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ストーカー  作者: Mr.M
エピローグ 神在月

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85/94

第85話 痕跡

女は咄嗟に周囲を見回した。

黒いドレスの女の声は

他の客には届いていないようだった。

「あなたが大烏亜門を殺そうとしなければ、

 私は真相に気付くことはなかった。

 なぜこんなに早く彼を殺そうとしたの?

 あなたらしくない。

 じっと待つのは得意でしょう?」

黒いドレスの女がじっと女を見つめていた。

その瞬間、

女の頭にある考えが浮かんだ。

この街にいるという

奇抜な格好をした名探偵の噂について。

女はその名探偵とは

てっきり大烏亜門のことだと思っていた。

たしかに彼の格好は

その容姿と相まって滑稽に見えたが、

スーツという点でいえばごく普通だった。

しかし。

今目の前にいる黒いドレスの女の格好は、

奇抜という言葉がぴたりと当てはまる。

まさかこの黒いドレスの女が

噂の名探偵なのか。

女の頭の中で警鐘が鳴った。

「何を仰っているのかわかりませんわ」

女は至って冷静に返した。

「八木明人が犯人とされている

 2件の殺人事件についてよ」

間髪を入れずに黒いドレスの女が畳み掛けた。

黒いドレスの女の言葉には

目上の者に対する敬意はなかった。

「私はその3件目の

 被害者となるところだったのです。

 それを主人が救ってくれたのです」

女はグラスの水を飲んだ。

それから黒いドレスの女の目を見た。

2人の視線がぶつかった。

「そのご主人は今や病院のベッドの上で

 死にかけている」

「秘密を守る一番最善の方法は、

 秘密を知っている人間を殺すこと。

 そう仰りたいのですか?」

そう言って女がにこりと微笑んだ。

この笑顔が多くの人間を魅了することを

女はよく知っていた。

それが男だけでなく同性にも有効であることも。

「あなたの主張を裏付けているのは

 大烏亜門の証言だけ。

 それに。

 彼が死ねば遺産というおまけもついてくる。

 願ったり叶ったりよね?」

女の笑顔を無視して

黒いドレスの女は窓から下の通りを覗いた。

「八木明人が犯人でないことを証明するのは

 それほど難しくはないわ。

 警察の捜査情報を

 犯人であるあなたに話すのは

 どうかと思うけど。

 2件の殺人事件の被害者2人と、

 八木明人の過去の暴行事件の被害者達には

 明確な相違点があるの。

 それを考えれば

 彼が犯人ではないことは明白なの」

そして黒いドレスの女は

改めて女の方へ視線を向けた。

「八木明人の暴行事件だけど、

 あなたも知ってる通り

 彼は裸にした女性の体を前に

 自分で欲望を処理していただけなの。

 実際に行為に及ぶことはなかった」

「・・そうですか。

 初めて知りました。

 ですが。

 それが一体どうしたというのです?」

女はふたたび微笑んだ。

その笑顔の前に

黒いドレスの女は開きかけた口を一度噤んだ。


2人の間に沈黙が流れた。


黒いドレスの女は

何を話すべきか思案しているようだった。

女は優雅に髪を掻き上げた。

「どうしました?

 もうお話は終わりですか?

 それなら・・」

「でも不思議なことに。

 2件の殺人事件の被害者達の膣内には

 裂傷が見られた。

 さらにそれは死後につけられた

 痕跡だとわかった」

黒いドレスの女の瞳が妖しく光った。

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