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30 中学三年・十月末 轟琴音の提案と懐疑

30 中学三年・十月末 轟琴音の提案と懐疑


 台風一過、土曜日の放課後、私は三年評議三人と近所の神社で待ち合わせすることにした。女子たちに怪しまれず、男子たちもめったに足を踏み入れない場所で、かつ個室でないところ。となると少し離れた場所の神社がベスト。そう私は踏んだ。天羽くんも、難波くんも、更科くんも無条件で賛成してくれた。

 空は青く、ほんの少しだけ雲が綿をやぶいたみたいに張り付いていた。

 

 まずは天羽くんが買い込んできてくれたコロッケを一個ずつ口に放り込んだ。女子同士でこういうことすると「下品!」と鼻をひくつかせて馬鹿にされるのだけど、この面子だと何にも考えないですむ。アイスクリームなんてお上品なものを食べるよりも、腹持ちのいいものの方が正直なところ私は嬉しい。さくさくしておいしい。

 一通り食べ終わり、

「天羽くん、どうもね」

 五十円ずつコロッケ代を天羽くんに渡した。

「ところで、今日のお題は、言うまでもなくわかってるよな」

 口を手の甲でこすりながら難波くんが、松の大木にもたれて両腕を組んだ。にこりともしない。側で更科くんがまだ残りのコロッケを握り締めながら、

「立村、とうとうやっちゃったよなあ」

「あいつに釘をさしておいたのが、かえって裏目に出たってやつだなあ」

 天羽くんは燈篭に肩を組むような格好で抱きつき、大きなため息をついた。

「もうすんでしまったことはしょうがないわよ。とにかく、これからどうするかが問題ってとこね。天羽くん、どう思う?」

「どうってなあ」

 みんなが頭を抱えているのは、つい昨日、評議委員長の立村くんが生徒会室前で引き起こしたとんだトラブルの一件だった。私はたまたま生徒会長の藤沖くんを通じて事実関係だけを聞いただけだけど、他の男子たちはもっと前後の状況を知っている様子だった。

「自分の立場を考えて、もう少し自制しろってあれだけ言ったのになあ」

「しょうがないよ、愛は無敵だし」

「選べよもう少し」

 苦々しげに難波くんが舌打ちしていた。そうなのだ、相手がもし、今の彼女である美里だったとか、もっと男子受けのする子だとしたらそれほど問題も起こらなかっただろう。

 ──あの、杉本さんでなければ。


「とにかくだ、これから最優先で考えるべき問題は、後期に立村くんが評議委員長として再任されるかどうかってことだけど、正直どう思う?」

 私としてはまず、そのあたりから確認したかった。正直、これから先立村くんと美里がどういう関係になるかとかそんなのはどうでもいい。立村くんにとって美里との関係は「お付き合い」は義理以外の何者でもないと、私は重々承知している。むしろそういうお付き合いよりも、評議委員会という場所での繋がりのほうがずっと濃い関係だと思う。

「まず順調に行けば、問題ないはずだな」

「でも新井林が変なこと言い出したってことだろ?」

「そうね、藤沖くんが言ってたけど、あの現場で新井林くんは出馬表明したらしいわよ。熱いわね。けどどうするんだろう。後期はバスケ部一本でやるとか言ってなかった?」

「立村の前ではそう言ってたらしいが、事情が変わったからな」

 難波くんはクールに呟いた。

「まさか佐賀が会長になっちまうとは、あいつも思ってなかっただろうしな」

「ああ、そこまでは読めなかったぜ」

 天羽くんも含めて頷きあう。

「二年男子連中のチェックは欠かさずやっていたつもりだったんだが、女子まではなあ」

 ──想像できなかったわけじゃないけど。

 言いたいけど黙っていた。知っていたとしてもそれを抑えられなかったのは私の力が足りなかったから。私の読みが甘かったから。立村くんのことを美里よりも理解できていると信じた、傲慢さを悔いるだけ。

