KILLA 01 始まりの音
変わることのない己を抱き
変わることのない環境のなかで
この先何が見えるのだろうか
暗すぎる世界に飽きた
消えて無くなる事のない光を生んだ
だが、明るすぎる光に飽きた
だから光を1日の半分隠す事にした
1人きりの会話はつまらない
この蒼い世界に生命を生んだ
緑が芽生え人々は祝福の声を絶えず上げた
【黄金の時代】
だが、すべてを生み出した主神は
その全てに触れる事も対話をする事もできない
ただ、見ているだけ
汚れを知らない黄金の時代の民達よ
つまらない・・・つまらない・・・
この世界が生命に満ちた時、
主神の心を満たすモノは何一つなかった
ああ、そうだ、裏切る事を
蔑む事を何一つ知らない哀れな者達
黄金の民たちよ、私を楽しませろ
お前たちに対立する力を授けよう
だが、その力をモノにし生きるには
生きるには死しかない
------------
『ピピピピピッ』
赤い目覚まし時計のスイッチを押し7時に目覚める日曜日の朝。
この季節の朝は冷え込み布団から一歩も出たくはない。だが、この家には早朝のキッチンから聞こえる包丁をたたく家庭音も、誰かが階段を慌てて下りる足音もない。ただ外から聞こえる車のエンジン音と小さく囀る小鳥の声だけだった。
「さむ・・・」
あたたかい布団から身を出し、階段を下りてコップ一杯の水を飲んだ。そんないつもと変わらない朝を迎えた。俺は神谷リキ
「さて…と、」
隙間から風が通らないようにマフラーをし、靴紐を結んで俺は玄関を出て今から新作ゲームを買いに出かける。
「いってき~」
誰も居ない家にそう挨拶すると俺は鍵をかけた。
毎日何気なく過ぎていて高校出てからはとりあえずは仕事も安定して落ち着いている。しばらく歩くと交差点で一際目立つ金髪。たばこをふかしながら信号が変わるのを待っている一人の見慣れた後姿。
俺は一気に駆け出して
「か・げ・と・ら!♪」
勢いをつけて後ろから抱きついた。
「ちっ、てめーはちっとは
まともに声掛けられねえのかよ」
無愛想に俺の額に手を当て押し戻しているこの金髪の男は俺の昔馴染みの蓮見影虎。
「こら!未成年がタバコを吸ってはいけません!」
「今年二十歳だからいーんだよ。」
中学に入ってすぐ俺は両親を亡くした。兄弟もいない、生まれ持ったこの闇のように黒い眼のせいで
親の親族には【呪われた眼】だといい嫌われ、その中俺を引き取ったのは父方の祖父だったその祖父も2年前に他界した。影虎は出会った頃はただの不良にしか見えなくて単独行動を好みます・・・っていうオーラをかまし出していた。その人を寄せ付けない容姿に俺はどこか惹かれた。声を掛けたのは気まぐれだった。
「いらっしゃいませー」
ゲーム屋の自動ドアを抜けて2人で店に入った。
「で、今日は何買いにきたんだ?」
「えっへっへー、今日はね、HANCの新作発売日なんだ!
俺全シリーズ全クリちゃったから早く次の欲しいの!!」
売り場までの足取りが速くなる。そんな俺の後を影虎はため息混じりに付いてくる。
「相変わらず好きだなゲーム。
だからいつまでも餓鬼なんだよ」
影虎は鼻で笑って言った。
「ひどいなー!!このゲームは大人向けの!
それに全クリ出来る人そういないんだぜ!!」
「自分でいうなよ」
「あー!!あったあった!!♪」
新作発売記念でクリアファイルも付いてきたそりゃもう俺のテンションは上がる。
「ありがとうございましたー」
店を出た俺は上機嫌で買ったばかりのゲームを袋から出してニヤニヤしていた。
(あ~!!帰って早くやりてえ~・・・新キャラ出てんのかな?)
