性無いし、顔は良くても体型が好みじゃないし、そもそも妹と引き離そうもんなら自称姉に惨たらしく殺されるのは目に見えてるっていう。
妹に少しでも性的な目を向けていると判断された瞬間に反射で目潰しを食らわせて来るような女だからな、アイツ。
私は正気で変態だけど、自称姉は狂ってる感じが漂ってるので本当洒落にならん。
ああいうタイプは話が通じないので触れぬが仏。おっと、触らぬ神に祟りなしと知らぬが仏が混ざったぜ。でも何となく通じる気はするから日本語って不思議。
「まあその後は十年……か二十年? くらい? 適当に歩いてて、ここが良いなーって思って住み着いて、しばらくしたらズマンと出会ったって感じだな」
「出会って、あっさり同居?」
「あっさりって程じゃなかったけど、ズマンは元々面倒見が良いタイプだったから。あんまり移動するタイプでも無い上に、俺が絡まれてるところを見て守らないとって思ったみたいでさあ。それから……三十年、四十年? くらいの付き合い」
三十年と四十年って実質十年差だけど、その十年って結構デカいと思うんですがどうですかね。
十年もあったら義務教育が始まって終わってもお釣りがくるぞ。
……まあ異世界落っこちてキメラになってからは驚く程に時間の流れが速いし、そんなもんかもなあ。
楽しい事があると時間の流れというのは実にあっという間に過ぎ去ってゆく。
近くに主様という存在するだけで尊くてありがたくてその姿を眺めているだけで一晩明けるくらいには充実度が高い方が居るのもあって、時の流れが本当に一瞬だ。
時間泥棒に時間を奪われたかのようだが、時間泥棒にやられると時間が足りなくてカリカリする方面らしいので、心の安らぎや豊かさに繋がるこの状況は大変有意義に時間を使用出来ているという事だろう。
時間が足りなくてストレスが溜まってる時こそ大事だよな、娯楽って。
「ズマンの方は元々ネイチャー大陸のどっかで孤児だったらしくて、同じ孤児達のチームに入って悪さしてたみたい。ああ、孤児って言っても二十は超えてたみたいなんだけど、やり口が悪質な事から馬鹿に仕留められて、そのタイミングで近くに時計くんがあったから何となくでキメラ化されたってさ」
「何となくでキメラ化か……」
私も何となくでキメラ化された感じだったが、護衛もそうだったとは。
しかし馬鹿って誰だ。本当にソレは呼び名なのか。呼び名で合ってるのか。
普通に馬鹿な誰かを差してるように思うが、しかしキメラはそういう部分から呼び名を決定してくるのでそんな呼び名もあり得てしまう現実よ。
私だって変態だからという理由から変態呼びされてるしね。
「でもアイツ、本当、こう、何ていうかさあ……」
「ん?」
どこか嬉しそうな気配を漂わせながらも顔を顰め、仕立て屋は何かに耐えるように口の端を引き攣らせている。
それに首を傾げれば、仕立て屋は口を開いた。
「……過保護でしょ?」
「記憶消すくらいには過保護っぽいね」
「そうなんだよ! 俺の事が心配だし不安だからって言って保護者面で守ってくれるし、場合によっては俺が自分の足で歩くのすら却下して腕に乗せて移動するくらいには過保護なんだよ! アイツ!」
「おおう」
確かに護衛はデカいし仕立て屋とは三十センチくらいの身長差があるので余裕だろうが、実際仕立て屋の身長は四捨五入すれば180と言えるような高身長。
二メートル越えの大男が華奢な高身長を抱きかかえてるって、近くで見てる人の遠近感が狂う光景だろうな、ソレ。
「まあ、俺としては、こう、ちょっと、嬉しいところもあるんだけど」
「嬉しいんだ」
「…………俺だけが嬉しいのが! 嫌なの!」
「イッデェ!」
「あっごめん」
違う色の布を重ねて要所要所で待ち針を刺されて服の形が作られていたわけだが、ソレが思いっきりぶっ刺さった。
マジでふざけるなよこの貧乳。
……そういえば仕立て屋って結局女、で良いのか……?
