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片道15分の恋人  作者: 桜庭かなめ
特別編 in 2020

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3月14日(土)

特別編-The White day in 2020-




 3月になり、夜になってもあまり冷え込まない日も増えてきた。

 就職活動が本格化してから半月ほど。新型コロナウィルスの影響で中止となる合同説明会や企業説明会も多い。なので、オフィスに行くだけでなく、WEBを利用しての企業説明会や採用試験に参加している。あとは、企業によっては選考に適性試験の受験が必要なので、テストセンターに行って受験している。

 予想もしなかった新型コロナもあって、就活が解禁された直後はどうなるだろうと思っていた。ただ、いざ始まると、よく考えて、たくさん行動していくしかないと思えるようになった。




 今日はホワイトデー。

 暖冬の影響か、東京では今日、史上最速の桜の開花宣言がなされた。それを知ると、このまま暖かくなるんじゃないかと思うけど、今日は冬のように寒い。朝から雨が降っており、午後になるとその雨が雪になったので、まさかにホワイトデーと言えよう。


「こんにちは、悠介君」

「いらっしゃい、栞。説明会、お疲れ様」

「ありがとう」


 夕方にリクルートスーツ姿の栞が僕の家にやってきた。

 今日、栞は結構気になっている2つの企業の説明会に参加した。そのうちの1社は説明会後に筆記試験があったという。多くの人が集まる説明会と筆記試験に参加し、移動には電車を使ったからか、今もマスクを付けている。

 あと、スーツ姿の栞を見ると、出会った頃に比べると大人になったんだなと実感する。


「栞は先に僕の部屋へ行ってくれるかな。ホワイトデーのプレゼントで、いちごのロールケーキを用意するから」

「ロールケーキなんだ! いちごも好きだし嬉しいなぁ。説明会や筆記試験があったのはもちろんだけど、移動もあって疲れたからさ。今日はホワイトデーだし、悠介君と会って、手作りスイーツを一緒に食べることを支えに頑張ったよ」


 そう言う栞はとても嬉しそうな表情をしていた。

 毎年、ホワイトデーは、僕の手作りスイーツを栞と一緒に食べることになっている。それを支えに今日の説明会や筆記試験を頑張ってくれたのは嬉しい。栞の力になれたような気がして。

 今年はいちごのロールケーキ。スイーツ作りは楽しいので、就職活動のいい気分転換になった。

 僕は栞の頭を優しく撫でる。


「今日はお疲れ様。1つは筆記試験もあったんだよね」

「うん! よくできたと思う。筆記試験を合格したらいよいよ面接だよ。大学生になってからも、バイトとかインターンシップで面接は経験しているけれど、就活の面接はまだ一度もないから緊張する」

「それ分かるよ。僕も初めて面接試験を受けたときはかなり緊張したな。面接も場数を踏んでいくのが一番なのかなって思うよ。2度目以降は緊張するけど、少しは気が楽になるというか」

「なるほどね。私なりに頑張ってみるよ。じゃあ、部屋に行ってるね」

「ああ。そうだ、飲み物は紅茶にしようと思うけど、アイスティーとホットティーどっちがいい? 今は雪が降っているけど、電車の中にいたり、歩いたりすると体が熱くなるからさ。僕の部屋も温かいし」

「アイスティーでお願いできるかな。外は雪降っていて寒いけど、鳴瀬駅からここまで早足で歩いたら、体が熱くなっているの。部屋が暖かいならアイスティーの方がいい」

「分かった」


 僕はいちごのロールケーキとアイスティーを用意するために、台所へと向かう。

 今日は土曜日で両親がいるため、先に両親に僕の作ったいちごのロールケーキを食べてもらった。とても美味しいと言ってくれたので一安心。きっと、栞も美味しいと言ってくれるんじゃないだろうか。

 2人分のいちごのロールケーキとアイスティーを乗せたトレーを持って、自分の部屋へと戻る。

 部屋の中にはベッドの近くあるクッションに正座している栞の姿が。これから、いちごのロールケーキを食べるからか、マスクを外している。僕に気付いた栞は彼女らしい柔らかな笑みを浮かべて、小さく手を振っている。こういう笑顔を面接のときに見せられれば、結構な確率で合格すると思う。内定をいただく日もそう遠くないだろう。