頭はもうゲームのことばかり。
「そういやお前さ、最近大丈夫なのか?」
タバコに火をつけながら影虎は尋ねた。
「ん?なにが?」
「お前自分の体調くらいちゃんとしろよ。
・・・発作。出てねえの?」
「あ・・・」
俺は去年の冬場から激しい頭痛と息切れが時々起こるようになっていた。と、同時に何かの声も聞こえるようになった。
「だ、大丈夫大丈夫!薬もちゃんと飲んでるし」
医者に行ったが初期段階のパニック障害とかなんとか言われたけど、頭の奥から聞こえてくるはっきりとしない声が1番気がかりだった。
「・・・そうか…何かあったらすぐ知らせろよ」
中学、高校と、出会った頃から変わらない影虎は何かと俺の体を心配してくれる。でも俺からしたらタバコ吸ってる影虎の方が健康的にも心配だ・・・。
大きな交差点に差し掛かった時、時空モニターに映し出されたニュースに歩く人々は足を止めた。
『速報です。最近各地で起こっている謎の
気象異常で、ある共通した事が起こっています。
その気象異常の中心部では名の知れた組団が
集団で倒れているのが発見されました。
ここまでで廃団となったのが…』
映し出された映像に周囲の人々はざわめき出した。
「またか…最近多いな」
各地で潰れている組団は俺達と少し異なっていて噂じゃある特殊な能力を持った人がそれぞれ率いていると聞いたことがある。
(気象異常もその能力のせいなのかな?)
「おい、行くぞ」
「あっ」
歩き出そうとした瞬間
《ズキッ!!》
「っ!?」
割れるような頭痛が襲ってきた。頭を抱えた俺はその場に膝をついた。それに気づいた影虎は慌てて駆け寄った。
「おい!神谷!」
「っ・・・はあっはっ」
【・・・ハヤク・・・】
(またあの声意識がぶっ飛びそうだ・・・い・・・きも出来な・・・)
「お前薬は?持ってきてねーのか?!」
《ズキッ・・・ズキッ・・・》
意識が朦朧とする。次第に視界がかすんできた。発作は前にも増して酷くなっていた。
「っち!!」
周りの人が集まってきた。影虎は俺を抱えてその場を去りある路地裏に着いた。
「はっ・・・はっ・・・か・・・げ・・・とら」
「息ができねえのか?…」
体中がアツイ。頭が揺さぶられるような感覚の中、俺は影虎にしがみついていた。
「くそっ・・・我慢しろよ」
目がうつろになる俺を影虎は支えて唇を重ねた。
「・・・ッ・・・」そして息をゆっくりと俺に流し込んだ。
「っつ・・・・・・っは・・・はー・・・」
グイッと、もう一度息を流し込まれ俺は少しずつ呼吸を整えていった。
「かげ・・とら・・・」
「大丈夫か?」
「うん・・・・・・ってこれ人工呼吸?」
「あ゛?人工吸入だ。」
少しドヤ顔の影虎を見て俺は微笑んだ。影虎のおかげで落ち着いたのか自然と頭痛も治まっていた。
「もう帰るぞ・・・・・帰ったら薬飲め」
「ははっ・・・・・・そうする」
俺が発作が出た時、影虎が周囲に助けを求めないのは俺が周囲の好奇な目で見られるのを避けてくれているからだ。影虎は俺のことを一番に理解してくれている。口にも表情にも滅多に出さないけど、影虎の何気ない優しさに俺はいつしか甘えていた。
《グイッ! 》影虎は俺をおぶって歩きだした。
「わっ!!っちょ!影虎!もう大丈夫だって!歩けるって」
「また倒れられたら困る。」
無愛想な返事をして俺のいう事無視して歩き出だす。
「周りの奴等見てるって・・・恥ずかしいから下ろせよ・・・」
昔から俺を守ってくれて俺は影虎より弱いのに俺を対等として見てくれて・・・・俺は影虎にずっと憧れていた。
(影虎の背中・・・)昔からこの大きくて広い背中が好きだった。
「ほら、ついたぞ」
しばらくすると俺の家についた。一個建ての無駄に広い家。
「あ、ありがと・・・・・・」
「今日泊まろうか?お前まだ顔色わりいし」
「もう平気だ。今日はもう寝るわ」
「そうか・・・」
そう言うと影虎は右手で髪をかきあげる。
「おい、今日はゲームすんじゃねえぞ」
少し呆れたように俺を見ながらそう言って後ろを向いて手を振った。
「ははっわかってるよ。んじゃな」
《バタン・・・》
