九話
【王印】
何しろここに来るまでの通路は複雑で、とても一人では外まで行けそうにはなかったからだ。
それに、逃げたとしても、すぐに捕まってしまうだろう。
「諦めるしかないのかな…」
このまま、父さんに逢うことはできないのかな。
そんな事を考えている内に大神官様を連れて、さっきの神官が戻ってきた。
大神官様は僕の目の前に来ると、言った。
「さっそくで悪いのですが、私に左手を見せてもらえますかな?」
と。
その言葉に従うように、着け直していた手袋をとり、左手を見せると、
大神官様は僕の手をとり【王印】を確かめるように、じっくりと眺めてから
「これは…確かに【王印】、貴方のお名前を教えてくださいますかな?」
驚いたように言って、名を聞かれた。
「僕はクラウ、クラウ・ゴーデス。」
名乗ると大神官はゴーデスという名に、少し目を見開いた。
昨日の老婆も同じような反応をしていたので、
ゴーデスという名に何かあるのだろうか?と少し気になったけど今は気にしない事にした。
「では、クラウ様。明日、もう一度この大神殿に来てくださいませ」
そう大神官様が言うといつの間に用意していたのか、
大神官様の印章が描かれた手のひらほどの大きさの木札を渡された。
その事に内心驚いていると、大神官様は
「どうぞ、これを。明日ここに来られました時にどの神官でも構いませんので、
この木札を御見せくださいませ。」
その神官がクラウ様を私の所にお連れいたしますので、と言うと
「それではもう遅くなりますので、お帰りになられてよろしいですよ。」
大神官様がそう言うと、僕をここまで連れてきた補佐の青年が
「外まで送ろう」
と、言ってくれた。
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