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片道15分の恋人  作者: 桜庭かなめ
恋人編

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23/119

4月29日(火・祝)-後編-

 さすがに祝日だけあって、畑町駅周辺には人がたくさんいる。

 改札口までは栞に手を引かれる形だったけれど、改札を出てからは並んで歩く。

 そういえば、彼女の行きたい場所ってどこなんだろう? なかなか教えてくれないけれど。それは着いてからのお楽しみなのかな。


「今日はお休みだから人がたくさんいるね」

「そうだな」

「……私達みたいなカップルもいっぱい」


 栞ははにかみながらそう言った。可愛いな。

 確かに、周りを見てみると僕達のようなカップルが結構いる。もちろん、その中には僕達と同い年くらいのカップルの姿も。みんな楽しそうだ。

 駅に繋がる大通りをちょっと歩いたところで、僕達は色々な専門店が並ぶ通りへと入る。


「そろそろ着くよ」


 その言葉に栞がどこに行きたいのかが段々と分かってきた。今までも畑町駅には何度か遊びに来たことがあり、そのときには必ずと言っていいほど、今歩いている通りにあるお店に行っていたからだ。

 程なくして、栞は立ち止まる。


「ここだよ」


 目の前にあるのはカラオケ店。中学生の頃、ここには何度か来たことがあるな。


「カラオケかぁ。久しぶりに行きたかったんだ」


 僕がそう言うと、栞は嬉しそうでもあり、どこかほっとしている様子でもあった。


「悠介君がそう言ってくれて良かった。実は私、高校生になったら好きな人と一緒にカラオケに行くのが夢だったの」

「そうだったんだね」


 僕も同じようなこと考えていたな。放課後や今日みたいな休日に友達と一緒にカラオケに行こうって。まさか、高校生になってから初めてのカラオケが、恋人と一緒になるとは思わなかった。しかも、入学してから1ヶ月足らずで。

 ちなみに、昨日の学校で栞と行きたい場所の一つにカラオケは挙がっていた。


「だけど、私、カラオケに行くのが初めてなんだ。でも、音楽が好きだから悠介君と一緒に行きたいと思って」

「そうなんだ」


 なるほど、初めてだからこそより憧れることってあるよな。音楽が好きだとカラオケには一度行きたくなるよなぁ。僕もそうだった。

 カラオケは何度も行っているから、ここからは僕がリードしないと。


「栞、時間を決めておく? それとも、午後6時までフリータイムっていうのもあるけど」

「えっ?」

「例えば、カラオケ以外に行きたいところがあれば2時間歌って、他のお店とかに行く。今日はカラオケを存分に楽しむつもりなら、午後6時までいられるフリータイムにするって感じかな。もちろん、途中に出ても大丈夫だよ」


 友達と数人で行ったときは、フリータイムで午後6時まで歌い倒していた。今からフリータイムだと7時間弱あるけど、歌い疲れたらゆっくりすればいいと思っている。


「午後6時までいられるならフリータイムにしようよ」

「うん、分かった。じゃあ、行こうか」


 こうしている間にもたくさんの人が、カラオケ店に入っている。スムーズに部屋に入るためにも早く受付を済ませないと。

 僕は栞の手を引くような形でカラオケ店に入る。

 フロントに並んでいる人がいたので、すぐに部屋に行けるかどうか不安になったけれど、問題なくフリータイムで受付を済ますことができた。ちなみにドリンクバー付き。


「歌ったら飲み物がほしくなるだろうから嬉しいな。たくさん種類があるみたいだし。カラオケって凄いね!」


 僕も初めてカラオケに来たときはドリンクの充実さに感動したっけ。

 僕達はドリンクコーナーで飲み物を入れてから、2人で歌う部屋に向かう。


「結構広い部屋なんだね」


 栞は興味津々な表情で部屋の中を見渡し、ソファーに座る。


「悠介君、座って」


 ぽんぽん、と栞はソファーを軽く叩きながらそう言った。

 僕が栞の隣に座ると、彼女は僕の腕に絡んできた。彼女の甘い匂いがふんわりと香ってくる。


「ここに来たかったのは、カラオケが初めてだからっていう理由だけじゃないんだよ。こうして悠介君と2人きりになりたくて」

「やっぱり、昨日のことがあって?」


 僕がそう言うと、栞は静かに頷いた。


「2人きりになったこと、今までで一度もなかったよね。だから、いつかは2人きりになりたくて。昨日、放課後に他の女の子と一緒にいると思うと、悠介君と一緒にいたい気持ちがどんどん膨らんじゃって」


 電車の中でも不安な胸の内を明かしていたな。自分以外の女の子と一緒にいるのは、恋人として不安になってしまうのだろう。栞がフリータイムの方がいいと言ったのは、僕と2人きりでいられる時間を少しでも長くするためか。

 すると、栞は我に返ったかのように、急に慌てて僕から離れる。


「ご、ごめんね! 何だか図々しいこと言っちゃって……」

「……そんなことないよ。それだけ僕は栞に好かれているんだなって分かって、凄く嬉しいよ」

「あうっ」


 栞の頬が火照っているのが分かる。

 きっと、僕も栞の立場なら今までよりも一緒にいたいと思うだろう。2人きりになりたいとも思うだろう。


「さあ、栞。カラオケに来たんだ。歌って楽しもう!」

「うん!」


 昨日は色々とあったけれど、今、僕と栞が2人きりになっていることに変わりない。この時間を少しでも楽しいものにしたい。

 それから、僕と栞は本当にたくさんの曲を歌った。楽しくなる曲、盛り上がる曲、一緒に歌える曲、しんみりとなる曲。本当に色々な曲を歌った。

 栞の歌声はとても可愛らしい声だ。カラオケ初体験ということもあって、最初こそ恥ずかしそうにしていたけど、すぐに楽しそうに歌うようになった。

 音楽というのは凄いもので、歌った曲から共通して好きなアーティストが多かったり、互いにアニメが大好きであることが分かったり。音楽を通じて栞のことをたくさん知ることができて嬉しくなった。

 途中、お昼ご飯を挟みながらも、僕と栞は午後6時まで歌いきった。


「たくさん歌ったから、喉疲れちゃった」

「栞、楽しそうに歌ってたもんね」

「うん、とっても楽しかった! あっという間の七時間だったよね」


 そう言う栞はとても嬉しそうだった。昨日抱いた不安もどうやら消し去ることができたみたいで僕も嬉しい。この7時間、僕もとても楽しかった。


「またここに来ようね」

「うん。まだまだ歌いたい曲があるからね。それに、栞の歌声をもっと聴きたいし」

「……じゃあ、また近いうちに行こうね」


 栞はちょっと照れくさそうに笑うと、僕の手をそっと掴んできた。


「さっ、一緒に帰ろう、悠介君」

「うん、そうだね」


 こうして、休みの日の初デートは最高の形で終わった。今週末からは4連休だし、どこかに遊びに行く予定になっている。明日以降の朝や帰りの電車で、今日の思い出話をしつつどこに遊びに行くか決めていこう。

 今日のデートで僕達の仲が深まった気がする。明日からもまた、栞と笑って過ごせると思う。僕はそう信じていたのであった。

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