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ストーカー  作者: Mr.M
エピローグ 神在月

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第83話 2人の女

「ここ、いいかしら?」

女が窓から外を眺めていると

ふいに声がした。

テーブルの前に黒いドレスの女が立っていた。

黒いドレスの女は返事を待つことなく

女の対面に座った。

女は黒いドレスの女を見て言葉を失った。

一瞬の後、

我に返った女は周りを見回した。

店内にはまだ空席があった。

にもかかわらず、

相席を求めてきたこの黒いドレスの女は

何者だろうかと女は訝しく思った。

女は気を取り直して改めて

目の前の黒いドレスの女を観察した。

白い肌に赤い髪。

頭には黒いリボン。

何て悪趣味な。

女はそう思った。

しかし不思議と違和感がなかった。

それは黒いドレスの女の美しさが

錯覚させているのだと女は理解した。

美しいということはそれだけで正義なのだ。

女は黒いドレスの女の得も言われぬ美しさに

心の底から驚いた。

テレビや雑誌に出ている女達を見て、

どうして自分よりも醜い人間が

もてはやされているのか女は不思議だった。

プロのメイクやスタイリストが付いて

あの程度のレベルなのだ。

到底自分の美しさには及ばない。

そう思っていた。

その疑問は年齢を重ねて、

世の中の仕組みを知ることでようやく解決した。

テレビや雑誌に出ている人間が

特別に美しいわけではないのだと。

メディアに露出しているのは

世間が求めているからではない。

ごく狭い業界の中だけで

需要があるにすぎないのだと。

つまり事務所の力やコネ。

それに。

自らの肉体を使った接待すら

厭わない連中もいる。

いつの世も

上に媚びて取り入る者は多い。

カラクリがわかれば興覚めだった。

この世は偽物が本物の皮を被って

我が物顔で歩いているのだ。

しかし。

目の前の黒いドレスの女は違った。

この女の美しさは本物だ。

そう思った。


2人の目が合った。

女は小さく微笑んだが、

黒いドレスの女は

ただ無表情に女を見つめていた。

女は若干居心地の悪さを感じて

黒いドレスの女から目をそらした。

目の前に座るこの黒いドレスの女は何者だろう。

自分に用があるのか。

以前にどこかで会ったことがあるだろうか。

様々な疑問が女の頭に浮かんでは消えていった。

その時。

マスターが水とおしぼり、

そしてメニューを持って現れた。

黒いドレスの女は

メニューを開かずにルワンダを注文した。

マスターはやや困惑したものの、

「かしこまりました」

と静かに答えてカウンターに戻っていった。


白髪の男は

美女の組み合わせに満足げに頷いていた。

30代の男は

チラチラと2人に目をやりつつ、

どちらの女がより魅力的か値踏みしていた。

カップルの男の方は

彼女の話に耳を傾けつつも、

2人の女の様子をそれとなく窺っていた。

傍から見れば、

2人の美女が

待ち合わせをしているように見えた。

しかし。

マスターだけはそうではないことを知っていた。

2人が待ち合わせをしているのであれば、

注文をするときは一緒に頼む。

女はそんな素振りも見せずにすぐに注文をした。

黒いドレスの女は

女の注文を確認することもなく

コーヒーだけを注文した。

それでも。

この2人の関係性までは

マスターにもわからなかった。

もっともそれ以上深く探ろうとは思わなかった。

客のプライベートには

干渉しないよう努めてきた。

「見ざる、聞かざる、言わざる」

これが給仕のあるべき姿だと考えていた。

だが。

何故か気になった。

2人の女の醸し出す雰囲気がそうさせるのか。

しいて言えば緊張感か。

だが緊張しているのは一方の女だけだった。

黒いドレスの女はごく自然に

テーブルに腰掛けていた。

他の客は2人の美しさに惑わされて、

その関係性を誤解している。

マスターにはそれがわかっていた。

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