15 六月中旬・体育館男子更衣室にて、三年B組男子某三人の会話
15 六月中旬・体育館男子更衣室にて、三年B組男子某三人の会話
A「おい、聞いたか聞いたか?」
B「なにをだよ?」
A「ほら、九月の球技大会なんだけどな、競技種目の卓球、削られるんだと!」
B「えー、それまじかよまじかよ! ネタ、どこから仕入れてきた?」
A「さっき職員室で、先公たちの集団がくっちゃべっててさ、聞いたらなんと」
C「まじかよお……」
A「あ、お前、三連覇狙っていただろ? 卓球部ナンバーワンの意地にかけて、今年こそやるぜってなあ。かわいそうに、哀れなり、哀れなり」
C「うるせーなあっ! 悪いか、卓球部のどこが悪い!」
A「拍手禁止されているスポーツって、そうねえだろ? なあ、みなの衆」
全員「んだんだ」
C「けど、そんな、あんまりにも、理不尽なこと、どうしてだよ。俺、抗議してくるぜ。卓球部の顧問にまずはねじ込みだ」
A「その理由なんだけどな。今まで卓球みたいな単独競技ばかり狙って出たがる奴が決まりきっていて、教師連中みなおかんむり。とにかく全員、チームワークを必要とする競技に絞ろうというのが真相」
C「卓球のどこが暗いんだよ……ちくしょう……」
B「おいおい、泣くな、おい、まじこいつ泣きそう。ひゃあー、どうするどうする」
──しばらくCのむせび泣くのを放置する連中。
A「いいじゃねえの。部活以外で卓球なんかやりたかねえだろ。それよかハンドボールとかさ、男子バレーとか、バスケとか、いろいろあるだろが」
C「(まだ泣いている)そんなのできねえよ」
B「(Aに向かって)こいつ、もともと卓球一筋できただろ? それがさ、青大附中にきてからすぱっと球技大会で勝ったことねえから、いじけてやんの」
C「一応でも勝ってるさ、文句あるかよ!」
A「ああ、そうそう、みんな因縁つきの優勝な。一年、二年と続けて決勝戦で、誤審だって騒がれるのはたまったもんじゃあねえよな」
B「しかも、同じ相手だもんな。卓球部じゃあねえし」
C「(思い当たるふしあり)何度も誘ったけどこねえだけだよ、ったく」
A「まあ向こうも来る気はねえだろな。天下の評議委員長様だもんな」
B「ま、一年、二年の時はまだ委員長でなかったにせよ、だ」
C「知るかよ。勝ち上がってきたらいつもあいつだってだけだ。曲がりなりにも」
B「勝っては、いるよな」
A「アウトラインに落ちたかどうか、誤審騒ぎが毎回続くって伝説の対決だよなあ。なんでそんな面白い対決が待ち受けている卓球を減らすときたか、だよな」
B「たぶんあれじゃねえか。球技大会の競技を選ぶのって、3Dの担任だろ?」
A「はいはい、菱本先生な」
B「あの評議委員長殿、三年来、そっちの担任と戦ってるだろ?」
A「はいはいはいはい!」
B「たぶん、そのあたりの嫌がらせっぽいものじゃあねえかなと、俺は思うんだがどうだろう?」
C「まさか、そんな下らん理由でかよ! あの野郎、俺の三連覇にけちつけやがって!」
A「おいおい、違うぞ。怒る相手が違うだろうが。ったくお前ってばガキなんだから」
B「そうそう、恨み過ぎ」
C「だってさあ、あいつ、むかつくんだぞ。手、抜くんだぞ。試合中」
B「試合中?」
C「そうさ。あいつな、わざと俺が打ちやすそうなところ狙って打ってくるんだぞ。信じられるか? さっさと負かしてくださいってなめたまねしやがって!」
A「けど、接戦、誤審負けってのが続くのは?」
C「しょうがねえだろ、向こうさっさと負けたがってるかもしれねえけど、身体が動くんだから。だったら本気だせってんだ。手抜きで三連覇ってもちっともうれしかねえよ」
A「……素朴な疑問なんだが、なんであいつ、卓球部入らなかったんだ? 委員会やるならまあしゃあねえけど、それだけ腕あるなら」
C「集団活動死ぬほどいやなんだとさ、それで評議委員長様かよ、信じらんねえ」
B「ははん、そういうことか」
C「なにをだよ」
A「つまり、評議委員長殿は集団競技が大嫌い、ということで卓球を選んでいたと。菱本先生そりゃあ、いらだつわな」
C「よくわからん、どういうことだよ」
B「わからんか? つまりだな。あいつが一匹狼やりたがると、3D担任の菱本先生としてはそりゃあ頭くるわ。なんとかしたいと思うよな。団体行動するように仕込みたいって思うわな。けど卓球なんて個人競技があるなんてことになると逃げられちまう、ということで」
C「それで俺の三連覇はなしかよ! ばっかやろうー!」
──その後、ひとり暴れるCをなだめるのにA,Bがいかなる苦労をしたのかは、定かではない。