 秋風がすうっと胸に突き刺さる。さっき食べたコロッケが胃にもたれたみたいだ。あまりいい油使ってないのかな。

 私は天羽くん、難波くん、更科くんの前で、一晩考えた案を披露することにした。


「後期最初の評議委員会でまず決が採られるわけだけど、新井林くんの立候補した場合は無条件でまず、二年の票が流れるわよね」

「そうかあ?」

 天羽くんが首をひねったまま異議を唱えている。最後まで聞いてもらわないと私も困る。難波くん、更科くんは妙な顔してあごに指を当てて考え込んでいる。

「あとは一年生の票なんだけど、今年の流れでいくと同じ評議委員が再選されてくるかどうかってのが私の読めないところなの。三年はどうせあと半年だし、面倒なことは今までやってる奴に押し付ければいいって感じだろうけど、ほら、評議委員会が生徒会に『大政奉還』している真っ最中じゃないの。もしかしたら全く評議委員事情に疎い生徒が選出されてくる恐れもあるのよ。そういう人がね、立村くんに入れるかどうかが疑問ってところなのよ」

「全くだ。しかもあんなへまやらかしやがって!」

 難波くんは私に親指をついと向け、うんうん頷いた。

「三年全員がまず立村くんに八票入れたとして……どうかな。いや、違うな。立村くん自身はたぶん対立候補が出たらそっちに入れる性格だから、たぶん七票確保。あとは一年生の票が立村くんか新井林くんか、によってだよね」

「五分五分ってところか」

「それも、危ないかもしれない」

 私は一呼吸おいた後、

「天羽くん、ちょっと起立」

「なんだあ?」

 とぼけた声出して、天羽くんが敬礼しながら立ち上がる。

「評議委員長に立候補してもらえないかな」

 露骨にぶっと吹かなくたっていいじゃない。いかにも笑いを取るためのこけ方までして。天羽くんは相当驚いたと思うけど、でもあんなに背中をべたっと床につけて、

「う、撃たれた……!」

 と大の字になることはないじゃないの。あそこまでやると、受けるどころか、みんな引くのに。

「トドさん、その心をまずは一献」

 正座して、落語家の真似でもするように、片手で「どうぞ」と指す天羽くん。

 しょうがないので私は自分なりの説明をさせてもらうことにした。


「まず三人立候補と言う形になると、票が三分割されるわけ。今まで私も忘れていたんだけど、三人以上立候補者が出た場合、まず予備投票を行うことになるわよね」

「はるかかなたの記憶、んなのあったか」

 とぼけた顔して三人そっぽ向く。単に忘れているだけ。

「結城先輩が選出された時がそうだったらしいって聞いてるけどね。そうだったよね、難波くん」

 二年上の結城先輩と付き合いがあるのは、天羽くんよりも難波くんの方だ。

 「日本少女宮」の大ファン同士、先輩後輩というよりも「アイドルマニア」としてのお付き合いが続いているはずだ。この前もこっそりと最新写真集をかばんに持ってきていたような気がする。先生に見つかったら校則違反で即、取り上げられるだろうから、私はもちろん言わないでおいた。

「ああ、そういう記憶がかすかにあるなあ」

 それ以上は突っ込まない。私はさらに続けた。

「最終決戦でまず三年生ふたりの対決に持っていくわけよ。まずは新井林くんを落とす。その段階で、あとは天羽くんと立村くんになる。そこまで行けばあとは問題ないわよ。天羽くんは今まで殆ど顔を出したことのないダークホース、立村くんは前期評議委員長。この対決だったら、やはり軍配は立村くんじゃないかなと私は思うんだけどもね」

