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セイギノミカタ  作者: 柏木大翔
世界の在り方
35/104

35.親の愛

今回は竜の説明回みたいなモノです。

進展なくてスミマセン……

 ――ドラゴン


 そう呼ばれる種族が世界にはいた。

 体高は7メートル、体長は14メートルというのが標準的な大きさとなる。大木のような尾を持ち巨大な翼を兼ね備える。鳥などと比較しても骨の密度、筋力の多さ、鱗の有無などといった面から翼で巨体を持ち上げるほどの揚力は得ることが適わず飛行出来るほどのものではないが、跳躍と合わせてグライダーのように滑空することは可能だ。基本的に二足歩行を行い前傾姿勢を取っていて地面を駆走るのに向き、その大きさも含めて対峙するものが包み込まれるような体勢は見るものに威圧を与える。


 ――【双無き者】


 生態系の頂点に君臨する最強とも呼ばれる生物だ。寿命は得てして長く、体は強靭な鱗に覆われそう容易くは傷付かない。生体をコントロールすることに長け、病気を負うことなど全くない。

 寿命の大半、8割以上を青年期から壮年期として過ごし、壮年期を過ぎると衰えた体力筋力を培った知識で補うように老獪に動くという。魔法を扱う個体もいるらしく、その力は正に"天災"という。じっと耐えて過ぎるのを待つしかない、の意だ。


 そんな竜にも当然幼少の時期がある。鱗は何物も寄せ付けない頑丈さを持つわけではなく、剣で容易く貫ける。魔法を退ける力もなく軽く射殺せるほどに脆弱だ。それはかつての食物連鎖の最下層にいた頃と変わりない。

 そのため、子供のドラゴンは常に親と共にいる。最強の生物の庇護下にいれば安全に間違いないからだ。その子竜も【称号】の異常によるものか、僅か一ヶ月もすると成竜と同じ大きさに成長し、すぐに親元を離れてしまう。同じ地域に二頭も三頭も竜がいては食料となる動植物も足りなくなってしまうからだ。この成長の早さから竜の子はいないのではないか、と言われている。それに信憑性を増すように、竜は胎生で卵を産む個体はいない。産まれてくる子竜も非常に小さいため、孕んだとしても気付かれない。妊娠の兆候としては精々が獰猛になり食欲が旺盛になるというくらいだ。

 腹にいる子供は体が弱いため、母親はなるべく激しい動きをしようとはしない。それゆえに威嚇が主で、戦闘等は行おうとはせず、已む無くそうなった場合には全力で目の前の敵を殲滅する。

 狩りに関しても父親が率先して食料を漁り、母親への元へと運ぶ。この時雄の個体の食料まで与えてしまうため、雄の体重は大分落ちる。尽くすものの宿命とも言えるだろう。





 ここに一つの竜のつがいがいた。


 一頭は純白の竜。純白の体にして真紅の目。自然界としては異質のものだ。

 体高は4メートルほどで体長は10メートルにも満たないだろう。色とも相まって小さく見える。全身を覆うはずの鱗の様子はほとんど伺えない。しかし、その表皮はひどく頑強で、鱗に勝るとも劣らない。これはたった一枚の鱗なのだ。

 鱗が一枚一枚分かれているのには理由がある。通常鱗というのは頑丈なもので硬い。それゆえに外界からの攻撃に対して強くなっている。勿論継ぎ目などなければ完全に外界との接触を絶つことも可能だ。しかし、実際にそうなった場合の可動性は著しく失われる。具体的に言えば鉄の棒と自転車のチェーンの関係のようなものだ。前者は非常に硬いが直線的で、後者は頑丈とは言えないが可動性には非常に優れている。

 今回を例えて言うのであればゴムだ。それも圧倒的な頑強さを備えた。

 タイヤを考えて貰いたい。厚さが増せばそれだけ固くもなり、また硬いだけではなく弾性も持つため衝撃にも強い。それと同じだ。

 そのような表皮に覆われているため、その白のドラゴンはその鱗に勝ちうるだけの体躯を動かすためにかなりの筋力を要していることがわかる。小ぶりながらにして、絶対王者の力足りうるのは確かだ。




 そして番のもう一頭は白の竜に対して黒の竜だ。その双眼は黒。

 こちらは例に漏れず7メートルほどの体高を持ち、体長はやはり14メートルほど。その体躯にしてはやや細く見える。足に集まった筋力は相当のものではちきれんばかりに膨らんでいる。本来は二足歩行で腕は小ぶりになってしまうのが普通なのだが、この竜は異例なことに強靭な腕を持っていた。これは獲物を抑え付けるために成長したもので、それだけの戦闘をこなしたというだけの証明でもある。何箇所も傷を負った痕があるということから分かるように、それだけ強靭な生き物との戦いを行いそれに勝利したということに他ならない。



 竜は生涯で一度の番しか作らず、伴侶に先立たれた場合にでも新たな個体と結ばれることは決してない。恐れられる対象でありながら、人などよりもずっと純愛をしているのだ。




 その竜も一生にニ度程度しか子供を産むことが出来ない。それは強い力を持つものの宿命で、子供が非常に出来にくいのだ。随分過去には竜の個体もあったのかもしれないが、少なからずその個体を徐々に減らしていることは確かだ。

 そして竜の懐妊期間も長い。出産するまでには十年以上の期間が必要で、その間に子供が流れてしまうことも少なくない。つまり竜が生まれる確率というのは奇跡的な数字なのだ。世界はこうしてバランスを取っているのだという。





 この番もそんな奇跡を通り越してまもなく子供を出産しようとしていた。白の竜のお腹には既に小さな命が宿って四年が経過していた。ここまで来ると安定した期間となり、子供が流れてしまうことは殆どない。子供は非常に小さいため、母子ともに負担が殆どないこともあり、出産時に事故が起こることもほぼゼロに等しい。つまり、あとはその時を待つだけなのだ。



 番はいずれ生まれ来る子を思う。



 ――無事に生まれて来て欲しい



 種族は違えど、どの世界でも両親の思うことは同じなのだ。

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