顔付きは女性だし機織り姫混ざってるし、何より股間を見るに男性器はついてなさそう。
胸はまな板だし腹回りはくびれとか女の骨格男の骨格とか関係無しに薄っぺらくて、肉付きも男女の性差が出る前みたいな薄さ。
生前の年齢を聞いたら何となく察するところはあるけれど、そういった理由から性別がわかりにくい。
まあ巨乳じゃない時点で男女どっちだろうがどっちでもなかろうが両方だろうがどうでも良いけれど。
巨乳じゃないなら万物等しくどうでもよろしい。
「それがさ、アイツさ、俺がアイツの事をどう思ってるかとかわかりそうなもんなのにさ、完全にスルーっていうかさあ……」
「はあ」
「俺が甘えても! 調子悪いんじゃねえのかとか! そんな事しか言わない癖に! なのに普段はずーっと傍で過保護に接されて! 大事にされて! それなのにアイツ俺の事そういう目で見てこないし! 何なんだよ一体!」
よくわからんが愚痴られているらしい。
温泉でもこんな事あったなと思いつつ、口の中に甘ったるさを感じ始めた。
マジで味覚として感じるくらいに甘ったるい。
せめて濃いめの紅茶を寄越してから語って欲しかった。
「……やっぱ俺の顔に魅了されてるだけなのかな」
「凄い自信満々な発言だ……」
「だって元々の顔じゃないからこの顔が上等な面してるってのはわかるんだよ! 客観的に! この顔に勝手に魅了されて絡んで来るヤツ多かったし! アイツも可愛い顔してるんだから無駄な戦闘はするなとか言ってくるし! そうやって俺をときめかせてドキドキさせる癖に俺が顔赤くしてたら具合悪いんじゃねえかとか気温高いかとかしか言わないし! 心配してくれるのは嬉しいけどそうじゃないだろ!?」
その後も数十分程の間色々と布を当てられたりしながら愚痴られた。
私に言うなよそんな事を。
・
既にある程度わかっているからか、主様の方は十数分であっさり終わった。
私の方が長引いたのは初見の客である事と、ついつい色々話し込んでしまったのが原因だろう。
「じゃ、とりあえずこっから大量生産に入るよ。素早く作るつもりではあるけど、流石に量が多過ぎるからしばらく村で待機するか、三か月くらいしてから村に来て」
「長くないかい?」
「諦観者だけでも相当数の注文なのに、変態の分も同じ量なんだもん。そりゃいつもより時間は掛かるよ。毎日着替えても二年は余裕だろうなって量だしさあ」
そう愚痴りながらも楽しそうな笑みを浮かべる仕立て屋に見送られ、私と主様は彼女の家を後にした。
何故かついてくる護衛に首を傾げながら、糸垂らしの森を歩いてゆく。
「えーと……護衛は何の用? 買い物?」
「用事だ用事。あと諦観者、三か月って書いたメモな」
「ああ、そうだね。物的証拠があれば、いつ頃出来上がるかもわかるものだし。それが無いと無駄に待ち続けて不愉快になりかねない」
主様は護衛から渡されたメモを受け取り、太ももにあるクロスベルトに挟んでいた。
随分とえっちな収納だがとても良いと思います。ひゃっほう。
「あ、そうだ護衛」
「何だ変態」
「そうわかりやすく警戒するなよ! 傷付くだろうが! 別に何もしようとか思っちゃいないよ! そりゃその筋肉は素晴らしいなとか露出された腹筋にヨダレが出そうとか水とか垂らしてへっへっへ腹筋の凹凸に沿って水が流れて行くねえへっへっへとかやりたいけど!」
「気持ち悪っ……」
「同意するよ」
欲望のままに本心を告げたら護衛には顔を青褪めさせて口元を抑えるという本気のドン引きをされ、主様には真顔で護衛に同意された。
クッ、筋肉好きならわかってくれるだろうに同士が居ない悲しみよ。
巨乳で言うならおっぱいを手で支えてぎゅむっとさせて谷間にお酒とか注いでおっぱい酒じゃヒャッハーと楽しみたいとか、ああいう欲望に近い。
