六話
『銀の猫』
「あとは…エンカが一袋、か。あれ、おいしいんだけど辛いんだよね」
メモを見ながらつぶやくと
「エンカが欲しいのかい?なら、これはどうだい。今朝、入ったばっかりだよ。」
そう言って見せられたエンカはおいしそうな赤色をしていた。
エンカは赤く辛い実で大きさは赤ちゃんの手のひらほど、
中にある種は食べられないから取り出してから調理する。
「おいしそう!一袋いくら?」
聞くと、売っているお兄さんはそうだろ、うまそうだろうと言った後に
「3ラマートだ。坊ちゃん、『銀の猫』にいる子だろ。あそこの料理は最高だからな」
と、指を3本立てて言うとだからこれはおまけと袋に4個足してくれた。
それにありがとう。また来てね!と言って、お金を払い家に戻って厨房に買ってきた物を置くと
「お金は足りたかい?」
と、おばさんに聞かれ
「足りたよ。2ラマート余った。」
言って、余ったお金を渡そうとすると
じゃあ、その余ったお金はあげるから神殿に行っておいで。そう言われたので
「いいの?ありがとうおばさん。じゃあ、行ってきます」
「遅くならないようにするんだよ!」
後ろからかけられたその声に、うん。と返事をした。
―――――
大神殿に行くとそこには多くの人がいた。
「結構人いるんだ…」
そういえば、王都に住んでいる人は年に一回は必ず行くっておばさんが言ってたっけ。
そんな事を思いながら、前の方に見つけた席に座ってしばらくすると大神官様が出てきた。
大神官様はとても優しそうなお爺さんだった。
そして、大神官様は挨拶をして、神に祈りを捧げるとこの国の創世神話を語ってくれた。
その神話は母に小さなころから聞かされてよく知っているものだったから、少し母が懐かしくなった。
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