扉を閉めて中に入った。冷たい空間。明かりひとつ付いていない部屋が並ぶ
「ただいま」
そう言って靴を脱いだ。でも誰も返事は返ってこない。12の頃大きな会社の社長とその秘書だった俺の両親は事故で他界していた。俺は父方の祖父に引き取られたがじいちゃんが死んでからこの家でひとり暮らしをしている。幸いお金は両親の遺産のおかげであるしなんとかなってはいるけど
「ふー。」
誰もいない広いソファーに座って天井を見上げた。
「あれ一体誰の声なんだ・・・?」
発作で聞こえる頭の奥からの謎の声。ただの幻聴なのか頭が混乱してたのか俺は考えた
《ズキ!!!!》
また突然の頭痛が襲った。
「つ!!またかよッ・・・」頭を抱えてその場に倒れた。
「はっ・・・はァ・・・もうっ・・・勘弁しろよ・・・」机にある吸入器に手を伸ばしたが届かない。
《ズキン・・・・・・ズキン》
「や・・・・・ば・・・・っ」
そのまま意識が遠のいてしまった。そして俺は気が付くと暗い闇の中にいた。
「なに・・・ここ・・・・あれ、俺今・・・?」するとどこからかあの声が聞こえた。
【ハヤク・・・ハヤク・・・】
「この声・・・おい!誰だ!?」
俺はそう叫んだ。声も吸い込まれていまいそうな闇の中で。
【ハヤク・・・・ハジメヨウ】
「始める?・・・・一体何を・・・・」
【GAEM】
声は一定音に安定してそう言った。
「げーむ?・・・・なんの・・・・」
《ドクンっ・・・・・》
その瞬間鼓動が乱れてきた。
【ようこそ・・・黄金の民の血を引く黒の王を導きし器・・・】闇の奥から誰かが出てきた。
【・・・仕組まれた運命が動き出す。全てを手に入れる為には白の王を倒すしかない・・・・・】
そう言いながら俺にちかづいてきた。
「来るな・・・・・」
恐怖心を抱いた俺は逃げようとしたが足が動かなかった。
【・・・探せ・・・我が同士達を・・・探せ・・・・黒の戦士を】
「なに・・・・いって・・・・・」
俺の前まできたそいつの顔を見て俺は鼓動が乱れた。
【・・・集え・・・・今ここに復活を・・・・KILLAの始まり】
「なっお前は・・・・・俺!?・・・」
闇から現れたあの声の主は紛れもない俺の声だったんだ。
《ズン!!!》
もう1人の俺が俺の中に入ってきた。冷たい氷が覆いかぶさったように冷たく全身の感覚が感じれない程だった。それは冷たく冷たすぎるがゆえにアツく苦しかった。
「っ・・・アツイ・・・なんだこれ・・・っ苦し」
心臓がはねるように唸る。俺は闇の中また意識が遠のいた。
「・・・・・!!・・・・みや!・・・・・神谷!!!」
(誰かが俺を呼んでいる・・・・誰だ?)
「おい!神谷!!」
はっと目を覚ますと影虎が俺の肩を抱いて、汗を流しながら顔を除きこませていた。
「影虎?・・・・・なんで」
「やっぱ気になって引き返してきた・・・・・んならお前また倒れてた・・・・」
いつになく心配そうな表情で俺を見ていた。
「黒の・・・・戦士・・・・・」
「あ?・・・何いって・・・・」
「あっ・・・・・なんでもない・・・・ってかいつまでも肩抱えてんなよ・・・もう大丈・・・」
俺はふらつきながら立ち上がったが足元がおぼつかないまま体制を崩しそうになった。
《ドサッ》
それを影虎が支えてくれた。
「無理してんじゃねえよ」支えられた腕があまりにも力強くて・・・・
「やっぱお前は俺がいないとダメだな」
どこか俺様口調でそう言った。ため息をつきながら髪をかきあげる癖。
「あ、ありがと・・・う」
この人に甘えたらダメだ。影虎には弱い部分しか見せていない。それでも影虎は俺を対等としてみてくれる。でも俺はそれが酷く嫌になるときがあった。自分の力で立てないほど弱い自分が酷く情けなかった。
「・・・なあ」
淡いライトが照らす天井をベットから見上げながら俺は口を開く。
「なんだ?」
俺を気遣ってか影虎はタバコは吸わずに静かに傍にいてくれる。
「俺・・・夢見たんだ・・・」
「夢?」
「白と黒が戦うゲーム・・・」
「はっ、夢でもゲームかよ」
影虎は呆れたように笑った。
