到着
時刻は明朝の4時。すでに日も昇り始めている。
朝日に顔を焼かれながら、セレーネとスキアは目的地である別荘を目指す。
ちなみに爺やは、任務が成功するにしろ失敗するにしろ、速やかに撤収するために船で待機だ。
「さっきも話したけど、貴方は正面から堂々と入ってもらって構わないわ」
「あぁ」
少ない返事で会話を終わらせ、スキアは任務に集中する。
と言っても、陽動――そこまで考えて、スキアはあることに気が付く。というかなんで今まで気が付かなかったんだ
武器がない
そうだ、自分はまだしも彼女はどうやって父親を殺すんだ?
自分の持つ拳銃を渡したところで、弾はあと一発しかない…………一発?
「その一発で殺るのよ」
セレーネは涼しい顔で言って見せる。
その自信はどこからやってくるんだ
「10分」
10分経っても戻ってこなかったら、自分を置いて逃げていい
彼女はそう言って、道を曲がった。別荘の裏口に続いているのだろう。
スキアはそのまま、道なりにまっすぐ進む。
すると、これまた大きな屋敷が見えてきた。
「おい……」
「あぁ」
屋敷の門に黒いスーツを着た男が二人
二人も、スキアの存在に気が付いたようだ。こちらに向かってくる。
敵の陽動
今までにない任務だが、こなしてみせよう。
スキアは一旦セレーネのことを忘れ、10分間全力で遊ぶことにした
「何者だ!! これ以上進むことは許さん!!」
男の一人が声を上げる
――その声は、裏口に回るセレーネにも聞こえてきた。
「これで中にいる警備も表に回りそうね」
セレーネは特に身を隠すこともなく、屋敷の中に侵入した。