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赤のキメラは今日も主様に興奮してます!  作者:
鳥籠と執事と小鳥
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赤裸々下世話な酔っ払い共



 しかしまあ、擬態せずとも人間に近い見た目のキメラが居るとは驚きだった。

 ()()も背中のネジさえ見なければ殆ど人間だが、背中に堂々と存在している大きなネジがあっては人里に下りる事など出来ないだろう。

 が、()()の場合は本当に右目くらいしか見た目に人外要素が無く、何なら右目を見られたところで義眼と言えば誤魔化せるだろうビジュアルだ。


 ……かと思えば存在自体が海と同化してる()()なんかも居るわけだし。


 キメラというのは本当に多種多様な存在が居るものだ、とちょっぴり感心してしまう。

 擬態要らずでありながら、その内面は人間時から変わらず危険な性犯罪者だが、人食いキメラに倫理観がどうのと言える権利は無いのでお口をチャック。

 言ったところでもうやりませんとなるはずも無いし、下手するとこちらの記憶を改竄される恐れもあるので触らぬキメラに祟りなし。


 ……言われてやめるんなら、四百年以上も同じ性癖抱えないよなあ。


 初期キメラ達が実験台にされてたのは四百年前との事なので、年季が入りまくった性癖である。

 まあ性癖はどう足掻いたって変更不可能なので致し方なし。

 新開拓は無意識下でも出来るものだが、性癖を放棄なんて出来るはずもないのだ。

 出来るヤツは最初っから性欲が浅くて薄いか、本気で出家して解脱済みみたいなヤツくらいだろう。



「んで? ()()の方は?」


「我か? 我の方は出られぬ檻という魔物だな」


「出られぬ檻」



 さっきもそうだが、魔物名なのかソレ、みたいなネーミングだ。

 しかし外国語とかに訳すと途端にソレっぽくなりそうなので、あり得なくはないネーミングなのかもしれない。

 スパイダーな男だって日本語にしちゃうと蜘蛛男っていうアバンでやられそうな怪人名にしかならないもんなあ。



「まあ、大して説明が難しい魔物でも無い。檻型の人工魔物であり、特定の対象を逃さぬよう作られた檻だ。強制拘束用、って言やァ大体合ってる」


「私が急に動けなくなったみたいなアレか」


「目視出来る檻でも目視不可の檻でも、それこそ概念的な檻でも好き勝手出来る仕様だからなァ」



 逃げられねえように囲うってのは楽しいぜェ、と凶悪に笑い、()()はベェと舌を出す。

 そんな嗜虐的な笑みをする巨乳だなんて興奮しちゃうな。もっともっと!



「あ? 何テンション上げてんだテメェ。気持ち悪い」


「酷い! 素敵なサド笑みに興奮しただけじゃないか!」


「初心さが欠片もねェヤツに興味は無いっつってんだろ。女ってだけでも我の中じゃ減点対象だが、男だったとしても初心さがねェんじゃ存在してる価値もありゃしねェ」



 ケッ、と不機嫌そうに顔を背けられた。

 うーむ、好みな相手の性癖に私の存在が一致しないのは悲しい事だが、相手の性癖に一貫性があるのは好ましい事なので致し方なし。

 やはり拘りのある性癖というのは揺らぐ事のない芯があってこそだしな。



「ま、我に混ざってる魔物についての説明は以上だぜェ。ただの都合の良い檻でしかねェんだからよォ」


「え、マジでそんだけなの?」


「端的な説明だと、実際そういった扱いになってしまう部分はありますね」



 顔を真っ赤にしたままケラケラ笑う()()の言葉に驚くと、グラスの中の酒をくるくると揺らしていた()()がウククと微笑む。



「しかし、汎用性はあるのですよ。例えば対象をベッドの上に放り、ベッドから降りられないように不可視の檻を用意してしまえば、対象は決してベッドから降りられなくなるのです。カギが存在しないからこそ、無理難題をカギとして設定してしまえばどう足掻いても逃げ出せませんから……とっても、楽しいですよ?」