誰だってそういうのに興奮する素養は持っているだろうに、二人に通じなくて残念だ。
「それよりも護衛、お前その気があるのか無いのかハッキリさせとけよ。ひたすら愚痴られたからな私」
「何の話だ」
「仕立て屋に対する態度ってか、対応? 本気でド天然対応してんの? それとも意図して無視してんの?」
そう問いかければ、護衛が横目でチラリとこちらを見たのがわかった。
サングラスの隙間から見えるその目付きが悪い茶色の目は、何かを考えているような色を灯している。
「……気付いたとして、ソレでどうしろってんだ」
す、と視線を戻して護衛は言う。
「そんなもん、気まずくなるだけだろ」
「おいこらやっぱわかってやってんだなお前」
「逆に聞くが、お前は思わねえのか。自分なんかが優れた部分しかないようなヤツの隣に居るって事に、劣等感とか、不安とか、申し訳なさとか」
「無いね」
即答してやった。
「劣等感だの不安だの申し訳ないだの笑止千万! 主様という優れた存在に並び立てるヤツが居ると思う方が馬鹿じゃないか! 並び立てると思う事の方がおこがましい! そんな素晴らしい要素を沢山備えてる事に劣等感なんて身の程知らずが思う事! だって主様という素晴らしい存在なら! それだけ素晴らしいのがデフォルト! 当然! 基本装備! 土台が違う癖に何をほざいてんだって話な!?」
「うるさい」
「いいえ言わせてもらいます大音量で!」
主様に顔を顰められても止まれない。いや、ここで止まるなど出来るはずもない。そういうわけで言わせてもらうぜ私のターン!
「そもそも! 主様という最上の存在が居るなら! その他は全てが有象無象! 私もお前もクラスのマドンナも世界一の大富豪もそこらの石の下で越冬してる虫も干物になってる魚も! 全て等しく主様より下のランク! 私なんかが申し訳ないなんて片腹痛い! 他の誰が並び立ったところで身の程知らずである事に変わりなし! それなら身の程を知った上で主様の眷属であり使用人であり都合の良い道具であり! そういうポジションを維持するのが正解です! 劣等感抱くも何も土俵違うのに何言ってんだって話だよこんなのは! ですよね主様!」
「それには頷くけれど、うるさい。そして長い」
「それだけ主様は素晴らしいって事ですよ! 一緒に過ごす事を本人に許されているなら私が何かを考える必要なんて一切無し! 寧ろそこで何か思うようなら主様の判断を疑ってるって事で不敬罪! 私は主様のお傍に居る事を許されている! それが事実だ何を躊躇う必要がある時間操作エロ御用達能力者!」
「殺すぞテメェ」
殺意しか湧かねえ呼び方をすんな、と地の底から這い上がって来た怨念激ヤバ怨霊みたいな声で脅された。
何だよお前がどうでも良い事で悩んでるからそんな事悩むだけ無駄だって教えてあげただけだろ。
第一、それだけ優れた相手だってわかってて、尚且つ好意を抱いているなら、そんな相手と一緒に居る事を許されてるんだぜと胸を張れば良いだろうに。
「てかさ、相手が許してくれてるのを拒否するとか、何様だよお前は。相手の見る目を疑ってんのか。それだけ認められたって事を誇れよな。いつまでもうじうじしてる方が失礼だろ」
「まあ、僕が認めた誰かが、自分自身でソレを否定するようなら、僕の審美眼を一切信用していないという事になるからね。そういった反応は非常に不愉快だ」
こちらに視線を向ける事なく真っ直ぐ前を見据えたままな主様だが、しっかり援護射撃をしてくれた。
実際、自分が好きな作品があるとして、それを作者自身が否定してきたら悲しいものだ。
