涅槃
全く売れない苦しみから開放された俺は絵のアイデアも何もかもすぐポンと浮かびすぐ書けるようになっていた。
今まで書いてきた動物やら花やら風景やらも評価され、仕事に変わる。
どこかのバンドのジャケ写、なにかの映画のポスターに使う挿絵、誰かのアイコン、なんかのニュースのオープニングの映像のためのイラスト。
色々な仕事が降ってきて金にも困らなくなってきた。
やっと自分の書いた絵で飯を食うという夢が叶ったような気がした。
初任給的なものは、実は裏でずっと支えてきてくれた彼女へなにかプレゼントをしようと考え、アクセサリー屋に行ってみたり、服を見に行ってみたり、家電屋に行ってみたりして悩んだ。
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あと数ヶ月で桜が咲く時期、去年の夏の猛暑・雨不足の影響はどう受けてるのか、栄養は足りてるのか、ちゃんと咲いてくれるのか不安だった。
欲を言えばこの日本にある全ての桜に栄養剤を差しに行きたいところだが、流石にそこまでの財力はない。
近所の桜にだけでもと思いホームセンターで栄養剤的なものを買い、桜の木1本1本に丁寧に差す。
正直これで栄養不足が補われるかなんて分からないが。
少し前、彼女に言われたとてつもなく早く咲く桜のことを思い出し、余った栄養剤を持ってその桜へ向かった。
その桜のとこに着き、見上げるともう桜の蕾がなっていた。
まだ冬だと言うのに。
蕾の色でわかった、この桜はとても良い色鮮やかに咲くのだと。
だが、地面には散った蕾が数個転がっていた。
やはりこの木も栄養不足なのだろう。
丁寧に栄養剤を差す。
だが、この桜にはこれぐらいじゃ全然足りないとわかっていた。
とてつもなく早く、色鮮やかな花を咲かせるためにはもっと大きな栄養が必要だと。
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彼女に手紙とプレゼントの入った袋を渡した。
中身は鋭く切れ味のいい包丁。
そして彼女に殺してくれと呟いた。
彼女は少し驚いたような顔をしたが、その後すぐに微笑み、プレゼントで渡した包丁の刃を俺の首に当てた。
全ての苦しみから解放されたように赤黒く鮮やかな液体が散らばった。
「俺はもう充分人生を楽しめた。自分の絵で飯を食う夢も達成できた。お前に感謝も伝えれた。とても満足してる。ありがとう、愛してる。
最後に、俺の死体はあの桜の下に埋めてくれ。俺の最後のお願い。」