 ……うっわ、悪い顔。


 ()()の方も中々にあくどい笑みが似合ってら。

 しかし、要するに範囲を設定した上で見えない壁がある空間に閉じ込め、〇〇しないと出られない部屋みたいな空間をご用意可能にするというわけか。

 私が最初に身動きを取れなくされたのも不可視の檻にやられた結果のようだし、ネットで見かけたキャラクターを狭い箱に詰めるアレみたいな状態になっていた、みたいな事だろうか。わからんけどそんな気がする。


 ……どうせならネットで見かけるように誰かとロッカー的空間に閉じ込められたかったなあ畜生!


 主様と狭い空間に二人きりでギッチギチとか、想像するだけで興奮してくる。

 主様の香りを至近距離で好きなだけ堪能出来るだけでも五体投地モノだというのに、ボディが密着する事によるラッキースケベまで可能という事だ。

 クッソ、何て素晴らしい能力なんだ。



「あァ、楽しかったよなァァァ」



 ギィイ、と()()の口角が耳まで裂けたかのように吊り上げられる。



「アルエットをベッドに囲い込んでやった時なんかよォ、トイレ行きたくってボロボロ涙零して、だけど我ら相手に素直に小便したいなんざ恥ずかしくって言えねェもんだから顔真っ赤にして股押さえながらもじもじしててよォォ」


「実に可愛らしい姿でしたねえ……ウクク。プライドと羞恥から言えず、しかしどうにか伝えようと奮闘し、挙句の果てに私達の前で我慢し切れずベッドの上で放尿してしまい……思い出すだけで、昂りますなあ」



 ウクク、と笑う()()が僅かに長い足を擦り合わせるようにしながら前傾体勢になった事については突っ込むまい。

 いわゆる前屈み状態になっているけれど、性癖ドンピシャな光景を思い出して欲情するのはよくある事だ。

 ()()の言動からするに、サドなロリショタコンという性癖のようだから尚の事ドンピシャなシチュエーションだったんだろう。



「漏らしてゆっくりと股付近の衣服が濡れ、シーツに沁み込み、小便の臭いが広がり、勢いが強くなる音がして、顔を真っ赤にして放尿による快楽から恍惚とした、しかし絶望が入り混じった表情……! あれほどまでに興奮するようなイベントは中々ねェからなァ! いやァ盛り上がったぜアレはよォ!」


「いざ食べるのはもう少し時間を掛けてからにする予定ですが、思わず手を出してしまいそうになりましたからねえ」



 まあ予めある程度の調教はしていますが、と()()は笑う。

 聞いちゃいけない話のような気がするけれど、テンションとしては酒盛り時の下ネタ話みたいなものだからそのくらいの気持ちで聞いていよう。

 聞いてたところで恥ずかしい思いをするのは()()だけだし、()()自身がこの場にいなけりゃセーフセーフ。



「んじゃあさ、()()の手足が鉄っぽいのもやっぱり」


「おう、普通に魔物が混ざった結果だなァ。ドレスで隠しちゃァいるが、肩の付け根と足の付け根から先は鉄製だ」



 言いつつ、()()は裾がヒラヒラしている袖を捲る。

 肘までがさらけ出されたその腕は黒々しく、光沢のある輝きを放っていた。

 私の鼻に届く香りが、間違いなく鉄だと伝えて来る。


 ……鉄の香りってめちゃくちゃお腹が空くんだよなあ。


 鉄食いヤギが混ざっているからか、他の鉱石よりも美味しそうな香りでヨダレが出そう。



「ま、軋む事も無く普通に動かせっから気にしてねェが。上等な義手と義足とでも言っておけば疑われる事もねェし」


「つまり()()も擬態はしてないって事か……」


「寧ろ義手で義足っつー扱いにしといた方が都合が良い時もあるからなァァ」



 袖を戻した()()は目を眇め、口角を吊り上げ、長い舌を見せつけるように垂らした。



「そうしておくだけで、抵抗する時の面倒が減るんだよ。相手は四肢が足りてないから下手に抵抗してしまうのは、っつー良心的なヤツは大人しくなる。諦めて声を抑えようとするから可愛らしいんだよなァ。逆に義手だからっつー理由でそこを本気で狙って抵抗しようとするヤツも居るが、実際は義手じゃねェからなァァァァ」



