第75話 シナリオ通り
「そう。
それが殺人よ。
ストーカーは
八木明人が暴行した女性を手にかけたのよ。
最初は偶然かと思った八木明人も、
2件目に顔見知りの人間が殺されて
気が付いたの」
「ま、待ってください、
1件目で気が付かなかったんですか?」
「警察の捜査でも、
八木明人と
1件目の殺人事件の被害者の接点は
わかってないんでしょ?
それまでの八木明人の
犯行手口はわからないけど、
1件目の殺人事件の被害者については
計画性はなかったようね。
だから八木明人は
まさか自分が暴行した女性が
殺されたなんて思いもしなかった」
「そして2件目の殺人事件が起きたと。
八木はさぞかし驚いたでしょうね・・」
「そうね。
この時、
八木明人がなぜ身近な人間を襲ったのか。
それは本人に聞かないとわからないけれど、
とにかくここで気付くのよ。
自分の襲った相手が
殺されているということに。
そう考えたら1件目の被害者も
もしかしたらと思うわよね?
自分の秘密を誰かに知られている。
そしてその誰かは
自分が暴行した女達を殺している。
状況からすれば
自分が殺したことにされかねない」
「想像しただけでもゾッとしますけどね、
それが事実だとしたら」
「2件目の殺人事件が起きたのが8月16日。
八木明人が
ここに相談に来たのはいつだったかしら」
女に言われて男は記憶を探った。
「あれはたしか。
26日だったと記憶しています」
「つまり10日間は1人で脅えてたのね」
女の言葉に男はぶるっと身を震わせた。
「そして今。
八木明人は殺人犯として逮捕されている」
「つまりストーカーのシナリオ通り
ということですか?」
「それはわからないけど。
でもそれなら辻褄は合う」
「本当の殺人犯は
八木のストーカーということですか?」
「そういうことになるわね。
これでいよいよ私の考えていた通り、
2件の殺人事件の犯人は
女である可能性が高くなってきたわね」
女がにんまりと笑った。
男は小さく溜息を吐いた。
「それで・・。
そのストーカーというのは一体、
誰なんですか?」
その問いに女は口を尖らせた。
「さあね。
これだけの情報じゃここまでね。
わかるのは八木明人は暴行犯であれど
殺人犯ではないということ。
殺人犯は八木明人のストーカーだということ。
そして前から言ってるけど、
この2件の連続殺人事件の犯人は
女だということ。
以上」
女はそう言って
カップに残った紅茶を飲み干した。




