十二話
到着
家を出てしばらくの間大神殿には行こうとしないで、
よく行く通りをふらふらと歩いていた。そして、途中で買ったラカの実を食べ終わると
「…大神殿に行かなきゃ。」
そう、つぶやいた。
だけど、しばらくの間、僕はその場所から動けなかった。
この通りを忘れないように、お店の人たちを、おばさんを忘れないように。
じっと通りを眺めて目に焼き付けてから、それから大神殿に行った。
「……着いちゃった。」
小さな声で言って、かばんの中から木札を取り出した。
「これを、神官に見せればいいんだよね?」
でも、誰に見せよう?誰でもいいって言ってたけど。
皆忙しそうだし、どうしよう?そうつぶやきながら神殿の中をウロウロしていると
「何を入り口でウロウロしている…」
と、呆れたような声で話しかけられた。
声のした方を向くと、そこには昨日の大神官補佐の青年がいた。
「えっと…昨日の補佐の人?」
とりあえずそう訊けば、そうだ。と返ってきた。
「案内してくれる、の?」
案内してくれるのだろうか?そう思い、続けてそう尋ねると肯定された。
「ああ、案内しよう。ついてこい。」
それとその木札は手に持っていろ。そう言われた。
木札には革の紐が通されていたから
腕を通しておくことにした。
補佐の青年はそれを確認すると歩き出したのでそれについていった。
昨日も思ったことだけど、神殿の中の通路は複雑でまるで迷路みたいだ。
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