好きって思う誰かが、っていうか私が居るんだからそれを勝手に否定しないで欲しい。例え作者だろうと私の好きを否定する権利などは無いのだ。いや、作者だからこそ自分の作品をどう言っても良いという権利はあるだろうけどさ。
「…………好き勝手言いやがって」
元からへの字口なのを一層への字口にした護衛がそう呟くと同時、糸が垂れ下がった木々の密集地を抜けた。
森を出ればすっかり青空が広がっていて、思ったよりもあそこに長居をしていたらしい。
まあ森の中からも明るいのはわかっていたが、ここまで明るい時間帯だったとは。
「確かに見送ったぜ。俺は帰る」
「あっ、コラ! せめて今後どういう対応するかぐらい教えろ!」
「うるせえうるせえ」
誰が言うか、と手でシッシと払われた。こんにゃろう。
「じゃあな」
そう言って背を向けた護衛が森へ入る際、ひらりとこちらに手を振った。
振られた手の甲にある時計は現在の時刻を示していたはずだが、突然その長針がぐるぐると逆方向に回り始め、その動きに合わせて短針も時間を遡っていく。
ふと気付けば、私と主様は森の前に立っていた。
いかんいかんこれからこの糸垂らしの森に入るのに何をぼんやりしてたんだ、とまで思い、気付く。
「あれ、…………あっれえ!? えっ、朝なんですが!? 何で!? 日が暮れたし今から森へ入ろうとした瞬間じゃなかったですっけ!? あっれ!?」
「うるさい」
「ミッ」
水平チョップによって目が潰された。
目というか目の周辺の頭蓋骨ごと陥没して一回死んだ気がするがすぐに復活したのでヨシとしておこう。
それよりも問題は目の前の状況だ。
……え、本当についさっきまで夜だったはずなのにいつの間に朝?
太陽の位置からすると朝どころか昼に差し掛かりそうなレベルで午前中。
何だ何だ、どこかでギャングのボスがキングなクリムゾンでも発動してたとでも言うのか。でもアレ行動も実行されてたはずだよなあ。
「……ふん」
何やらえっちな感じに、具体的にはエロい店でチップを差し込まれるかの如く太もものクロスベルトに挟まれていたメモを手に取った主様はそれを確認し、まあ良いかといった様子で鼻を鳴らす。
満足とはいかないが不機嫌になる程でも無い、といった様子だ。
「さっきまで無かったはずですよね、そのメモ」
「そうだね」
そう、そんなにもえっちな挟まれ方をしていたならここまでの道中で当然気付く。
なのに知らない間に挟まれていたし、何なら周囲には嗅ぎ慣れない匂いがする。
……ドラゴンの嗅覚で感じるんだから間違いないな……!
その辺の通行人とかではなく、ああこれはしっかり交流しましたねというような強い匂い。
どうやら二種類の匂いがあるが、片方の女性らしい白い小花がふんわりした印象の匂いの方は私のあちこちに沁みついている。
というか服の下まで匂いがついてんだけどマジで何があったというんだ。
「ま、まさか時間停止能力者が時間を停止させている間にエロい事を……!? そのメモは使用感の感想とかですか!? 主様に不埒な事をする輩が居たなら世界の果てだろうが異世界だろうが追いかけて確保してどんな感じだったか詳しく聞いた上で惨たらしく殺さないと!」
「少なくともキミの発想は的外れだから安心すると良い。そしてその口を閉じろ」
「はい!」
ビシッと敬礼すれば疲れたように溜め息を吐かれた。
「まあ良いか。目的は達成したみたいだから宿に戻ろう。三か月どう時間を潰すか……考えるのも面倒だ」
はて、三か月って何の事だろう。
というか目的を達成した覚えが全くないが、まさか私もあのジジイが言っていた織姫によって記憶を消されでもしたんだろうか。
今は口を閉じるよう言われたので聞けないけれど、後で主様に聞いてみよう。




