第七話 渇望
そしてさらに二年が経って、あたしは十六の年を迎えた。
師娘が言うには、あたしには秘められた才能があったらしい。
数百年に一人の逸材といっても過言ではない、ということだった。
しかし、そんなことは今のあたしには関係のないことだ。
あれからあたしは、さらに厳しい修行に己を埋没させていった。
暗器も、点穴も。あらゆる全てを。
限りなく、欲した。
そうでもしないと、心が保たなかった。
寂しかった。
空しかった。
あたしの成長を、姉さま方に見せたかった。
でも、それも今となっては叶わない。
あたしは師娘が特別に調合した霊薬を服用して、さらに高純度の内力を練れるようになった。髪の毛に内力を流し込み、補強する。それを岩盤目がけてなげうつと、高硬度を持った髪は音もなく岩肌を貫通した。見えるのは蟻さえ通れそうにない小さな孔のみ。ひび割れ一つ起こらなかった。
強くなりたい。
誰よりも、何よりも。
そのためだったら、あたしはどんな苦しい修行でもこなしてみせる。もっともっと効果の強い霊薬が欲しい。
師娘はあたしのことを理解してくれていた。あたしが口に出さなくても、強い霊薬をどんどん与えてくれた。
あたしの寂しい気持ちを誰よりも理解してくれる師娘。
あたしにはもう師娘しかいない。
しかし、あたしの心にぽっかりと空いた穴は、いくら武功を磨いても決して埋められることはなかった。寂しくてどうしようもなくなったとき、あたしは形見の短剣を取り出して、姉さま方にそっと語りかけるようになっていた。
わかっている。
剣が答えるわけもない。
それは痛いほどわかっていた。
二本の短剣。揃えてみると、一本だけが少し長い。この長い方が芙蓉姉さま。短い方が芳槿姉さま。あたしは二対の短剣に、そう名前をつけた。身に帯びていれば、いつでも二人が側にいるような気がして、勇気がどんどん湧いてきた。どんな困難でも乗り越えられるような気がした。
あたしの剣も、使い込まれてずいぶん短くなった。今では姉さま方の剣よりもずっと短い。
まさに機織りに使う杼そのものだった。または――かつて秦の始皇帝の命を狙った伝説の刺客、荊軻が帯びていた「匕首」くらいと言えばわかりやすいかもしれない。
あるとき、師娘は特別な手術をあたしに施してくれた。
うなじを切開して、そこに匕首を格納できるように、してくれた。
本当に、理にかなっている。
隠密行動にはもってこいだ。武器などまるで携帯していないように見えるのだから。
そして。
織女派の武功を全て身に付けたあたしに、とうとう島を出る話が言い渡された。
待ちに待った。
遅いとも思えるくらいに。
焦がれていた。心が焼けつくくらいに、このときを待っていた自分がいた。
歓喜に打ち震える自分がいた。
そう――思わず自分自身に戦慄してしまうほどに。
絶対に、殺すの。
確実に、殺すの。
息の根を止めてやるわ。
あたしから姉さま方を奪った外道ども。
楽に死なせるなんて絶対にしないんだから。
這いつくばらせ、たっぷり命乞いをさせてから、ゆっくり切り裂いてやるの。