「異議あり」

 鼻の先をこすりながら異議を唱えるのは難波くんだった。

「新井林を落とすのは納得だ。いくらなんでもな。だが、立村と天羽の対決は危険だ。トドさんは立村びいきだから甘く見ているかもしれんが」

「どういうこと?」

 ここの三人はみな、私が立村くんに三年近く片思いしていることを知っている。

 すでにその心を伝えたことも。

「立村のへまを尻拭いしているのは天羽だぞ」

「高いご評価、どうもありがとござんす」

 おどける天羽くんをぎろっとにらみ、難波くんはめがねを掛け直した。松の木から離れて、天羽くんの周りをぐるっと一回りし、今度は燈篭に片手をかけた。

「もしもだ、立村と天羽との対決となった場合、票がどう割れるかを計算してみるとだ」

 難波くんはポケットから手帳を取り出し、一枚破いて目の前に差し出した。

「仮に三年全員が立村に入れたとしてだ。六票。天羽は自分に入れるだろうから、一票、立村も天羽に入れるから、またそっちに一票。三年の票は六対二となる」

「そうね、そうなるわよね」

「次にだ」

 難波くん、さすがにホームズの面目を保つ。

「二年を考えるとだ。新井林が落とされた後は浮動票だな。立村も二年連中に英語のリーダー訳を片付けたりして恩を売っているし、男子票を確保できる可能性はないわけではない。だがな、問題は女子だ。女子は最初からあいつのこと、気持ち悪がってるのが目に見えてるだろ」

「となると、男子立村くんに四票、女子天羽くんに四票ってことね。現在のところ十対六」

「そうだ、あとは一年だが、もし立村を直接知っている前期の持ち上がりだったらまだしも、全く知らん奴らばっかだとしたらどうなる? まだあの騒ぎが記憶に新しい時期にだ、投票する時どういう奴に入れるかってことを考えると難しいぞ」

「でも、立村くんが一応、前期評議委員長として司会するでしょ。一年生たってもう半年経ってるし、やはり面倒だってことで目立ってる人に投票するもんじゃないの」

「トドさんあんた、立村の現実を見てくれよ」

 B組にて三年間相棒を勤めさせていただいた難波くん。ビジネスパートナーとしては完璧なんだけどな。ゆいちゃんにも私に対するのと同じようなビジネスライクなお付き合いすればトラブル起こさないですむのに。

「立村は生徒会室前で飛んだ三枚目を演じたというわけだ。そうなったらどうなる? 噂はもう下級生の間にも広まっている。もしも立村のことを直接知っている奴だったら、納得投票するかもしれん。だが、みな噂でしか知らない大ぼけ評議委員長を再選したいと、ふつうは思わないだろう」

「となると、一年の票が半分ずつと考えて、十対十四」

 難波くんの言い分は正しい。私は素直に帽子を脱いだ。

「そうね、接戦になる可能性はあるわよね」

「あのな、天羽、お前はどうなん?」

 とぼけた声で更科くんが前かがみになりながら尋ねた。

「お前、出る気、あるの」

「やらねばならない時にはやらないとまずいだろ」

 話は受け入れてもらえたようだった。ただ難波くんの投票シュミレーション。さすがホームズ。鋭いところを突いている。

「それならまずは、どうするかってところだけど。事前工作が必要ね」

「選挙運動はごめんだぞ」

「そんな見え見えのことしたら、立村くんが傷つくに決まってるじゃない」

「いや、すねるだな」

 思わず笑った。納得、うんうん。


「一年生評議がどう出るかにもよるんだけども、こればかりはぎりぎりにならないとわからないわね。そうだ、難波くん、君の非常に優れた筆跡鑑定能力を信頼して、開票係に回ってもらうというのはどうかな」

 その場で思いついた案を、私は投げかけた。褒められて嬉しくない奴なんていない。難波くんがきょとっとしたまま、私の顔を見た。

「ホームズなんだもの、そのくらいは慣れてるわよね」

「まあ、俺なりにな」

 難波くんの強みは分析力だ。今までいろんな出来事が起きたけれども、ひとつの事柄を分析して次につなげるだけならば、難波くんに評議委員長やらせてもいいと思う。さすがにそこまで勧められないのは、難波くんの言い方が一歩間違うと女子を敵に回してしまいがちだからだ。ゆいちゃんに対しての熱いアプローチもしかり、それが逆回転してしまう。

