二十三話
それにうなずいて
「なんで弓を習ったのかだったよね?
僕に弓を教えてくれたのは母様、7年くらい前かな?
『矢は魔除け、矢の通った道は浄化されて少しの間だけ妖霊たちが近づけなくなるのよ。
だからもしも村の外に行くようなことがあったならまず矢を射ってから道を進みなさい。
そのためには弓を覚えなくてはね?』って言って教えてくれたんだよ」
そう言った時の母の優しげな表情を、声を思い出しながら話せば
フィアンは少し不可解そうな顔をして
「へえ、そうなんだ...」
リヴァはそう言って納得しかけたが途中で気付いたのか
「…って、ん?でもそれっておかしくないか?普通は祝福があるから
そんなことしなくても妖霊に襲われる心配ってする必要ないんじゃないか?」
確かにリヴァの言う通りだ。
そう普通なら祝福があるから襲われることはまずない、上位の妖霊でも出てこない限りは。
だけど僕は『普通』ではなかったから襲われる可能性があった。
「そうだね、普通はね。
僕は【王印】があるってことを隠してたから村にいたころから
…違うか、生まれてからずっと祝福を享けたことがないんだ」
右手で左手を包むようにして言うと
リヴァはそのことを思い出したのか納得した様子で
「そっか、そういえば昨日そんな話聞いたな。
だから、妖霊に襲われる危険があったってことか」
そう言った。それにうなずくと
「確かに妖霊にとっちゃ大きな力を持つ王印を持ってる人間は格好のエサだよな。
だから王印を持つ者は赤ん坊の時から王宮に住むことになってんだしな」
「うん」
実際小さな頃から今までに何度か妖霊に襲われたことがある、そのたびに助けてもらってたけど。