 ギヒッ、と()()が笑う。



「それで壊れる事も力が緩む事もねェから、勝手に疲れてくれて助かるぜェェ。ギヒッ、まあやりようによっちゃあ精神に檻を仕掛けて、逃げ出そうなんて思えねェ状態にしちまうって事も出来るけどなァ」


「え、何ソレ」


「精神を檻で囲われると、現状から逃げ出すってェ発想も生まれなくなるって事だよ。ここから出られるはずもないっつー思考から、外に逃げても意味が無い、ってなァ?」


「あー……成る程」



 モラハラとかDVとかの被害者がどうしても逃げ出せないアレみたいな事か。

 アレは洗脳に近い事をされている為、自分は助けてもらえない、外に出ても行く先が無い、逃げたところで何をしたいわけでもない、という状態になっている。

 それもあり、逃げたいと思う自分が弱いからいけないのだ、となる人も居るのだろう。


 ……いや、私はそういうのと無縁だからよくわかんないけど。


 ともかく、そういうのは精神が檻に囚われ、逃げ出せないようになっている状態だ。

 そうなってしまえば、誰も居なくていつでも外に出られる状態であっても、逃げ出すという選択肢が浮かばなくなってしまう。


 ……真実を上書きされた()()は恐怖で縛られてるわけでもないから、子供特有のアクティブさで外に出た結果真実に気付いてそのまま逃げ出したりしそうなもんだと思ったけど、そうはならないって事か。


 途切れ途切れとはいえ、()()の独白からすれば元々は抜け出して遊んだりもしていたっぽい。

 が、恐らく現在は()()によって外に出る発想が出ないよう精神的に囲われているのだろう。

 結果、屋敷内に囲われ、記憶を取り戻す度に上書きされる()()の完成、というわけだ。



「洗脳で記憶の上書き、精神的、肉体的な調教、んでもって外に出ないよう調節もしてるってわけか……()()も災難だな」


「あ? 小鳥?」


()()が小鳥扱いしてたから()()って呼んでたんだよ。偽名と対して変わんないだろ?」



 そう言うと、きょとんとした顔を見せていた()()が大笑いをし始めた。

 蛇口に繋げたホースを踏んづけてしまって水が止まったなーと思ったらホースが破裂したみたいな、そんな少しの間を置いた大爆笑だ。



「良いじゃねェか、ソレ! キメラのような呼び名がアイツに与えられるってのは、考えるだけで愉快だぜ! ただの食糧じゃなく、長い付き合い前提だもんなァァァ?」


「ウクク……そう考えると、美味しく美味しく育った暁には、そのままキメラにして永遠に共に居るというのも有りかもしれませんねえ」


「良い考えだなァ、()()! アイツの性格からすると、例え成長して慣れたような雰囲気を出そうともちょォっとからかってやりゃあ初心さが出るだろうし……強くもないが弱くもないプライドがある分、いつまでも可愛いオネダリが見られそうだしなァァァァァ」



 おおう、悪魔みたいに笑うなコイツら。

 そして何かごめんな()()。お前、飽きられるなり老衰なりで死ぬっていう救いも無くなるかも。例えそうなっても私の事は恨むなよ。





 酒の席という事もあってか、それとも普通に素なのか、話題が下世話な方面に変化してきた。

 元々そういう話題が多めだったが、すっかり下ネタオンリーな酔っ払い達の宴会場だ。



「やっぱり快感に慣れてねェ初物が最高だが、前後不覚になるくらいぐっちゃぐちゃにしてやるのも楽しいんだよなァ。普段は触りもしねェだろうところを強めに弄ってやると、どいつもこいつも愉快な反応しやがるし」



