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片道15分の恋人  作者: 桜庭かなめ
特別編 in 2019

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10月31日(木)-前編-

特別編-Halloween in 2019-




 暑さも寒さも彼岸まで。

 2019年の秋の気候もそうなるだろうと期待していたけれど、9月の間はとても暑く、10月に入ってからも暑いと思う日が多かった。

 ただ、10月中旬に関東地方を直撃した台風を機に、この時期らしい涼しさになったのかなと思っている。

 秋になってから、夏季休暇中の9月はバイトをしたり、サークルに参加したりするなど、インターンシップのあった8月と比べると栞と一緒に過ごす日も多くなった。一緒にラグビーのワールドカップの中継を観ることもあったな。

 10月になると、後期の授業が始まり、再び栞と大学に通う日々が始まった。

 4年生になったら、ゼミや卒論関連の単位を取得すれば卒業できるよう時間割を決めたので、こうして栞と一緒に講義を受ける生活を送るのは、おそらくこの3年後期が最後になる。そう考えると寂しくなってくるけど、残り少ないからこそ栞と一緒に楽しむことができればいいなと思っている。




 今日はハロウィン。

 栞と僕の通っている潮浜国立大学は今日に限って、学生がコスプレをして講義に参加していいことになっている。一昨年、去年とコスプレをしているので、今年ももちろんコスプレをすることに。


「悠介君! ハッピーハロウィンだよ!」


 笑顔でそう言ってくれる栞のコスプレはメイドさん。コスプレとして王道だけど、今までハロウィンでは見たことがなかったな。ちなみに胸元が少し大きめに露出しており、谷間がちょっと見えている。


「メイドさん姿の栞、とっても可愛いね」

「ありがとう。悠介君の王子様姿もとってもかっこいいよ! 期待以上だよ!」

「そう言ってくれて嬉しいな。ありがとう」


 栞の助言通りにして正解だったかも。栞が僕に王子様コスプレは似合いそうだし、メイドさんと合っていいかもしれないとオススメしてくれたのだ。

 朝晩中心にかなり冷え込んできたので、王子様の衣装を着ると温かくていいんだけれど、王子様ということもあってかかなり目立つ。バカにされたり、変に笑われたりすることはないのでいいが。


「悠介君、写真を撮ってもいい?」

「もちろんいいよ。その代わり、栞のメイドさん姿を撮らせてね」

「かしこまりました、ご主人様! ツーショット写真も撮ってもよろしいですか?」

「も、もちろんさ!」


 急にメイドさん口調になったのでビックリしたけれど、笑顔で言ってくれたからかとても可愛らしい。

 お互いにコスプレ姿の写真を撮り合ったり、寄り添い合ってツーショット写真を撮ったりして、僕達は最初に受ける講義の部屋に向かうのであった。




 今日も講義を受けていく。

 ただ、多くの学生がコスプレをし、講義を担当する先生までもコスプレしたり、配付資料をハロウィン仕様にしたりするなど普段とは違う雰囲気で1日が流れていった。毎年思うけれど、うちの大学の先生ってノリが良かったり、イベントを楽しんだりする方が多いなと思う。

 普段よりも楽しげな雰囲気だったため、今日の講義はあっという間に終わった気がした。


「それじゃ、茶道サークルに行こうか」

「そうだね。今日は坂井先輩と原田先輩は来るのかな」


 坂井先輩と原田先輩は1学年上の先輩で、栞にとっては高校時代からの先輩でもある。先輩方は就職活動が無事に終わり、今は卒業論文に向けて活動している。就活や卒論もあってか、今年度になってからはサークルの活動を休むことがたまにある。最近は学祭の準備もあるので、サークルに顔を出す頻度が再び増えているが。

 ちなみに、現在は茶道サークルの代表は、高校時代から茶道の経験がある栞だ。それで、彼氏である僕が副代表を務めている。


「今日はハロウィンだから、気分転換にサークルの方に来ると思うよ。コスプレしてきたって遥香先輩からメッセージが来たし」

「そうなんだ。坂井先輩が来るなら原田先輩も一緒に来るだろうね。あと、今年もこの後にハロウィンパーティーがあるから」

「そうだね」


 ハロウィンパーティーとは学生会による催しで、毎年ハロウィンの日である10月31日に開催される。時期的に学祭の直前なので、学祭0日目として盛り上がる学生も多い。

 また、パーティーでは豪華景品が当たるくじ引き大会が毎回行なわれる。一昨年も去年も参加したけど、何も当たらずに「ハズレで賞」という名の参加賞しかもらえなかった。今年こそは何かしらの賞品をゲットしたいという野望がある。

