第二録RE-VOLT-叛乱のドロイド-
西暦2442年5月20日AM11:13
ゲシュートス軍 第2特殊兵器開発センター地下3階ドロイド開発室に
て
このドロイド開発室には様々なロボットの試作型があり、今まさに最新
型独立AI搭載の戦闘用バトルドロイドの実験が行なわれようとしていた。
「この<GSM/D−004R ZIO>さえ完成すれば、現代の暮らし
をよりよくしていける筈だ。そのためにも奴等にこいつを渡す訳にはいか
んのだ」
白衣を着た中年男性は目の前に吊るされたドロイドを見上げる。そのド
ロイドは男の顔をしており、ボディー表面には人工皮膚が被せられていた。
彼は既にゲシュートス軍の軍服を着せられており、生きている人間と並べ
ても見分けが付かなかった。左腕がまだ取り付けられていないことと、ボ
ディーのいたる所にコードやチューブがつながっていることを除けば。そ
して、白衣の男は完成を急いでいた。何故なら……
「おい、ここを開けろDr.ベーメル!貴様は軍法第8条に違反している。
開けろ!さもなくばこの隔壁を爆破、突入し場合によっては射殺するぞ!」
部屋の外から拡声器で怒鳴る声がする。そんな彼らを尻目にDr.ベー
メルは作業を続ける。
(どうせ後々銃殺刑だろうが)ドロイドのプログラム起動作業と並行して
研究ファイルをデリートしていく。
「これより爆破を行なう、<KTZ爆弾>を取り付けろ」<KTZ爆弾>
とは、ゲシュートス軍開発の隔壁破壊用の新型爆弾である。
「クソ、時間が……」起動していないプログラムはあと3つであった。全
てのプログラムさえ起動してしまえば、後は心配する必要はない。起動す
れば世界最強のドロイドなのだから。起動さえすれば、だが。
部屋の外で爆発がおき、部屋が少し振動する。が、まだ隔壁は破られて
いない。おそらくあと一撃で破られるだろう。今最後のプログラムが起動
し始めていた。
(少しでも時間を稼がねば………)そう思い、引き出しを開け自ら開発し
た<GSWW/MMG−09E> リバース銃試作型を取り出す。この武器
は、人を殺傷せずに倒すためにと彼が開発した銃で、特殊なパルス弾を発
射し命中した相手に吐き気を催させるというジョーク兵器である。もっと
も、彼は真面目に主力兵装となるよう開発したのだが、彼もさすがに発表
は控えた。
(しかしまさかこれを再び使う日が来るとは………)ちなみに一度目は実
験のため自分を撃った時である。〔彼はその日から3日嘔吐に悩まされた。
〕 そんなことを思い出していたその時、隔壁が吹き飛び一度目よりも余
分に仕掛けられた爆弾は、隔壁を吹き飛ばすだけに留まらず、近くに隠れ
ていたDr.ベーメルを一緒に吹き飛ばした。部屋中にDr.だったもの
が飛び散り、部屋中にピンクや赤のものが散乱する。安全を確認すると、
数人の兵士達が部屋に突入する。
立ち込める煙と辺りで燻る炎。
兵士達は特殊部隊のため、ガスマスクを装備し真っ黒な格好をしており、
異様な雰囲気をかもし出していた。先頭にいた兵はDr.の死を確認する
と、報告をする。
「Dr.の死亡を確認」
『了解、ではドロイド及びデータの回収に当たれ』
「了解」
回線を開いたまま、開発データの捜索にあたる。
「駄目だ、全てデリートされている。コピーもないようだ。引き続きドロ
イドの捜索に・・・・・・ん?」彼はあることに気付く。
ドロイドが見当たらない。先ほどの爆風で奥に飛ばされてしまったのだ
ろうか。警戒しつつ前進する。
『どうした、何か問題か?』
「いや、ドロイドが見当たらない。おそらく爆風で部屋の奥に飛ばされ」
そこで彼の言葉が途切れる。
「わ、うわあああぁぁああぁぁ!!!!!」部屋中に部下の声が響き渡る。
『おい、どうした、ガンマスリー!応答しろ、おい、トーレス、トーレス
!!・・・・・・・・・クソッ!!』銃を構え、部隊に召集を命令する。
彼には何が起きたか大体想像ができた。恐らく、Dr.ベーメルがドロイ
ドを起動させていたのだろう。
クソッたれが・・・・・・
「ガンマワン、何が起きた」ガンマフォーが近づいてくる。
「ガンマスリーがやられた、恐らくドロイドだ」「畜生め!」
ふとアサルトライフルのライトの前を何かが横切った。
奴だ、だがここで慌てはしない。伊達に特殊部隊の隊長はやっていない。
よく眼を凝らし、神経を研ぎ澄ませる。今までどおり落ち着いてやってい
ればいい。だが思いとは裏腹に彼は恐怖を感じていた。彼が今まで相手に