 ワイングラスを傾け、残った数滴を不作法にも舌を突き出すようにして飲み干した()()がそう語る。



「女に暴かれ、責め立てられ、望んでいても望んでいなくても反応する若き体! それが男となり、少しばかり調子に乗ったところで道具なり指なり我に生やしたモノなりで犯してやれば、メスのように喘ぐしかなくなる……一粒で二度美味しいとは、正にこの事よ」


()()様のように強引にやってしまうのも良いですが、私はやはり、甘く甘くとろかしてしまうのが好きですねえ。気持ち良いかどうか……それもわかっていない幼子に対し、脳を焼くような快楽を覚えさせるのは最高ですよ。腕をなぞるだけで勝手に腰が砕けるように教え込めば、人前で少し腕に触れるだけで大人しく言う事を聞く良い子になります」



 結構な数の酒を開けただろうに未だ酔った様子を見せない()()だが、執事らしく取り繕うのが面倒になったのか、座り方が先程までとは随分違う。



「信頼していた使用人に、そう、使用人という下の立場の存在に、慕っているとしても自分より下の立場である相手に襲われ、どういった反応を見せるのか……そして抗い続けるか、快楽に身を落とすか! ああ、じっくりと収穫する時が待ち遠しいですねえ。想像するだけで、堪らない……」



 ()()はひじ掛けにもたれ掛かるような体勢で、表情も作ったような部分の無い、素なのだろう少し性格悪そうな笑みを浮かべていた。

 性格悪そうな表情が滲み出ているのに、同時にどこか恍惚としていて、何ともゾクゾクさせる表情だ。

 衣服に隠された筋肉も相まってちょっと興奮してしまう。



「てか、お前はどうなんだよ。手慣れた気配させてっけど、テクの方は?」


「え、私? 悪くは無いと思うけど?」



 そういう店で働いた経験こそ無いが、そういう店で男や女を買った経験はある。

 なにより良い感じの人を見つけてはワンナイトのお誘いを掛けていた私なので、経験人数自体は多いのだ。


 ……まあ、相手が上手いかどうかはあんまり関係無かったけどな……。


 テンション上がるビジュアルしてるかどうかで私の興奮状態が左右される為、相手にテクがあったところで、テンション上がる筋肉が無いならあんまり快感拾えないのが私である。



「まあ出来れば好き勝手に跨って一方的に筋肉舐め回したりしたいけどさ、やっぱりイイトコ責める方が反射的な動きで筋肉が良い反応するじゃん!? あと巨乳な女性も好きだから、女相手も大丈夫なお店でお姉さん買ったりな。何度か通ってお互い気心知れた頃には、時々そういう技をレクチャーしてもらったりもした」


「ほう、成る程な」



 そういう方法もあるか、と()()が頷く。

 ちなみにそういう技というのは、男を喜ばせる技もそうだが、女側もどこを責められると良いのかなんかも教わった。私は精神的快楽優先型で軽度の肉体的不感症だったので、自分の経験を参考にするというのが出来なかったのだ。やっぱこういうのはプロに聞くのが一番だよな。