 更科くんはどちらかいうと、可愛いと思われやすい。実はこの人もずいぶん切れるんだけど、それを出さないようにしたいらしいのであまり私は強く押し出す気がない。

 となると、やはりベストは天羽くんだろう。

 リーダーシップと男子女子受け、すべて○。

 唯一気がかりなのは、例の小春ちゃんの事件がらみで、女子から総すかん買っていることだけだ。もっとももう半年以上経ったことだし、近江さんも女子たちから異様な人気を博している。小春ちゃんの株ががたっと落ちてしまった分、天羽くんの行動もやむにやまれぬものと解釈されている。ということで、本来ならば、確かに天羽くんがベスト。

「難波くんが開票作業を進めることによって、誰が誰派か見抜かれてしまうんだってことを下級生たちに印象付けさせるのが目的よ。立村くん派か天羽くん派か。それとも新井林くん派か。そうね。でもここであまり票差が開いてしまうと怪しまれるから、難波くんと更科くんの票を浮動票にするのはどう? 白紙で出して、その上でまずいと判断した場合に、どちらかに入れる、そうすればさほど票差も広がらないじゃない。自分の書いた用紙はわかるだろうし、もしあれだったらふたり、白紙で投票しちゃえばいいのよ。難波くんがチェックして、現段階でまずいと思われるところに押し込むっていうのは?」

「トドさん、よくもまあどうやって思いついた」

「スパイ小説よ。今度勉強用に貸してあげようか」

「ぜひ」

 難波くんとのやり取りを、天羽くんは黙って聞いていた。両腕を組んだまま、ずいぶんシリアスな顔して悩んでいるようすだった。


 しばらく話し合いをした結果、以下の結論に達した。


・後期評議委員会の際、立候補者が立村くんと新井林くんとなった場合、すぐに天羽くんが挙手して第三の男となる。


・その際、「立候補者は開票作業ができない」というのを逆手に取り、難波くんと更科くんが開票作業を行う。その際、票の状況を見ながら、立村くんと天羽くんの票が開きすぎないように票操作を行うこと。つまりふたりの票は白紙にしておき、もし票が開きそうになったら、不利な立場の者(おそらく立村くんの可能性あり)にまわす。


・決戦投票は運に任せる。


 なんだか安易な内容だけど、私なりになかなかいい案だと思うのだけど、どうだろう。 


「まあなあ、これもひとつの方法だとは思うがな、俺としては立村を評議委員長のままにしたいって気持ちが強いんだな、これが」

「それはなんで」 

 更科くんが尋ねた。やっとコロッケを食べ終えたらしく、ポケットに包み紙を押し込んでいる。

「だってなあ、考えてみろよ。この三年間、途中で評議委員長が変わったなんて例、ねえだろ。評議だけじゃねえぞ、規律も、体育も、音楽もだ」

「まあね、それはあるね。特に立村は本条先輩が命賭けて育てたからなあ」

 私は思わず受けて笑った。そうなんだ、立村くんを推しつづけた一年上の先輩、本条先輩。

 この人はたぶん、青大附中の評議委員長として史上最高の指揮官だったと思う。

「あの人が推したから、ってのはあるよね」

「そういうとこ」

 へらへら頭を掻く天羽くんと更科くんを眺めながら、私は隣で苦虫噛み潰した顔している難波くんを見やった。なんだか気になるのはそのシビアな視線だ。何か、隠しているような気がする。私は伊達にB組で三年間相棒役を務めてきたわけではない。


「しかし、この出来事にプラス面はねえのか?」

「あるよ」

 私は天羽くんの顔を見ながら、片耳で難波くんの様子を伺いつつ受けた。

「おかげで美里がゆいちゃんにべたべたしなくなったでしょ。これは大きいよ」

「なんと」

 もちろんこの言葉、すべて難波くんに向けて言っているものだった。

「私ね、一番心配していたのがそこだったのよ」

 このあたりは女子しかわからない感情だし、少しはでしゃばってもいいだろう。

「ゆいちゃんが青大附中から出て行くことに決まって、私も心配だったわけよ。美里がいきなりゆいちゃんを青大附中に残しておいてくださいって運動起こすんじゃないかってね」