 部室棟に向かい、茶道サークルの部屋の扉を開ける。


「あっ、遥香ちゃんに新倉君」

「講義お疲れ様。おっ、王子様とメイドさんだ」


 部屋の中には坂井先輩と原田先輩がおり、僕達に手を振ってくる。そんな先輩方の服装を見ると懐かしい気持ちが湧いてくる。


「お疲れ様です! 遥香先輩、絢先輩。その服装……天羽女子の制服じゃないですか!」


 そう、2人は自身と栞の母校である天羽女子高校の制服を着ていたのだ。なので、高校時代の先輩方だけではなく、当時の栞のことまで思い出す。

 坂井先輩と原田先輩は栞の反応にクスクスと笑う。


「学生最後のハロウィンだからね。どんなコスプレをするか迷って絢ちゃんに相談したら、天羽女子の制服がいいんじゃないかって話になって」

「かつて3年間お世話になっていた服だからね。大学生活も残りわずかの私達が着たらどうなるか試してみたかったんだ。それに、ひさしぶりに遥香の制服姿を見たかったし」

「……私も同じことを思ってた。大人になった絢ちゃんが着たらどうなるのかなって。そうしたら、ご覧の通りとっても可愛いの!」

「遥香こそ可愛いよ。高校生のとき以上に艶っぽくなって」

「もう、後輩達が見てる前で恥ずかしいよ」


 先輩方、イチャイチャして楽しそうだな。制服姿を見ていると、高校生のときから今みたいに仲良く付き合っていたのかなって思わせてくれる。


「2人ともとっても可愛いですよ! 懐かしい気持ちにもなりました」

「僕も高校生のときを思い出します」

「後輩達に褒めてもらえて良かったよ。栞ちゃんのメイド姿も可愛いし、新倉君の王子様姿もかっこいいよ」

「その姿で学祭を回れば、茶道サークルのいい宣伝になるんじゃない?」

「……今日のハロウィンでもかなり目立ったんですよ。学祭だったらもっと目立ってしまいますって、原田先輩」

「ははっ、面白いと思ったんだけどね」


 そう言う原田先輩は凜々しい雰囲気があるので、この王子様のコスプレ衣装もよく似合いそうだ。それこそ、学祭で宣伝したら女性中心に茶道サークルへ押しかける事態になりそう。


「私、来年のハロウィンは高校の制服を着てみようかな」

「僕もそうしようかな。サイズが合うかどうか分からないけれど」

「悠介君は大丈夫だよ、きっと」

「栞もきっと大丈夫じゃないかな。……少なくとも、スカートの方は」


 ワイシャツの方は……大学生になってからも胸が大きくなっている気がするので、キツくなっているかもしれないけれど。僕がそんなことを考えていることに気付いたのか、栞はほんのりと赤くする。


「まだ1年あるからね。でも、スカートの方は普通に穿けるように気を付けるよ。ワイシャツの方は……今の時点でキツそうかも。む、胸のところが」


 そう言われてしまうと、栞の胸とその周辺を見てしまう。改めて見てみると、出会った頃に比べると成長したなぁと思う。


「私もキツかったんだ、ワイシャツ。だから第2ボタンまで開けてるの。そうしないと苦しくて」

「……私はそこまでキツさを感じなかったなぁ。だから、第1ボタンまでしか開けてないよ」


 はあっ、と原田先輩はため息をついている。胸囲の成長は人それぞれってことか。


「さてと、2人も来たから一緒にハロウィンパーティーに行こうか」

「最後だし、くじ引き大会では何か当てたいな」

「私も何か当てたいですね」

「僕も3年連続の『ハズレで賞』は避けたいです」


 僕達は互いのコスプレをスマホで撮影した後、ハロウィンパーティーの会場へと向かう。

 去年までと同じように、今年も多くの学生が様々なコスプレをして、パーティーは盛り上がっていく。

 そして、今年もくじ引き大会が行なわれた。

 すると、栞が2等でコーヒーメーカー、同じく原田先輩が2等で最新型の加湿器、坂井先輩が3等で学食で利用できる1万円分の食券をゲットした。3人とも去年に続いて当てるとは。本当に運のいい人達だ。先輩方は最後だからか大喜びだった。

 ちなみに、僕は今年も当てることができず、3年連続の「ハズレで賞」。参加賞として大学特製のノートとシャーペンをもらうのであった。

後編は10/31(木)の午後10時過ぎに更新する予定です。

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