八話
祝福
補佐の青年の後ろを歩いている時、ふと気になったので聞いてみる事にした。
「どうして、会ったばかりの僕をこんなに気遣ってくれるんですか?」
「神官は祝福を享けている者といない者を見分ける事ができる。それは知っているか?」
それは母さんに聞いた事があったので頷くと
「だからだ。この王都で祝福を享けていない者は、先ほども言ったがとても珍しい。
王都から離れた町や辺境の村であっても珍しいだろう。
普通は産まれて一年以内には何かしらの形で祝福を享けているものだからな。」
「そう言えば村の人達は毎年、祝福を享けに神殿に行っていた。」
でも、僕と母さんは行っていなかった。
母さんは昔、祝福を享けた事があるみたいだったけど、僕が生まれてからは祝福を享けていなかった。
その代わりに、なぜ知っていたのかは知らないけど、
母さんが悪しき者から身を守るための結界を家にはり、僕には守りの石を持たせていた。
「ほとんどの者たちがそうだろうな。…着いたぞ。」
そう言って補佐の青年は、目の前の扉を開き僕を中にいれてくれた。
そして補佐の青年も部屋に入ると扉を閉め、口を開いた。
「では左手を出してくれ」
そう言った補佐の青年の声は、とても落ち着いたものだった。
だけど、僕にはそれがまるで最後通告のように思えた。
僕はその言葉に意を決して左手の手袋をとり、その甲を見せると補佐の青年は驚きに目を見開き言った。
「これは!【王印】ではないか! なぜ、君にあるんだ?」
なぜ?それは僕の方が聞きたい。
僕は一体どうなるんだろう。どこか他人事のように思っていると
「そうか、君が祝福を享けていなかったのは【王印】があったからか。
少しの間ここで待っていてくれ。」
ゼセア様を呼んでくる。
少し落ち着いたらしい補佐の青年は、そう言うと部屋を出て行った。
あの大神官補佐の青年が戻ってくるまでにこの場所から逃げることはできるだろうか?
そう考えて僕はすぐにその考えを打ち消した。
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