鰻丼を嫁に求めるのは、間違っているだろうか?②
リアルでかば焼きの簡単な資料をまとめ、ゲームにログイン。
「ラルーニャ、頼む」
「はい。任されました」
料理に関しては、俺は門外漢。
全くスキルを育てていない事もあり、出来る事など何もない。
全部人任せだ。
俺は料理担当に資料を渡し、後の事は一任することにした。
俺が手伝わない方が効率がいいのだ。
ラルーニャは渡された資料に一通り目を通し、現状で足りていない物、足りていない技術を確認した。
「“開き”は出来ても、“串うち”“焼き”の技術が足りないわ。
物の方は、専用の串と……特に“タレ”がどうにもならない」
川の村でも鰻は食べる。
頭を落として開くところまでは、川の村でもやる調理技法だ。
しかし、タレをつけて焼く“かば焼き”にはしない。普通に鉄板などで焼く事が多い。揚げ物、天ぷらにもしていたが、そこまでである。煮物など、汁料理には使われていないようだ。
このかば焼きという技法が曲者だ。
串を打ち、炭火で焼き、タレを付けてもう一度焼く。
言葉にすると簡単だが、どれも高度な技術が要求されることが分かった。
串うち3年、裂き8年、焼きは一生。
究極の鰻のかば焼きは一朝一夕で出来るものではなかった。
そしてタレが問題だ。
鰻のタレは何度も何年も使い続けることで味の深みを増すと言い、100や200の鰻を焼いたところでまだ若い。どれだけの鰻を焼けば求める味を出せるかどうかは未知数なのだ。
下手をすると、100年かけても完成しない可能性がある。
ラルーニャはある程度のもので妥協するしかないと、タレについては諦めることにした。
市販品のタレであればまだ再現できるだろうが、市販品のレシピは一般公開されていない。
、残念ながら、あれは企業秘密なのだ。
渡された資料は、速度優先で集められた暫定資料である。
ラルーニャはここから鰻のかば焼きに挑む事になる。