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片道15分の恋人  作者: 桜庭かなめ
逆・恋心編

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4月18日(金)

 今日もいつもの午前7時27分発、各駅停車八神行きを待つ。もちろん、先頭車両の一番後ろの扉が止まる場所で。

 定刻通りに電車が到着すると、最後に乗って扉のすぐ近くに立つ。

 電車は高津田駅を出発する。

 告白をする勇気はまだまだ出ないけれど、今日も彼と話して楽しい時間を過ごしたいと思っている。そのなかで、少しずつ彼との心の距離を縮めていきたい。

 高津田駅を出発してから3分後、今日も鳴瀬駅に到着する。ホームにはもちろんいつもの場所に彼が立っていた。

 扉が開くと嬉しい気持ちが湧き上がってきて、今日も彼に小さく手を振った。


「おはようございます。今日はちょっと暑いですね」


 普段は第1ボタンまでかけているけれど、今日は外している。それだけでもかなり涼しく感じる。

 彼も暑いと感じているのか、普段と違って頬が赤くなっていた。額は汗ばんでいて、少し疲れているように見える。


「ちょっと顔が赤いですよ? いつもよりも呼吸が荒いというか」

「あ、ああ……今日はちょっと寝坊しちゃいまして。駅まで走ってきたので、それで疲れちゃって。昨日は僕から「明日も話そう」って言ったじゃないですか。その言葉を破りたくなくて」


 しまったな、と言わんばかりの笑顔を彼は浮かべていた。

 私のために一生懸命になって走ってくれたことがとても嬉しい。彼の優しさを今一度知ることができて。彼の中で、私の存在が確かなものになっていたことが分かって。


「真面目なんですね。……嬉しいな」


 私がそう言うと、彼の口角が上がった。

 今日の話題は昨日の夜に放送していたテレビ番組。偶然にも、同じ番組を見ていたから話が弾んだ。彼と共通の楽しみがあると分かって、何だか嬉しくなった。彼と一緒にいると次々と嬉しいことが出てくる。


『まもなく、鏡原、鏡原。お出口は左側です』


 楽しい話をしていたら、今日も彼との15分間があっという間に過ぎちゃった。どうして、楽しい時間ってこんなにも短く思えるんだろう。

 これで月曜日まで会えなくなると寂しいけれど、月曜日を楽しみにしよう。


「あっ、もう降りないと。じゃあ、また月曜日に――」

「待って」


 いつも通り、ここですんなりと下車するつもりだったけれど、今日は違った。

 彼が私の手をそっと握ってきたのだ。そんな彼の行動に驚いたことと、手を握ってきたことで凄くドキドキする。頬が熱くなる。


「どうかしましたか?」


 彼にそう問いかける。

 ただ、私も彼に問いたい。どうして、あなたは今、私の手を掴んでいるの? あなたは私に何をしたいの?

 すると、彼はブレザーのポケットから、二つ折りになっている白い紙を取り出し、それを私に握らせてきた。そんな彼はとても真剣な表情をしながら、私を見つめている。


「……鏡原駅に降りて、電車が発車したら読んでください。それまでは絶対に読まないでいただけますか」

「え、ええ……分かりました」


 そう言うしかなかった。突然のことで何が何だか分からなくて。それに、もうすぐここを降りなければいけないし。


「じゃあ、また月曜日に」


 鏡原駅に停車すると、私は彼にそう言って電車を降りた。

 ホームに立ったまま、八神行きの電車が見えなくなるのを待って、彼が私にくれた紙切れをそっと開いてみた。他の誰にも見られないように。


『好きです。僕と付き合ってくれませんか』


 手書きで書かれていた、彼の想いが詰まったシンプルな言葉。その言葉を見て、紙切れを持つ手が震えた。そして、段々と熱くなってきて。


「私と同じ気持ちだったなんて……」


 とても驚いた。一目惚れをした人が自分のことを好きだなんて。

 でも、そんな驚きはすぐに嬉しい気持ちへと変わってゆく。その嬉しさはやがて、幸せな想いへと変わっていった。

 気付けば、心も体もドキドキしていて。こんなにドキドキしたの、生まれてから初めて。想いを伝えてくれることって、こんなにも強い力を持っているの?


 このまま、今抱いている幸せな気持ちに浸り続けていたい。


 けれど、それではダメだ。告白されたからには彼に返事をしなければいけない。もちろん、彼と付き合いたいのが私の気持ち。

 でも、どうやって伝えよう。彼と会えるのは電車の中だけだし、言葉で返事をするにも周りの人に聞かれちゃうだろうから恥ずかしいし。

 やっぱり、手紙には手紙がいいのかな。でも、私……彼のことを想って書こうとしたら、きっと読むことができないくらいの汚い字になっちゃう気がする。とても読みやすい字を書ける彼は凄いと思う。


「どうすれば一番いいんだろう……」


 とても幸せなことが原因の悩みは深みを増していく。そのせいか、今日の授業はまともに聞けなかったのであった。

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