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セイギノミカタ  作者: 柏木大翔
世界の在り方
37/104

37.うつけ者の道化

展開は決まってるのに先に進まない……

脇話が増えていく……

「思ったより帰ってくるの早いねー」


 何かを買ったかのように見えない二人にユニアスが素朴な疑問をぶつける。


「ユニねえ、コイツが金持ってないんだよ」


 説明をしようとしたセイギを押しやるようにしてニポポが弁解を始める。まるで男を近付けたくないのか、自身がナイトでもあるかのように振る舞っている。その行為は鼻につくがニポポの器量もあり、何故か許される行為にも見える。

 しかしと言うべきか、やはりと言うべきか、セイギはそんなニポポのことを嫉妬半分で嫌っていた。


(シスコンとかマジやめろ)


 勿論そんなセイギの心の声は誰にも聞こえない。



 そこでふと抱いた疑問を口にする。


「ニポポとユニアスさんは姉弟……なんですか?」


 一瞬間をおいたのは、タメ口だとニポポに話し掛けることになりかねないからで、敢えて敬語にすることでその相手をユニアスに絞ったのだ。

 しかしその言葉を受け取ったのは流したはずのニポポだった。まるで姫を守る忠犬のようだ。言い換えると鬱陶しい、ということになりかねない。


「はあ?見て分かんない?そんな訳ないじゃん」


 何故か敵意を前面に押し出し、セイギを威嚇するニポポ。血は繋がってはいないだろうと推測していたが、こうしてバカにされたような扱いを受けてはいたものの、セイギはそこで喧嘩を吹っ掛けるほど子供ではない。セイギは大人なのでキッチリとメンチを効かせ、ニポポを牽制した。


「こら、ニポくん!」


 ニポポの態度を見かねたのか、ユニアスの叱責が飛ぶ。一瞬自身が怒られたのかとセイギは焦っていたのは、秘密だ。


 ユニアスの声に従うようにニポポの表情も沈んだものになる。それと反比例するようにセイギの表情は明るくなる。既にそれは咲き誇るかのような素敵な嘲りの笑みだ。一言で言うと最高に下衆い。


 そして相変わらず心に余裕のないニポポはその挑発に乗ってしまう。


「なにニヤニヤしてんだよ、ユニねえ見てんじゃねえぞ」





 しかしそんな露骨な態度ばかり取られていると、周囲は已む無く失笑せざるを得ないほどになる。ああ、あの腰巾着ね、と言ったように。

 そうすればそうするほど、邪魔をしてみたくなる反骨精神が湧き上がるのもまた人の機微と言うものだろう。まるで人を化かす狐狗狸の類いの如し。



「ユニねえに迷惑かけるなよ?」


 吠える忠犬。


「迷惑かけてるのはお前だろうが」


 逆らう狐。




 喧嘩とは、同レベルの者同士の間でしか起こらない。




 二人の様子を伺っていた周囲の人間は苦笑を隠し得なかった。微笑ましい子供の喧嘩を見守る両親のような表情を窺うことも難しくない。



「何をどう見たら僕が迷惑になるのさ」

「そんなことも分かんないのか?」

「ユニねえはそんなこと言ったことないもんね」

「言われないと理解できないのか?」

「言いたいことがあるなら言うに決まってるじゃん」

「本当にそう思ってるのか?」

「当然!僕はユニねえの弟だからね」


 思わずセイギは言葉を失った。シスコンとかそう言うちゃちなもんじゃ断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗、例えて言うなれば異次元生命体の類いの本性のうちの氷山の一角だった。


 そんな様子のセイギを理解することもなく、ニポポは言葉を続ける。


「ユニねえを守るのは僕の役目だからね。ろくでない人間は近付けさせないよ!」


 満面の笑みでそうキッパリと言いのけたニポポ。


(お前がろくでない人間だろうがっ!)


 心の中でツッコミを入れるセイギ。勿論宇宙人と会話する言語を持たないので口にはしない。



 大した忠犬ぶりを示すニポポであったが、当然と言うべきか、残念ながら、とも言えるが、身内に対してはその眼もフィルターにかかりきり曇り、的確に判断を下すことは出来ていなかった。


 もし全うにそれを見ることが出来ていたら。

 信頼を盲信と勘違いしていなければ。

 正面からユニアスを見つめていれば。



 ユニアスがいつも誰の横にいるのか気付くことが出来たであろうに。




 その事実を全くの第三者であったセイギはすぐに気付いた。気付けば二人は寄り添うように立っていて、離れていても磁石のように近付きあう。

 正直に言えば同族認定していた相手がそのような環境に恵まれていることにも嫉妬したが、それ以上に長年連れ添ったような雰囲気を醸し出す二人を素直に認められる位には二人はお似合い同士だった。


 一度、何故アレックスなのかユニアスに聞いてみたいと思うセイギだった。




 そう言う訳でセイギの目の前の少年は道化でしかないのだが、だからといってその傍若無人っぷりを無視できるほどお人好しではない。


「だったら聞いてみたら?」

「はあ?」

「お前が迷惑じゃないか、とか」

「ユニねえがそんなこと言うはずないじゃん」

「だから飽くまで確認って意味だよ」

「聞くまでもないね!」


 全く聞く耳を持たないニポポに辟易としながら、それに代わりユニアスに声をかける。


「で、正直どう思ってます?」


 突然話を振られたユニアスはキョトンとした表情をしたものの、やはり苦笑したような表情を浮かべる。


「ニポくんは良い子だよ」


 その一言は如実に事実を語っていたが、額面通りにその言葉を受け止めたニポポは敵将の首を討ち獲ったかのような表情をして言った。


「だから言っただろ」


 その表情にも鬱陶しさを感じたセイギは思わず言ってしまう。


「だったらユニアスさんに恋人でもいたらどうするんだよ」


 それは核心にも触れてしまう一言だった。

お陰さまでどうにかPV一万ヒット突破しました。

ありがとうございます。

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