「ちなみに()()、対女性相手の技もある私とワンナイトする気は」


「あるわけねェだろ」



 ケッ、と頬杖をついた()()は嫌そうに顔を顰めて視線を背けた。



「テメェが男になったとしても初々しさ皆無なヤツなんざお断りだ。テクなんてのはこっちにありゃそれで良いしな」


「だよねえ」



 わかっていた答えなのでガッカリする事も無く、私は酒をぐびぐびと飲み干す。

 実際、テク持ってる方が動けばそれで気持ちよくなれるものだ。

 未熟者がメインで動こうとすると下手糞過ぎて快楽が拾えず嫌になるが、別に女の方から動いたりするのは駄目、なんて法律も無い。

 いやまあ、お口でご奉仕とかになると、ご奉仕する側にテクが無いと散々な事になるけどな。

 女はそこまで被害に遭わないから良いが、男の場合は歯が当たって痛い痛いとなる危険性があるから大変だ。



「んでェ?」



 ()()は顎で示すように、主様へと話しかける。



「貴様はどうなのだ? ()()()よ。初々しい反応を見せるわけでも無く、かといってこういった話題に参加するわけでも無いという至極つまらん反応しか見せんが……」


「んー、主様の場合、性欲が皆無ってわけでも無いっぽいけど、どう足掻いても五分から十分で飽きて萎えちゃうからなあ……」


「ハ? そんな事、下半身が別の生命体でなければ無理では?」



 わかってはいたが、()()も中々に俗物だなコレ。

 本気で意味わからんの顔をしてるので、途中で萎えるとかの感覚がわからないのだろう。


 ……男は頭と下半身が別物だとかはよく言うけど、この場合は真逆の意味だよなあ。


 どちらかというと下世話な方面を好む私達三人からの視線に、雷による酔いをゆっくり楽しんでいたらしい主様は、眉間に皺を寄せて面倒臭そうに溜め息を吐く。



「……別に忌避しているわけでは無いけれど、そういうのは堂々と話すべき事でも無いだろう? そもそも、僕からすれば性行為というのは子作りに必要不可欠な行動という認識だ。子作り自体、性欲発散というよりも次の代を作る用の仕事だしね」



 興奮も何も面倒なだけじゃないか、と言う主様の表情は、本気で面倒だと思っているのがわかる程に苦虫を噛み潰したお顔だった。



「あー、そういや()()曰く、お前貴族出身なんだっけ? マジのお貴族様ってのァ面倒でいけねェや」


「……家は捨てたが、刷り込まれた思想というのは面倒だよ」



 主様は穏やかな声色で言っているが、目の据わり方から見るにその出身についてはあまり触れられたくないようだった。

 実際二年以上の付き合いがあっても、そこに踏み込もうとすれば即座に好感度が下がるレベルの地雷案件。

 が、やはり大事な存在の過去を気にしてしまうのが乙女心。



「…………なあ()()()()って?」


「キメラ作りが得意な初期キメラですよ。私達のように正式に提供された人体実験用犯罪者では無く、確か貧しさから家族に身売りをさせられた娘でしたね。金があれば大抵は望みを叶えてくれる、金の亡者です。()()()様をキメラにした張本人でもありますよ」


「凄ェ言い草だ……」



 コソッと問い掛けてみればそう返された。

 しかし金次第で望みを叶えてくれて、キメラ作りが得意なキメラ。

 という事は、主様は自主的にキメラになったんだろうか。

 前にそんな話をしたかもしれないが、主様の顔面が美し過ぎるものだから会話はわりと忘れてしまうので心当たりが皆無過ぎる。

 その内その()()と顔を合わせる事があるかもしれないし、まあその時に聞けば良いか。

 勿論、主様が嫌がるならばそれまでだが。



「では貴様、性行為は不得意なのか?」


「さあ、どうなのかな。座学はしっかり仕込まれたけれど、下手に実技をして子供が出来ると跡継ぎ問題が面倒だからね。生前の内は実技無しのままだったよ。確か生前は三十を超えていたが、周囲はもうしばらく僕を唯一の当主に据えておく事で甘い汁を啜りたかったらしく、特に婚姻の話も無かったし」


「婚姻無しでも娼婦呼べば良いだろォがよそんなん」


「例え娼婦相手でも、子供が出来ると面倒だろう。周囲としても、自分のところの娘や孫を充てがう事で家を吸収するつもりだったようだ。実際、水面下ではよくねちねちと面倒な言い争いをしているのを見かけたな」


「そういった前提があっても性欲に飲み込まれねェ心境が想像つかねェなァ」



 性欲死んでるんじゃねェのか、と()()は顔を顰めてワイングラスを傾ける。

 性欲があるどころか性犯罪者になってしまうくらいには有り余っている()()からすれば、理解出来ない範囲なのだろう。



「でも主様、時々はそういう気分になりますよね。慣らしたりの前戯は皆無だし快感目的でガンガン突く感じですけど、その状態でもちゃんと気持ちいいトコ突いてくるから上手な方ですし」