「ああ、それはな、すでに俺が別ルートで抑えてある」

 知っている。確か修学旅行の時、天羽くんと更科くんが羽飛くんにその旨頼み込み、いざという時は美里を抑えるようにとお願いしたらしいことを。

「でもね、今回立村くんの事件が起こったことで、美里の意識はそっちに行っちゃってるわけよ。さらに言うなら菱本先生のおめでた結婚もそうでしょ」

「トドさん、それは誤解を招く表現だと思う。菱本先生の腹がでかくなってるとこなんぞ、俺は想像したくないぞ」

 ようやく難波くんが、にこりともせずに呟いた。

「ごめんごめん。出来ちゃった結婚ね。とにかく美里は彼氏と担任のことで頭が一杯、ゆいちゃんのことなんてどうでもよくなっちゃったってわけよ。その点がいいのか悪いのかなんとも言えないけど、ゆいちゃんは今のところ静かにしてるわよね」

「もっともだ。その点は問題ないな」

 難波くんの答えはない。私はさっきまで難波くんが寄りかかっていた松の木にもたれた。

「だから、立村くんサイドからするととんでもないことだけど、ゆいちゃんのことを考えると特に問題がないってことになるんじゃないかな。まあ、なんとも言えないけどね」


 しばらく評議委員会の今後について語り合った後、私たちは解散した。

 あまり集団で語らっていると青大附中の生徒たちに見咎められる恐れがある。

 特に私は、あまり男子と喋っているのを見られたくはない。

 私の顔のおかげで不必要なジェラシーを受けずにすむけれども、なにせ男子三年評議は結構下級生から人気があるのも事実。「あのブスが、たまたま評議委員なだけで」と陰口叩かれるのはできれば避けたい。


 あの場であえてゆいちゃんのことを出したのは、事件のプラス面を見出すためだけではなかった。

 立村くんのことについては、私も運に任せるしかないと正直思っている。

 決選投票に持ち込めばたぶん、現職の立村くんが勝つだろうと読んだ甘さを難波くんに突かれたのは痛かった。言われた通り、私は立村くんの評価を高くしすぎているのだろう。どうしても女子の甘さが抜けないのが悔しいけれど、しかたない。だって私は、立村くん以上にあの感情を感じる男子が誰もいないのだから。

 できれば前期の持ち上がりで一、二年の評議が決まってくれれば一番いいのだけども。

 そうすれば少しは可能性として立村くんへの票も増えるだろう。

 ──でも、難波くんはどう出るか。


 天羽くんは立村くんを評議委員長に推したがっている。口ではそう言っている。だけど、過去において本条先輩以外の先輩たちが、なんとしても天羽くんを委員長にしようとしていた事実は認めなくてはならない。立村くんが委員長になれたのは、絶対的権力を誇った本条先輩の圧力だったことも、私には見えている。

 そしておそらく、現三年生たちも、どこかで感じている。

 ──本当に、評議委員長にふさわしいのは、天羽くんなんだ。

 口に出してはいけないと、心の中で封印していた言葉が、今あふれようとしている。

 ──あふれさせてはいけない。


 なんとかして難波くんに、立村くんが評議委員長であることのメリットを伝えなくてはならない。立村くんの彼女である美里が、余計なことをしないでくれればゆいちゃんはこれ以上不必要に傷つかないですむ、この事実を伝えたい。

 ──これで難波くんもできれば動かないでくれるといいんだけどな。

暇があるとゆいちゃんのいる教室へ向かい、

「いいかげんなんとか言えよ、逃げやがって」

とか罵りながら、以前のアマゾネス・ゆいちゃんを引っ張り出そうとする難波くんへのメッセージだ。

 ──伝わっただろうか。賭けだ。

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