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片道15分の恋人  作者: 桜庭かなめ
恋人編

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5月2日(金)-②-

 男女別々で健康診断を受診するため、終わってから亜実から話を聞くことにした。

 あと、健康診断に採血があるなんて知らなかったぞ。見ないと決めたのに血を採る瞬間を見て気分が悪くなってしまい、終わった後に立ちくらみを起こしてしまった。

 全ての検査項目が終わり、僕は待ち合わせ場所の教室に行く。教室には亜実がいないので、自分の席に座って彼女のことを待つ。


「まさか、亜実がなぁ……」


 僕のことが好きだったなんて。しかも、中学時代から。今まで全然気付かなかった。特に高校生になってからは、栞に恋をしていたから。

 ただ、今思うと……たまに見せていた寂しそうな表情は好きな気持ちからだったのだろう。


「やっぱり、栞からは返事はないか」


 スマホを見ても新着のメッセージはなかった。

 亜実と栞を繋げる協力者が天羽女子にいるはずだ。キスをしているように見えた写真を見せたのはきっとその人だろう。もしかしたら、栞を追い詰めるために何か言っている可能性が高い。


「お待たせ、悠介」

「うん。健康診断お疲れ様」


 亜実が1人で教室にやってきた。

 今日は健康診断が終わり次第、下校していいことになっているし、更衣室代わりの部屋も別の階の教室を使っている。なので、ここに来る生徒はおそらくいないだろう。

 亜実は僕の前の席に座る。


「予備校で受験対策の講義を受けているとき、消しゴムを拾ってくれたことがあったじゃない。あれから、あたし達……予備校ではいつも一緒にいるようになったよね」

「そうだな」


 そういえば、亜実との出会いは彼女の消しゴムを拾ったことから始まった。八神高校が第1志望ということで意気投合をして、自習室にこもって2人で勉強したこともあったな。


「あのときから悠介のことが好きで。自習室や予備校の近くにある喫茶店で2人きりで勉強しているときも、ドキドキしてたまに集中できないときがあった」

「……そうだったのか」

「悠介と一緒にここに通うためにも、勉強を一生懸命頑張った。それで、八神に進学できたらすぐに告白しようって決めてた」

「だけど、僕は高校入学して間もなく、栞に一目惚れをした……」

「……それにはすぐに気付いた。悠介のこと、電車の中でずっと見ていたから」


 ということは、栞と出会ってからの日々を亜実にずっと見られていたってわけか。何というか……恥ずかしいな。


「悠介に告白しようって決めていたのに、なかなか勇気が出なくて。日高さんに惹かれているのが分かったから、気付いたら言えなくなっちゃっていて」


 亜実の眼からは涙が流れる。そんな彼女に僕はハンカチを渡す。


「……そうそう、こういう優しさにキュンときて」

「僕はやりたいことをやっているだけさ」

「きっと、日高さんも悠介のこういうところに惹かれたんだろうなって思った。電車の中で見ていても、日高さんが悠介のことが好きになっていくのが分かったよ」


 僕、すぐ近くにいたけど、告白されるまでは栞の好意がはっきりと分からなかった。さすがに同じ女の子だと、表情とか仕草で気持ちが分かるんだろうなぁ。


「電車が止まった日、2人が恋人同士になったって分かったよ。そのときはとても悔しかった。あたしの方が前から悠介の側にいて、悠介のことも分かっているのに。どうして、日高さんと付き合っちゃうの……って」

「それで、今回のことを思いついたのか?」

「うん。悠介に気付かれずに2人の距離を作って、お互いに諦めて、そこにあたしが告白すれば、悠介と恋人同士になれると思っていたの。でも、甘かったね」


 亜実はそう言うと寂しげな笑みを見せた。それはここで何度も見た笑みだった。


「栞を僕から離れさせることはできたけど、僕が諦めなかったから?」

「うん。電車の中で出会った人との恋なんて、あっさりと崩れると思ってた。でも、悠介は本当に日高さんのことが好きだった。昨日、鏡原駅の改札前で待つって聞いたときは半分諦めていたんだ」

「そうだったのか……」


 昨日や一昨日の僕の落ち込みようを見て、亜実はきっと上手くいくと思っていたのか。


「じゃあ、帰るときに諦めろって言ったのは……」

「最後の手段。悠介が諦めてくれる可能性に賭けたんだけど。まさか、そのことが、悠介に企みを感付かれちゃうきっかけになるなんてね……」


 受験勉強のとき、苦しむ場面はあったけれど、決して諦めると口にしなかった。そんな亜実が諦めろと言ったのだから、僕は気にならないわけがなかった。

 背景はだいたい分かった。まだ気になっていることがあるので、それについて訊いてみよう。


「栞と亜実に繋がりはない。ということは、天羽女子に亜実の協力者がいる可能性が高い。きっと、その人のスマートフォンに写真を送り、その人が栞に見せたんだ」

「その通り。天羽女子に進学した中学時代の友達に協力してもらってね」


 やはり、天羽女子に協力者がいたか。


「栞には写真のデータを渡してないはずだ。万が一、僕に確認するために、僕のスマートフォンに写真のデータを送られたら元も子もないからね」

「凄いな。そんなことまで分かっちゃうなんて」

「僕が亜実の立場なら、そのくらい気をつけるよ」


 さすがにそこは考えていたか。

 亜実の言うとおり、僕が昨日の朝のメッセージを見て栞を諦めてしまったら、このことはきっと分からないままだっただろう。

 亜実に訊きたいことはこれでほとんど訊けたかな。


「今は12時20分か」


 ちょうどお昼の時間だ。天羽女子もきっとお昼休みの時間だろう。


「よし、亜実。今度は僕のために天羽女子にいる協力者に連絡をして欲しい」

「えっ? 何をするつもりなの?」


 せっかくこの時間に終わったんだ。このまま何もせずに家に帰るのも癪だし、明日から連休になる。楽しい気持ちで過ごしたいじゃないか。そのためにも、


「これから、一緒に天羽女子に行こう」

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