「知識はあるし、感覚でどうすれば良いかは大体わかるよ」



 あまりこういう話をしたくないのか主様の眉間には皺が寄ったままだが、流石の回答だった。

 感覚で大体が出来るタイプという事なんだろうか。


 ……感覚で出来る人って、式すっ飛ばして答えがわかっちゃう人多いもんなあ。


 まあそのお陰で気持ちの良い思いが出来るからヨシ。



「…………ただ、面倒で仕方がない」


「大体飽きたって言って終了しますもんね」



 可能ならフィニッシュまで持ち込みたいところだが、早漏どころか遅漏の可能性がある主様相手にRTAみたいな事は出来やしない。

 私に混ざっているのが本気の淫魔とかならワンチャンあったかもしれないが、そういうわけでも無いのだし。



「そういう気分の時は面倒どころか興奮一色になると思いますが……衝動に身を任せれば良いだけでは? しかも話を聞く限り、()()様は抵抗する様子も無く、前戯の必要も無いようですし。一体何が面倒なので?」



 ()()の問いに、主様は嫌そうにくしゃりと顔を顰めていた。

 こういった話題自体があまり好みでも無い上、話題が変わらない事に加えて長々と説明させられるのが不快なのだろう。

 コレは後で自室に戻ったら何度かぶっ殺されるかなあと思うものの、それもまた興奮するので楽しみにしておこう。マゾからすればご褒美だ。



「……性衝動を感じたので好き勝手に動いて性欲を発散したい。しかし、性行為は子作りの為に行うものである為、性行為をするならば受精を促す為に相手を気持ちよくさせて発情させる必要がある。加えて双方の体の負担などを考えた場合、必要な行動を最短でこなして短時間で終了させるべき行為」



 言わないままだとまた問い詰められると判断したのか、主様は温度の無い声でつらつらとそう語る。



「衝動こそあるが、礼儀を重んじるべき。最初は衝動だけで押し通せるものだけれど、開始して数分もすれば思考に余裕が出来、どう動くべきかを考え始め、面倒臭い」


「……えーと」



 つまり、だ。今の主様が語った言動からすると、



「最初は主様の衝動優先だから良いけど、五分くらいで冷静さを取り戻して、尚且つ相手である私にも快感を与えるような動きをしなければとついつい考えてしまい、性欲よりも冷静さが勝り、衝動のままに動きたいのにそうやって気遣わないといけないから面倒になり、もう性行為自体面倒だからいいやって感じで萎えて終わる、という……?」


「そういう事になるね」


「だったらもう最初から最後まで主様の思うがままにやっていただいて良いですから! 別に気遣わなくて良いんですよ主様が相手ってだけで最高の興奮なんで! 寧ろそんな気遣いされてたんですか!?」


「しているつもりはない」



 というか離せ、と手を振り払われた。

 思わず興奮のままに主様の肩を知らず知らず掴んだ上で叫んでしまっていたらしい。

 肩を掴まれた上に近距離で叫ばれた、そしてそもそも好きでも無い話題に巻き込まれたせいか大分不機嫌そうな表情で強めに振り払われたが、それもまた興奮するので大変ヨシ。



「いやあ、でもそう考えると次回が楽しみですね! 是非最後までお気遣いなくガンガンやっちゃってください! 優しく気遣われるのも悪くないですけど、一方的にガンガン責め立てられる方が好きなんで! そっちの方が獣のような勢いって感じで興奮しますし!」


「少なくともそんな機会はしばらく無いよ。性衝動を覚える度にこの状況を思い出して不愉快になりそうだ」


「そんなあ!?」



 確かに好きな本でもレビューとかで嫌なコメントを見てしまうとそのコメントを思い出して微妙な気分になってしまい、その後読もうとしてもいまいち盛り上がり切れなくなってしまう事もあるけれど、中々に非情なお言葉だった。

 折角フィニッシュまでプレイ出来るフラグが立ったというのに、まだまだ先は長そうで至極残念。



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