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過去からのメッセージ

作者: 神名代洸

友達と一緒になって森の中で遊んでいた時、見つけたそれは悲鳴をあげるにはちょうど良いものだった。それはなんだって?そう、白骨の指だったのだ。

5人が5人とも固まってしまい、警察に通報するのが遅くなってしまった。

どれくらいだったのか…携帯や時計を見ていなかったので正確な時間はわからない。それでも警察官の姿を見てようやく時計を見るものが大半だった。中でも1人、中嶋優馬は1人じっと何かを見つめていた。

彼には片親がいない。物心ついた頃にはいなかったのだ。母さんに聞いてみたが、亡くなったのよと言うだけだった。

その白骨死体には指輪が付いていた。

監察医は死後10年は経っているだろうと言う。僕の父さんが死んだと聞かされたのもちょうど10年くらい前だ。何故か惹かれるものを感じた僕は警察官に聞いてみた。

「僕の父さんも10年くらい前に死んだと聞かされたんだけど、父さんじゃないよね?」

すると警察官は「まず違うと思うけど、何だったら検査でもしてみるかい?」「うん!」僕は二つ返事で了承した。

友達は引いていたが指輪が似ている気がしたのだ。

鑑識がやってきて検査キットを渡された。唾液からでもDNA検査が出来るそうだ。

僕は言われるまま口の中に綿棒を入れて唾液をとった。

そしてそれを鑑識さんに渡すと名前と住所を聞かれた。僕は素直に全部教えた。


その日の夜母さんには何も言わなかった。

何故か悪いことをしている気分になってきたからだ。仏壇はおろか遺影すら飾っていないのだ。気になって当然。そう自分を納得させ、夕食を済ませた。母さんは僕には父さんのこと詳しくは教えてくれない。

死んだ理由さえも…。

一瞬頭をよぎったそれは気のせいだと思うようにし、布団に入った。


その夜不思議な夢を見た。

父さんが手を出しておいでおいでしてる夢だ。僕は素直に父さんの方へ行こうとした。しかし、母さんが現れて僕の体をつかんで離さなかった。父さんは悲しそうな顔をして徐々に遠ざかっていく。僕は叫んだ。「父さん!行かないで!僕も一緒に…。」そう言った時父さんは顔を歪めてニヤリと笑った。その顔は不気味だった。徐々に近づいてくる。かあさんは必死に僕を守ろうとする。そして肩に手が触れた時あまりの冷たさにビックリして目が覚めた。汗びっしょりかいていた。夢で触られた肩を見ると指の跡のようなものが…。それで夢ではないと実感したのだ。


警察から連絡が入ったのはそれから1週間経ってからだった。DNA検査の結果が出たのだ。不安だった。もしかして父さんだったら…と。予感は的中した。父さんだったのだ。

首を絞められて殺されていたのだ。一体誰が?となり、母さんに任意で事情を聞くことになった。しかし、母さんは黙ったままだった。

他にも当時の関係者に当たることになり、母さんはそのまま取り調べが続いた。48時間の拘留がなされたが、話した言葉は「覚えていない。」だった。

僕は学校でも1人になることが多くなった。友達が遊んでくれなくなったからだ。親から何か言われているのだろう。そんな事よりも母さんのことの方が心配だった。母さんはきっと何もやってない。他の誰かがやったに違いない。

10年くらい前だと僕はまだ小さく何も覚えていることはない。けれども嫌なことがあったことくらいは覚えている。

それが何なのか分かれば母さんの容疑も晴れるのに。それが悔しかった。

結局任意での拘留期限が過ぎ、逃亡などの恐れもない為自宅に帰された。

母さんはげっそりとやつれて見えた。あの母さんじゃない。いつもの元気はそこになかった。

「優馬が見つけたの?白骨遺体。」「うん。他にも友達数人が見てる。」「そう。」それだけ言って自室に閉じこもってしまった。

夕ご飯はあるもので簡単に作り食事をとった。母さんはまだ出てこない。

その日は結局母さんは部屋から出てこなかった。それから数日は母さんと顔を合わすこともなく時間だけが過ぎていった…。警察からも犯人に繋がる有力な情報が得られないと苛立った声で言われたっけ。


それから数日後、また不思議な夢を見た。

父さんが出てきたのだ。そしてある方向に指をさした。それは、よく知る叔父さんだった。父さんの親戚だ。

睨みつけるように見つめている父さんは突然首を掻き毟るようにして動かなくなる。それはきっと吉川線と言うものなのだと人づてで聞いたことがある。友達曰く首を絞められる時抵抗して出来るものらしい。

と言う事は叔父さんが犯人?



分からない。が、僕のことを親身になって聞いてくれたお巡りさんなら信じてくれるかもしれないと僕は派出所へ向かった。

探し出してみて話をすることができた。

……ということなんですが、お巡りさんどう思いますか?これはただの夢?

そういうとお巡りさんは一応当時のことを調べてみるよと答えてくれた。僕はホッとした。



そして、何日かした後、警察に呼ばれた僕はあの刑事さんと話をする事に。

すると意外な事に叔父とのトラブルがあった事が判明したのだ。金銭面で。

僕の当時の写真は裕福な服装と玄関が写っていた。今とは違う。

じゃあ、その時の事が原因で父は殺されたのか?僕は覚えていない父を思い目が潤んだ。

時効は撤廃されている為すぐに叔父の元へ警察が向かった。しかしすでに叔父はいなくなっており、家族からも捜索願が出されていることを知った。

嫌な予感がする。

僕は父に祈った。叔父さんを殺さないで。罪を償わせて。



僕の願いは届いたのか叔父は間も無く発見された。ヨレヨレの靴に汚れた服、ホームレスをしていたようだ。犯行はすぐに自供し、父を殺したと自白した。ずっと言えなかったようだ。毎晩のように父が夢に出てきて死んだ時の姿で現れてこう言うそうだ。自首しろと。。。

家族も家も捨て、ホームレスになるのは大変だったと叔父は言う。

そんなこと僕には関係ない。あるのは父との思い出がないという寂しさ。

叔父は小さくなって謝った。「すまない。」と。


その夜夢を見た。

男の人が手を振っていた。

その手がサヨナラと言っている気がして僕も手を振った。すると男の人は目の前で消えていった。

きっとあの人が父だったに違いない。そう思えた。

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