転ばぬ先の
博士はロボットを作りました。
なんでも世話をしてくれるロボットです。
博士はとても、ものぐさでした。でも、学会では名の通った立派な博士です。
「ご飯を作ってくれ」
博士はロボットにそう命じます。
ロボットは白米を炊いてくれました。
博士は一口。
お米はとても美味しかったのですが、ご飯にしてはおかずがありません。
「おかずも作ってくれよ。適当に」
次は親子丼が出てきました。ロボットは実は優秀なのかもしれません。
「手紙を出してきれくれないか」
ロボットはお使いに行きます。
ポストに手紙を入れるだけです。
ロボットはその役目を立派にこなしてくれました。
とりあえず、家を出るとき持たせた手紙をそのまま持って帰ってくる事はありませんでした。
◇
数日後、友人から電話がありました。手紙が届いたというお礼の電話でした。
「うん、我ながら中々のロボットを作ったじゃないか」
ロボットにご飯を作らせました。
肩叩きをやらせました。
腰揉みをやらせました。
脚踏みをやらせました。
お使いに行ってもらいました。
なんだかマッサージばかりの気もするのですが、それはそれ。博士はもう年なのです。
「掃除をしてくれ。役に立たない、いらないものは全部捨てるんだ」
ロボットは仕事をします。
当然、博士は真っ先にゴミ箱行きでした。
「うわ、なにをする!」
博士は暴れますが相手はロボット。博士は手も足も出ません。
──とはいえ。
博士はゴミ箱の脱出口から抜け出ます。
当然予測済みのことでした。
「やはり、私は役に立たない存在だったのか」
博士の専門は人工知能の研究。
人造の神に「人はどこから来てどこへ行くのか」を聞く事が目的でした。
ゴミを被りながら博士は思います。
「やはり要らないのは人間だな。私の学説は正しかった」
博士の研究は正しかったのです。
ですが、なんだか面白くありません。
ロボットはまだ部屋を掃除しています。もうピカピカです。
──そうです。
博士はゴミ箱に出口を作っておいて正解だったと心底思うのでした。