君ってさ。あたしとそれ、どっちが大事なのさ。
最近彼氏が私に対して素っ気ない。
最近の休みの日はゲームしてるか部屋の隅にある植物を眺めてるかスマホを眺めてるかの3択。
たまにデートに行っても前みたいにTheカップルのような行動はとってくれない。
浮気なんじゃないの?って疑うかもしれないけど、仕事に行ってもしっかり出勤時間に家を出て定時に帰ってくるため、怪しい行動はひとつも無いしあたしが「スマホ見せて」と言えばあ普通にパスワードを解除してぽんと投げてくる。
LINEを見ても男友達か家族、女の名前は「佐倉あかね」のひとつ、つまりあたしの名前だけ。
アルバムを開いても猫か桜かゲームのスクショ、少し辿れば数ヶ月前のあたしの写真、それだけ。
インスタとかのDMを開いても怪しいメッセージをしてる相手はいない。
そのため浮気の可能性はゼロに近いと思っている。
だけど、あまりにも素っ気なさすぎて、正直最近の彼の目にはあたしの姿が写っていない気がする。
正しくは写っているけど気にしていない。
人間の目線の中に鼻は必ず写っているのに写っていないと認識する現象と同じような感覚。
その彼からの認識があたしからすればとても苦だった。
あたしだけ見てて欲しい。
あたしのことだけで頭を埋めつくしたい。
花なんて育てなくていい。
ゲームはしてもいいけどその倍以上あたしを構って欲しい。
スマホ見るならアルバムにあるあたしの写真だけ眺めてて欲しい。
この束縛って、間違っていることなの。
数日後、ずっと心の中に留めてたことがついに口から漏れた。
「あたしとそれ、どっちが大事なのさ。」
面倒くさい彼女のテンプレのような文だが、あたしからすれば大事なことだった。
「お前に決まってるじゃん。」
それをテンプレのような文で返してくる彼。
「じゃあなんでずっと花ばっかり眺めてるの、なんでずっとスマホいじってるの、なんでゲームばっかりしてるの。もう少しあたしに構ってくれてもいいじゃん。」
あたし自身、この会話が相手からすればめんどくさくてしょうもないことだとわかっていた。
それでも聞かないと、あたしが壊れそうだった。
彼からの返答はなかった。
その時、あたしの体は動いていた。
気づかない間に隅にある花は窓から投げ、ゲーム機は叩き割っていた。
ここまで酷いことをしなくてもいいとわかっていたが、勝手に動いてしまった。
彼はあたしを掴み殴った。
殴ってくれた。
一瞬でも彼の瞳にしっかりあたしという存在が写った。
それだけであたしの心は満たされた。
これからはいくら殴ってもいい、蹴ってもいい。
何してもいいから、その目の奥にあたしという物体を写して欲しい。
その後、彼はすぐさま外に投げられ落ちた花を見に行った。
花瓶は割れ、土は至る所に舞い、花は落下の衝撃に耐えられなかったのか潰れかけている。
大事なもの、あたしは彼以外ない。
彼が居るならなんだって捨てられるし失えれる。
でも彼は違うみたい。
潰れた花を大事そうに抱えて上がってきた。
復活させたいのか別な花瓶を探しているが、元に戻らないことなんて分かりきっている。
残ったのはあたしと君。
「これからは、あたしだけを大事にしてね。」




