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レーラ先生、お願いします!⑤

 終わりの無い作業をするとき、大事なのは定期的に区切りを入れる事だ。

 研究そのものはずっとやっていくとしても、途中で商品になりそうな物を選択し、世に送り出さないといけない。


 そうしないと、研究費用が捻出できない。



「代替肉は無理でも、豆乳なら美味しいって評判だな」

「ええ。ええ。代替肉は難しいですね」


 商品になる、と言うのは目的の品である必要は無い。

 最終目標として代替肉になり得る大豆を研究しているけど、豆乳やおから、豆腐入ハンバーグ用の豆腐など、他の商品で勝負しても良い。

 要は、研究費用さえ捻出できれば良いのだ。

 その他の商品も、環境負荷の軽減という意味では役に立つのだし。


 こういう副次商品の売れ行きしだいでは本命が食われる事もあり得るが、まぁ、その時はその時だ。後の事は後で考えれば良い。

 ある程度成熟した農業において、品種改良は永遠のテーマだ。

 終わりなど見えるはずが無いし、俺が何か言わなくてもやるんだろうさ。

 俺のやる事など、ゴールのいくつかを設定する事ぐらいである。





 余談になるが、農作物の初期段階で求められるのは「生産性」である。

 少ない土地でたくさんの作物が得られる事が正義になる。「環境適正」「気候適正」「病気耐性」など、生産性を上げる要因は多いので、それだけでも時間がかかる。

 次に「栄養価」、そして「味」と続くわけだが、栄養価や味については求められる物が時代と地域、社会的な層で変わる為、一概に「これ」と言いきる事はできない。


 肉ばっかり食べる人間が求める野菜と、肉類があまり食べられない人間が求める野菜の場合を考えると分かりやすい。


 肉ばかり食べる者なら、栄養価は肉では得られない物を。味は肉の味を引き立てる物が求められる。

 肉をあまり食べられない者であれば、栄養価は肉で得られる物も欲しいし、味は肉に近い物を求められる事もある。


 肉ばかり食べる者に肉で得られる栄養価を高めた野菜を出したところで、だったら肉を食えば良いと言われて終わる。その逆もまた然り、だ。

 味だって、肉々しい食事の間であればさっぱりした野菜で脂でクドくなった舌をリセットしたくなるだろうね。



 食事は常にバランス良く。

 バランスとは単品でどうにかするべきでは無いのだ。


 商品開発をする者であればターゲットを絞っていかないと、中途半端で誰が買うんだ、と言う商品しか作れなくなる。

 目的は明確に。

 それが大事なのだ。





 遺伝子を直接切り貼りするかのような品種改良。

 それでも先の見えない商品開発。


 中には「くっそ甘い(そして青臭さの残る)味の大豆」というネタ商品も登場し、想定から外れた商品もできあがる。

 思った通りの結果が出る事は希で、そのほとんどがハズレとなる。


 だから成功したときは嬉しい。



「これだと単品では味が足りないけど、肉のかさ増しには使える?」

「豆腐にする必要がありませんね。茹でて潰して、そのままいけます」


 本当の意味で結果が出るのはいつの事?

 どれぐらい先だろうね?


 その日の為に、美味しいお酒でも買っておこう。

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