「うん。それでさ・・・俺が王様で・・・ゲームに勝つと世界を手に入れる事ができるんだって・・・・」
「へー、お前が王様か・・・・貧弱な王だろうなそんな王に仕える兵士どもは大変だな」
「ひど!!俺だって本気出せば100人分の力出せるっつーの」
俺は冗談交じりに笑いながら言った。
「あほか・・・もういいから寝ろ」
俺の頭を撫でて髪をくしゃくしゃにして影虎は立ち上がる。
「お、おう。おやすみ・・・・」
「ああ・・・・」
そして俺は眠りにつく驚くほどあっさりと俺は眠りに落ちた。また闇の中。
「・・・・またここか」
【・・・・随分あいつと仲いいんだな】
あの声が聞こえた俺じゃない俺の声。そして闇の奥から黒い異国の服のような物を着た俺が姿を現す。
「・・・夢だろ?」
【夢?・・・あー・・・今はな・・・】
「今は?・・・・どういう」
【頭のわりいお前に分かりやすいように今は具現化できねえ俺がこうやって夢に出てきてこれからの事を教えてやるんだ・・・感謝しろよ】
もう1人の俺の瞳は冷たく、右目は闇に染まり左目は鋭い獣のような瞳の色をしていた。
(あれ、さっき見たときは瞳は両方真っ黒だった・・・はず)
【クスッ・・・・・ああ、さっきはな・・・】まるで俺の心が読めるかのようにそう言った。
「お前・・・」
【いいか・・・もうすぐスペードのジャッカーが来る・・・・】
「ジャッカー?」
【お前を殺しにだ・・・いや・・・正確にいやあ俺を殺しにだ・・・黒の戦士の血を持つジャッカーがお前を真の王であるかを試しにだ・・・・】そう言うともう1人の俺は姿を消そうとした。
「ま、待てよ!!意味わかんねえ!!た、ただの夢だろ?なんだよ殺しにって!?」
【屈服させなけりゃあ殺されるぞ・・・お前が俺と共鳴し始めた時点で世界は動いている・・・俺の存在を嗅ぎつけたヤローどもが集まってくるぞ。その中でお前は選ぶんだ・・・俺のための戦士、同士たちを
守りたいなら強くなれ・・・守られる王なんざ俺はごめんだぜ・・・もし、力が必要なら・・・俺が出てやるよ・・・】
やがて俺の姿は消え俺は闇に吸い込まれた。
《ドゴオオオオ!!!》
凄まじい轟音で俺は目が覚めた。
「・・・ッ・・・なに!?」
起き上がると上に影虎が落ちてきたガレキから俺を守ってくれていた。辺りの壁は崩壊し外の冷たい空気が入ってくる。
「なッ?!」
「うるせえしゃべんな・・・俺にもわかんねえ」影虎の頭から血が出ている。
「あんたが黒のキング?」
煙の中から姿を現したのは少年のような身なりで犬のような尖った耳、牙、尾を持つ者だった。俺ははっと夢の事を思い出した。
【スペードのジャッカーが来る】
「・・・ジャッカー」俺はそう呟いた。
「へー・・・やっぱ知ってんだ・・・じゃああんたがキングでいいんだな?」
指を鳴らしながら少しずつ歩みよってくる。
「くそ・・・・んだこいつ・・・・おい・・・・立てるか神谷?」
「う・・・・うん」
「逃げるぞ・・・玄関まで走れるか?」
そういうと影虎は落ちていた壁の破片を手に取り少年に向かって投げた。その隙に俺の手を取り一目散に玄関へと走った。
《ドカッ!!》
破片はかわされ奴が追いかけてくる。
「待てよ黒のキング!!俺と戦え!!お前が真の王である事を俺の目の前で証明しろ!!!」
少し楽しそうに奴はそう俺に叫びながら俺達に一撃をくわえてきた。
「あぶねえ!!」
《ガガガガ!!!》影虎がまた俺をかばった。
「ぐッ・・・・」
「影虎!!血がっ」影虎の腕から血が出ている。
「お、俺に用があんだろ?!こいつは関係ないから手を出さないでくれ!!」俺はそう叫んだ。
「ああ?関係ないって?はっ、」そう言うと奴は影虎を指差してこう言った。
「あんたさあ、黒の戦士だろ?」
「?・・・・」
「なっ」おれはその言葉に驚いた。
「なに?あんたら何にも知らねえの?」
「言ってる意味がわかんねえよ餓鬼」そう言いながら影虎は睨みつけた。
「(イラッ)・・・その目気に入らないな・・・・」鋭い獣の眼で睨みかえして来た。
