それいけアセリア探検隊①
「おにーちゃん、どうくつ、見つけたの!」
「洞窟? どの辺りだい?」
「海岸!」
鰻丼に満足した俺に、アセリアが面白い報告をしてくれた。
アセリアは子供という事で特定の仕事をしないが、他のNPCが働いている所に顔を出すとその職場の作業効率が上がるという人気者である。
また、周辺を歩き回ることで何か見つけるといった事もできる。
子供NPCらしい能力だと言える。
今回は後者のアビリティが仕事をしたようだ。
洞窟とは、なかなか面白い発見だと思うよ。
「あのね、ふだんは見えないの! でも、夕方にだけ、見えるようになるの!」
「凄いな。よく見つけたな、そんな洞窟」
アセリアの説明を聞くと、干潮ではなく満潮のごく一部の時間帯だけ見えるようになる特殊な洞窟らしい。
その時間帯というのが夕方ごろであったため、今まで見付からなかったのだという。
基本、夜は寝る時間だからだ。
街灯が設置され始めたり灯台が出来たりと夜も明るくなったが、子供が外に出るには不安な状況のままである。
つまり、だ。
「アーシャ。どういうことかしら? 夜にお出かけをしたの?」
アセリアが夜間外出をしなければ見つからない洞窟だったという話である。
アセリアがお姉さんの言い付けを破って外に出たという話でもある。
厨房にいたラルーニャが現れた。
ニコニコ笑顔はそのままに、妙な迫力がある顔をしていらっしゃる。
「アーシャ!」
「ごめんなさいお姉ちゃん! おにーちゃん、たすけて!!」
笑顔が、般若になった。
姉のマジ怒りである。
ラルーニャがアセリアを小脇に抱えた。
アセリアが助けを求めるが、俺でもどうにもならない事はあるという事で。
「ラルーニャ、手加減してやれよ?」
「はい。ちゃんと姉のいう事を聞くように、少しだけ言い聞かせるだけです」
ちょっとだけフォローを入れる事しかできない俺にラルーニャは微笑みで返し、そのまま自室にアセリアを連れ込んだ。
「にゃあーー!!」
そのあと、アセリアの悲痛な叫びが聞こえた気もしたが、たぶんん気のせいだと思うことにした。