表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストーカー  作者: Mr.M
一章 文月
8/94

第8話 彼女と3人の予約客

それからも彼女は水着姿で施術を受け続けた。

徐々に水着も過激になり、

さらには施術中、

彼女は体をくねらせたり、

微かな吐息や喘ぎ声ともつかぬ囁きを

発するようになった。

そして。

僕は確信した。

彼女の異常な性癖を。


この半年の間。

僕は

「見ざる、聞かざる、言わざる」

を貫き通して彼女の施術をやり過ごした。

そして。

僕という玩具に飽きたのか、

彼女の来店頻度も少しずつ減っていった。


明日はそんな彼女がやってくる。

前回の施術から3週間が空いてた。

午前中の予約が彼女1人というのが

せめてもの救いだった。

精神と体力を著しく消耗する彼女の施術の後では

僅かでも休息が必要だった。

午後からの予約客は

14時から

八橋菖蒲やつはし しょうぶ

15時30分から

柏木督右衛門かしわぎ とくえもん

17時30分から

柳道風やなぎ みちかぜ

の3名だった。


八橋菖蒲は50代の専業主婦だった。

子供はすでに独立していて

今は夫婦2人で悠々自適に暮らしていた。

彼女の話のほとんどは旦那に対する不満で、

来店の度にそれを聞かされていた。

彼女は

月に一度は来店してくれるお得意様だった。


柏木督右衛門は現役のプロレスラーだ。

プロレスラーにしては

それほど大きいとは言えない体だったが、

見た目だけで判断してはいけない。

服の下に隠されたその肉体は、

実際に施術をすると

その鍛え抜かれた筋肉に驚かされる。

そして目立ちすぎる赤毛。

彼は

「RED BEAN」

というリングネームを持つ

有名な覆面レスラーだった。

普段の柏木は

物腰の柔らかい優しい人間だったので

初めて彼の試合を動画で見た時、

荒々しく反則ギリギリのプレイスタイルに

驚かされた。

外見だけでは

その人間の本質はわからないのだ。

柏木も定期的に来店してくれるお得意様だった。


最後の柳道風は初めての客だった。


予約状況を確認した後、

僕はパソコンのDドライブに保存している

『xxx』という名のファイルを開いた。

それは日付と曜日が書かれただけの

テキストファイルだった。

最も古い日付は5年前のものだった。

一方、

最も新しい日付は6月20日(月)だった。

思い出した。

梅雨の合間の曇りの日だった。

今日が7月18日だから、

あれからもうすぐ1か月が過ぎようとしていた。

僕はファイルを閉じた。

「はぁ」

ついつい溜息が漏れた。

明日の安倍瑠璃の体が、

僕の歪んだ情念に火を点けなければよいのだが。



僕はパソコンの電源を落として部屋に戻った。

テレビを点けると

丁度18時30分からのニュースが始まった。

最初のニュースは

連続殺人事件に関することだった。

『先月、稲置市で発見された

 女性の他殺体に関する続報です。

 こちらは先月の22日未明、

 稲置市の雑居ビルの敷地内で

 全裸女性の他殺体が発見された事件で、

 警察では去年から続く一連の殺人事件の

 5人目の被害者である可能性が高い

 との見方を強めています』

この連続殺人事件が

世間の話題に上ったのは

今年に入ってからだった。

元々無関係と思われた4件の殺人事件が

同一犯によるものと判明すると

マスコミが競って世間を煽った。

判明していないだけで

もっと多くの被害者がいるなどと言う者もいた。

当然、

いまだにその犯人は捕まっていない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