十五話
「……大神官様、それを断ること、は?」
おそらく…いや、確実に断ることなど出来ないのだろうけれど。
そう思いながらも微かな望みを賭けて大神官様に訊けば、すぐにそれは不可能です。と返ってきた。
「そう、ですか…」
分かっていた事だったといえ落胆の色を隠しきれない声でそう答えて、
それから僕は少しの間黙って考えをまとめる事にした。
考えをまとめると僕は口を開いた。
「…生きて、生きていることができるなら。僕は、王宮に行きます。」
そう、僕が言うと
「そうですか。では、クラウ様。
王宮からの使者がここにお着きになるまで、隣の御部屋でお待ちくださいませ。」
大神官様は少し目を見開いた後に言って、
続けて御茶も御用意していますのでどうぞ。と言ってくれた。
大神官様が言い終わると、補佐の青年が隣の部屋
―隣とは言っても、結構離れた場所にその部屋はあった―に連れて行ってくれた。
部屋に入ってお茶を飲むと少し、気持ちが落ち着いた。
出されたお茶が気持ちを鎮めるものだったからかも知れないけど。
「大変な事になったな。」
補佐の背年は素直に心配そうな声でそう言うと、
慰めるように僕の頭を撫でてくれた。
その手つきは慣れていないのか力加減が少しおかしかったけど、なぜか安心できて、
気付くと心の中にため込んでいたことを話していた。
「…ずっと、村にいたころから。
僕は自分にこれが、この【王印】があるって事を誰かに知られたら殺されるんだと思ってた。
母さんもそれを心配してたんだと思ってた。
でも今思うと母さんは何か別のことを気にしてたような気がするけどね。
でも、僕はそう思ってたから、殺されるかもって。だから、殺されないなら、
生きていられるならましだよ。それに、前よりもいい暮らしができそうだしね。
…と言っても、大変なことには変わりないだろうけど。」
思いを言葉に出すと少しだけ、心が軽くなった気がした。
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