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冠を抱きし者  作者: 藍雨
第一章
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四話

予言


【王印】を見ると老婆は一言、綺麗じゃのう。と言って


「そなたの母は何故、王に報告せなんだ。」

そう聞いてきた。その質問はもっともなものだった。

なぜなら、この国にはもし、産まれた子供に【王印】があった場合は

すぐに神殿にその事を報告しなければならないという義務が存在するのだから。


「僕が産まれた一か月前、リヴァ様がすでに誕生されていたから。」

だから、母はその義務を無視して僕を人の目から避けるように辺境の村に移り住み育てた。

まあ、僕が産まれて半年くらいは王都に住んでいたらしいけど。


そして、【王印】を隠すこの手袋を絶対に自身の前以外では外してはいけない。

と僕に教え込んだ。


「【王印】を持つ者が二人居ればいずれ厄介なことになる。

それ故に一月後に産まれた、自身の子であるそなたが殺されるやもしれぬ。

そうそなたの母は考えたのじゃな?」

それを知ったのは母が亡くなる一週間前だった。

自分の死期が近い事を知っていたのだろう。

母はそれを僕に話し聞かせると意識を失い、そのまま意識が戻ることはなかった。


それまでの僕は自分が【王印】を持っているという事実を他の人に知られたら、

何か大変な事が起きるんだろうな。という曖昧な事しか解っていなかった


「しかし、ならば何故そなたは王都に来た?

そなたが【王印】を持つ者だと知れれば殺されるやもしれぬのじゃぞ。」

確かに【王印】があることが知られたら殺されかねない。

その事を僕は十分理解しているつもりだ。


「それでもいいよ…そう、殺されてもね。

一目でもいい父さんに逢えたら。逢えたら…ううん、逢えなくてもいい。

僕の父さんが誰なのか、それだけでも解れば、そのあとはどうでもいい、

どうなってもいい。それが殺されるってことでも。」

僕はその為に、その目的の為だけにここ王都まで来たんだから。そう思いながら言って、

付け加えるように父さんに逢う前、知る前に殺されるのは嫌だけどね。そう言うと


「そうか、そなた父を知らぬのか。

そなたの母はほんに賢い者だったのじゃな。」

と言った老婆の言葉に、少しの引っ掛かりを感じていると

父について占のうてやろうか?と問いかけられた。

それに少し緊張してそうして欲しいと言うと


「緊張せんでよい。眼を見せておくれ。…そうじゃそれでよい。」

言って、僕の眼をまっすぐに覗きこむと


「―――視えたぞ。そなたは近いうちに父と出会うだろう。

じゃが、そなたは父だとは気付かぬ。そなたがその者が父であると気付くのは

出会って半年以上後のことじゃ。」

と言った。


「近いうちってどれ位なの?」

そう聞くとそれはわからぬ明日か、それとも一月先か。そう言って


「しかしじゃ、確かな事が1つだけある。それはの…

そなたがこれから大いなる事に巻き込まれる、ということじゃ。」


「大いなる事?それって大変な事に巻き込まれるってこと?僕が?」

気をつけなされ。そう最後に言うと

占い師の老婆は現れた時と同じく、いつの間にかいなくなっていた。

そして占い小屋も消え僕はただ路地に立っていた。


それにしばらく驚いていたが、僕は占いの結果の方が気になっていて


「大変な事っていったい何だろう?」

と考えているとしばらくして時間を告げる大きな鐘の音が聞こえてきた。

その音に空を見上げるともうすでに空は夕焼けの赤から藍色に変わり始めていた。


「えっ!もう、そんな時間!」

と驚き慌てて家に帰ると、今までこんな遅い時間に帰ることなんて無かったからか、

おばさんにとても心配をかけてしまっていた。


家に入ってただいまと僕が言う前に


「クラウ!ああ、良かった。ちゃんと帰ってきたね。あんまり私を心配させないどくれ。

こんな遅い時間に帰ってくるなんて、何か悪い事にでも巻き込まれたんじゃないか、

怪我をしたんじゃないかって、ずっと心配していたんだよ?」

とおばさんは僕のことを力いっぱい強く抱きしめながら一息に言って、

それから怪我がないか確認するように僕の体をぺたぺたと触ってきた。


それに安心してもらおうと僕は大丈夫、怪我なんてしてないよ。と言って、

それから心配させてごめんなさい。と謝ると


「怪我をしたりしてないんなら良いんだよ。

さあさ、お腹空いたでしょう?夕ご飯にしましょう。」

少し安心した様にそう言って、その後用意を手伝っとくれ。と言われた。

それにうん。と返事をしてから食器を出すのを手伝って、ご飯を食べ洗い物も終えると、


いろいろな事が一度に起こったせいかすぐに眠りについた。




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