してきたのは人間や戦車、建物などであった。今までドロイドと対峙した
者など聞いた事がない。恐らくガンマスリーが人類初ではないだろうか。
その時、ガンマツーのいる方向から激しい銃声が聞こえ暗闇にマズルフ
ラッシュが輝く。
「ガガガ・・・」銃声がやむと同時にうめき声のような音が聞こえた。
(リヒティ・・・)ガンマツーは来週の火曜に結婚式を挙げる予定だった。
なのに、なのに・・・・・・
彼は改めて戦場の非常さを知った。
ガンマフォーがいる右を見る。すると、グシュッと言う音がしたかと思
うとガンマフォーの首がなくなっていた。 迸る血飛沫、倒れるガンマフ
ォー、そしてその先には紅く光る二つの眼。
彼はガンマフォーの返り血を浴びながらゆっくりとアサルトライフルを
構えた。
(ごめんな、ヴィッシュ。パパはサッカーの試合、観に行けそうに無いや)
炎に包まれる研究所、引き裂かれた人間。誰も彼を止められなかった。彼
は左腕が未装着であったが、問題は無かった。彼に搭載された特殊な能力、
<FreeAttachmentSystem>(自由接続装置)〔以降FAS〕と
<DoragoniumThermalReactor>(ドラゴニウム反応炉)〔以降DTR〕
<FAS>は彼のボディー数箇所に配置(主に四肢)された装置で、様々
な機械、銃器類をオプションとして装着することができた。そのため、重
ガトリングを左腕として使用した彼は、何者も寄せ付けなかった。
<DTR>はとある竜から採取された希少な鉱石で、少量で圧倒的な発電
量を誇り、彼はそのパワーにより、装甲車を投げ、人間を引き裂いた。
彼の圧倒的な性能の前にゲシュートス軍は次々と撃破されていった。
『増援を!これ以上の戦闘継続は不可能!増援を!』
『こちら第203機甲中隊、司令部、応答せよ。司令部』
様々な通信や悲鳴が飛び交う中、彼は一つの音声データを再生する。そ
こには、Dr.ベーメルの肉声が録音されていた。
『アーアー、私はキミの生みの親、マルクス・ベーメル博士だ。私がキミ
を作った理由は他でもない。えー、単刀直入に言おう。キミにゲシュート
ス陸軍中将アーサー=ハインリッヒの野望を打ち砕いてもらいたい。奴が
何をたくらんでいるか判明しなかったが、あの竜人族を狙っているのは確
実だ。奴は彼らの不思議な書物を手に入れようとしている。これだけは確
かだ。頼む、竜人族と接触、連携し、あいつを倒してくれ。わが友を・・
・・・・・・・・・・もうあまり時間が無い、とにかく頼んだぞ。どうか
お前の学習型人工知能が無事に作動し、これを再生していることを願おう。
わが息子、ZIOよ・・・』終わりだ。
彼に搭載されている超小型スーパーコンピューターが認識する。
「了解、任!@ヌ$行します」どうやらまだ言語機能が上手く立ち上がっ
ていないようである。再び歩き出したそのとき、数発の銃弾が命中する。
銃弾が飛んできた方向を向くと、一人の若い兵士がアサルトライフルをこ
ちらに向けていた。彼の持っているアサルトライフル<GSW/AR04
D フエゴ>は装甲車に穴を開けられるほどの威力があった。そして彼は
命中させた、にもかかわらずそのドロイドは少しよろめいただけで、目立
った外傷は見られない。
「え、そ、そんな、嘘だろ。だってこれ・・・」怯え、後ずさりする兵。
そんな彼に彼は静かに言い放つ。
「オレのGAイ装はタン具ステンカーバイドと金、チタンそれに鋼竜¥鱗を
使った合金だ。サラに内部sou甲にはカーBン板toニオブ合金のハニkム構
造。簡単にha破れはしな@:」何を言っているのか彼には理解できなかっ
たが、彼は勝ち目が無いことだけはわかった。
「た、頼む。命だけは・・・」怯えていた。ジオは冷たい機械の目で彼を
見据える。そして口を開いた。
「無理だ」丁度よく言語機能が回復し、彼ははっきりと自分の人生の終わ
りを宣言する声を聞く。目を見開き、躓き転びながら後ずさっていく。
「・・・い、嫌だ。嫌だああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!」
そんな彼を尻目に、左手のガトリングの弾を頭部に撃ち込む。断末魔の叫
びを上げながら、青年兵は倒れた。
「・・・運が悪かったな・・・」
ガトリングをパージすると、彼はこのまま基地を立ち去り森の中へと消
えていった。
その後判明した第2特殊兵器開発センターの死者の数は、当時現場にい
た734人中610人、負傷者は83名にのぼったという。