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冠を抱きし者  作者: 藍雨
第一章
5/25

三話

占い師

―――



「…神殿まで来たのはいいけど」

荘厳そうごんな造りの大神殿に着くと既に【祈りの儀】は始まっていた。

大神殿の前は【祈りの儀】を見に来た、どちらかと言えばリヴァ様を見に来たのだろう、

多くの人で埋め尽くされていて近付いて見ることはできそうにない。


その様子にがんばって近づいてみようか、それとも諦めようか?と少し考えて

今回は近づいて見るのを諦めて家に帰ろうとすると


「もし、そこなお方」

そう、しわがれた声が聞こえた。だけど僕に声をかけたんじゃないだろうと、

その声を気にすることなく、そのまま家に帰ろうと大神殿と反対の方を向くと、

目の前にその格好から考えて占い師なんだろう、老婆がいつの間にかいた。


それに驚いていると、その老婆は


「お前様のことじゃよ。このばばの話を聞いてはくれんかの?」

と疑問形で聞いてきた。

だけど、その声は口調とは裏腹に断ることのできない強さを持っていて

思わず頷いてしまった。


すると、老婆は僕の手を引いて歩きだした。

そうして大神殿から少し離れた場所にある、古びた占い小屋に連れてこられた。

小屋の中に入ると老婆はゆったりとした椅子に腰掛け、口を開き


「適当に座りなされ。」

そう言った。

僕がその言葉に近くにあった、木の椅子に座ると


「さてと、話を始める前にお前様の名を聞いてもいいかえ?」

と聞いてきた。それに僕が、素直に名乗ると

その老婆は、確かめるように小さく僕の名を一度つぶやき


「クラウか良い名じゃな。では、クラウよ。そなたは何故【祈りの儀】を見に来たのじゃ?

次王を見に来たわけでは無いじゃろう。

もし、次王を見に来たのならもう少し見ようと努力するものじゃ、あの場にいた他の者達の様にのう。

それをクラウ、そなたはすぐに諦めた。それは何故じゃ?」

と一気に聞いてきた。それに僕は


「僕は知りたかっただけだから【王印】の持つ力がどんなものなのか。

僕のいた場所は遠かったから、少ししか見られなかったけど、

それでも【王印】の光は見えたから。」

と答えた。

すると、老婆は不思議そうに


「何故じゃ?そなた、【王印】の力などとうに知っていように。

そなたも【王印】を持っているのだからのう。」

そう言ってきた。それに僕はとても驚き、石像の様に固まってしまった。

そんな僕の様子を見ると、老婆は


「この婆はなんでもお見通しじゃよ。

その為の力を持っておるからの。人を見通す事が出来ぬと占えぬからのう。

いかにその強い力のめられた紅い輝石きせきを嵌めた手袋で【王印】の力を隠しても、

この婆には無駄な事じゃよ。」

笑顔で言い、さらに【王印】を見せておくれ。と言われてしまい、

仕方なく左の手袋を外すと、その手の甲にはこの国の民なら皆が知っている

青い紋様―【王印】―が淡い燐光りんこうを放っていた。




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