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鰻丼を嫁に求めるのは、間違っているだろうか?③

 どれほど鰻を焼けばいいのかなんて、分かるものではない。


 ならば数をこなし、練習する。

 ラルーニャにできる事はそれぐらいだった。

 ラルーニャがすることはそれだけで良かった。



「タレのレシピの改良はお任せください」

「わたしもがんばる!」


 レーラとアセリアも手伝ってくれるからだ。

 二人とも料理のスキルを地味に鍛えており、役立たずになるという事は無い。

 三人は協力し合って話を進めることにした。


 もちろん俺は見ているだけである。

 ここで俺が手を貸すなど、三人にとって興ざめだろうから当然の判断だ。

 俺がするべき事と言えば、三人が用意した鰻丼を旨いと言って食べるぐらいでいいはず。





 鰻丼をたくさん作る。

 数をこなすとなると、どうやって作った鰻丼を食べる人間を確保するかが問題だ。



 町で鰻丼屋でもやればいいと考えるかもしれないが、ぶっちゃけてしまえば、外食産業は需要があまりない。

 技術的に近い昭和の時代を例に考えると、外食はまだまだ祝い事の席に使うものであり、日常にとけ込んではいない。普通は自炊なのだ。


 その後の時代で一人でも気楽に使えるようになったのは、低価格路線が始まったからだ。

 それまでの立ち食いソバなどではなく、ファストフード、丼物屋が増え、それにファミレス対抗するようになってから気軽に手軽に外食するといった機会は増えていく。無駄に大量増殖するコンビニも意識改革に影響があっただろう。

 それ以前はどちらかというと弁当屋の方がまだ使い勝手が良かったのである。



 店をやらないとなると、どうするのか。

 答えは簡単だ。

 権力者らしく、自分の部下に振舞えばいいだけである。


 部下の(まかない)を鰻丼にしてしまえば済むわけだ。



「本日のお昼は、鰻丼です!」


「うなどん? なんだそれ?」

「丼物なのか?」

「試作品だって。誰か知ってる?」

「でもいい匂いだよな」


 鰻丼の開発をしていなかったという事は、知名度がゼロという事。

 部下に振舞うにしても、相手は戸惑うしかない。


「美味い! お代わり!」

「んー。俺には味がくどい様に感じるな」

「ならワサビでも使えばいいだろ」

「美味い事は美味いな。白焼きとはまた違った味わいだ」


 そうして鰻丼を食してみた部下たちの反応は、鈍い。

 ぶっちゃけ、食べ慣れていないので日本人ほど鰻丼をありがたがらない。


 日本で同じものを食べようと思えば、この未完成品の鰻丼でも非常に高額だが、そんな事は知らないのである。

 持っている情報量の少なさが、鰻丼に対する感謝を薄めてしまう。


 練習中、試作品という言葉を聞いてしまった事も評価を下げる一因になっている。

 本番・本物の鰻丼はもっと美味しいんだろうと評価のハードルを上げてしまったのだ。鰻丼の将来に期待しつつも、今はまだ未熟という先入観を持ってしまえばまともに評価できない。



 結果としては、鰻丼は全体的に低評価。

 全く評価されないわけではないが、一般庶民の間でしばらく鰻丼はハズレ扱いになってしまうのであった。


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