「いいぜ、教えてやるよ・・・耳の穴かっぽじってよく聞け!今この世界には四つの人種に分かれてる。まずはなんの能力も持たないただの人間、ネームはハート。能力者とハートの間に生まれた人間、ネームはスペード。生きていく過程で生まれたオリジナルの能力者をダイヤ。その者達を率いるふたつの王の存在がこの世界を大きく揺るがす・・・」
「それと俺らに何の関係があんだよ?」
「理解力ねえなあ!そこにいる弱そうなのが黒の王であんたはそれに従える黒のスペードじゃねえの?!」
(そんな、夢の通りだ・・・・このままじゃ)
「俺の名は介良まこと、黒の血を率いしスペードのジャッカーだ、あんたが俺のふさわしい王か確かめに来たぜ」そういうと鋭い獣のような眼で戦闘態勢に入った。
《ザンッ!!!》
ものすごい破壊力で地面に深い傷を残した。
「っ!なんかしんねえけど、この状況お前がさっき言ってた夢の話みてーだな」影虎は血を拭いながらそう言った。血が止まらないこのままだと影虎は
「俺は大丈夫だから・・・これ以上は」
「あほか」
「え?」
「お前は危なっかしくてたまんねえんだよ」
強い口調の中に小さな優しさがあった。この状況でも俺をかばって血を流して・・・影虎・・・俺はそこまでするほどの存在なのか?この状況じゃ、お前も俺も死ぬかもしれないんだぞ?・・・
「ははっ!ちょっとはやる気でたみたいだね!じゃあはじめよっか!俺を屈服させてみろよ黒の王!!!まずはてめえからだ!!金髪野郎!!!」凄い速さで影虎に飛び掛ってきた。
《ガガっ!!!》
「っこいつは王なんかじゃねえよ」影虎はまことの攻撃をかわした。そして影虎の体から蒸気のような気が発した。
「違う?そいつは王だぜ・・・いつまでも寝ぼけてねえで早くあんたの力見せろよ!!」まことがそう言った瞬間。
(ジュウウゥゥゥ!!!)
影虎から発する蒸気が増し影虎の姿が見えなくなった。
《ドクン!!!!》
そのとき俺の鼓動が乱れた。
《ズキンッ!!》
「ぐっ!!・・・こんな時に」発作の時のような激痛が俺を襲った。その時一瞬、俺の右目が、赤い鬼のような眼に変わった。
「おまえがおしゃべりな奴なのは十分わかった・・・・だがここにいるこいつは昔っからとろくてまぬけなただの餓鬼だ・・・」
蒸気が払われ、姿を現した影虎の姿は二本の濃い色をした角、鋭く太い爪、赤い鬼の瞳・・・・
「影虎・・・・?」
「そこでまってろ神谷」そう俺に言うと影虎は一瞬にしてまことのところまで距離を詰めた。
《ガガガガガガガ!!!》
影虎の早さにまことはついていけなかった。
《ガッ!!!》
影虎はまことの首を捕らえた。
「ぐっ・・・なっ・・・」
「早く力見たかったんだろ・・・今の俺がどんな姿してんのかはわかんねーけど・・・力が腹の底からみなぎってくるぜ」鋭く睨んだ影虎の瞳は鬼の妖気を放った。
《ゾクッ・・・》
まことは妖気に圧倒された。
「はっ・・・やっぱあんたもジャッカーか・・・それもMELIAの・・・レアもんかよ」
《ギリッ》
影虎は力を強めた。
「まだしゃべんのかよ・・・」
「やめろ影虎!!」
「!?」
「もう・・・・もういいから・・・」
俺は小刻みに震えながら震えた声でそう言った。さっきまでまことに命を狙われる恐怖で震えが止まらなかった。でも今は豹変した影虎の姿とその殺気に恐怖していた。
《ザッ・・・・》
まことは影虎の手が緩んだ隙に一定の距離を取った。
「・・・っ・・・あんたが第一戦士・・・なめやがって!!!」まことは片手に力を込め気を一気に上げた右手に青白い光が集まる。
《ズキッ!!!》
影虎はその場に膝をついた。
「くそっこの体・・・」
「影虎!?」
「神谷、逃げろ・・・」
「何言ってんだよ!!そんな事できる訳・・・」
「いいから行け!!ここは俺が食い止める!!」
まことは気を空中に貯めはじめた。
「俺の砕覇をくらって死ね!!」まことはそう叫び砕覇を放った。
(このままじゃ死ぬ!・・・俺がなんとかしなくちゃ、俺が!!)
《ガガガッ!!》
(頼む!!俺にその黒の王の力があるならお願いだ、影虎を守れる力を・・・貸してくれ!!)
ぎゅっと目を閉じた瞬間。
【いいぜ・・・力を貸してやるよ】