「いちごのロールケーキと、アイスティーを持ってきたよ」

「ありがとう! 晴れているから、スーツ姿で歩くと暑くて」

「そっか」


 僕は栞の前にいちごのロールケーキとアイスティーを置く。その近くに自分の分も置いた。

 栞の近くにクッションを置いて、僕は腰を下ろした。

 こうして改めて見てみると、スーツ姿の栞、とても可愛くて綺麗だな。栞と一緒に働きたくなってくる。僕も同じ企業の採用試験を受けてみようかな?


「うわあっ、美味しそう! いちごの果実が入っているだけじゃなくて、スポンジもいちご風味なんだね!」

「ああ。せっかくだから、スポンジもいちご風味にしてみました。バレンタインデーはチョコありがとう。これが今年のお返しです」

「うん! じゃあ、さっそくいただきます!」


 ワクワクした様子の栞はフォークで一口サイズに切り分け、それを口へと運ぶ。その瞬間、栞は「う~ん!」と声を上げながら、幸せそうな笑みを浮かべる。


「美味しい! とっても美味しいよ!」

「そうか! 良かったよ」

「私、いちごが大好きだから、スポンジもいちご風味なのが凄くいいなって思う。ありがとう、悠介君」

「いえいえ。気に入ってくれて凄く嬉しいよ。じゃあ、僕もいただきます」


 僕もいちごのロールケーキを一口食べてみる。……うん、栞が美味しいって言ってくれたからか、凄く美味しくできたなと思う。

 栞はアイスティーを美味しそうに飲んでいる。


「あぁ、アイスティーも美味しい。歩いて体がポカポカだし、部屋も暖かいから、冷たい飲み物が美味しく感じられるよ」

「良かった。段々と冷たいものがいい季節になってきたね。今日みたいに雪降る日もあるけれど」

「うん! ……あぁ、今日は説明会や筆記試験があったからか、悠介君とゆっくりできる今が凄く幸せに感じられるよ。頑張った甲斐があったな」

「そう言ってくれると、僕も嬉しいよ。お互いに就活で忙しくて大変なときもあるけど、たまには今みたいにゆっくりとした時間を一緒に過ごしたいよね。半月経って4月になれば、大学で会えるけどさ」

「そうだね。実は今日も説明会の会場に行くまでの間、悠介君の写真を何度も見て気持ちを落ち着かせていたんだ」

「……そっか。僕もだよ。特に面接に行くときの電車の中とかで、栞の写真を見てる」


 緊張が解けるのはもちろんのこと、栞も就活などを頑張っているんだって、気持ちを奮い立たせられるから。


「……嬉しい」


 そう言うと、栞は僕のことをぎゅっと抱きしめてくる。栞の温もりや匂い、柔らかさ……本当にいいな。

 至近距離で見つめ合うと、スーツ姿なのもあって、いつもよりも艶やかに見える。


「悠介君。……お返しのお返しをしてもいいですか?」

「……もちろん」


 僕がそう返事すると、栞はにっこりと笑って僕にキスをしてきた。いちごのロールケーキを食べたり、アイスティーを飲んだりした後だからか、栞の口からいちごと紅茶の匂いが感じられて。特別なキスに思えた。

 栞からゆっくりと唇を離すと、彼女はうっとりとした表情に。


「……どうだった?」

「とても素敵なお返しだったよ。これで、今月中の就活は凄く頑張れそうだ」

「ふふっ。私もケーキやアイスティー、キスをしてしばらくは頑張れそう。それに、雪が降っていてまさにホワイトデーって感じがするし。いつも以上に思い出深いホワイトデーになったよ」

「僕もだよ。これからもお互いに就活を頑張ろうな」

「うん!」


 それからも、僕は栞と一緒にいちごのロールケーキとアイスティーを楽しんだ。

 来年のホワイトデーの頃、僕らはどうなっているだろうか。進路が決まり、卒業論文が無事に終わり、あとは卒業するだけの状況になっていれば何よりである。




特別編-The White day in 2020- おわり

これにてこの特別編は終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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