第63話 『千代丸急送』
僕は意識を失った彼女をベッドに運んでから
1枚ずつ丁寧にその服を脱がしていった。
高揚感に僕の手は震えていた。
何も身に付けていない彼女は
まさに芸術品だった。
彼女の体を明るい光の下でじっくりと観察する。
全身の白い肌とは対照的な
黒い陰毛が僕の目を引いた。
綺麗に手入れされたソレは、
彼女の秘めた部分を隠すどころか
より官能的に際立たせていた。
僕はそっと割れ目に沿って中指を這わせた。
湿っているのは首を絞めたときの反動だろうか。
もっと観察していたいという気持ちを抑えて
僕は次の行動に移った。
彼女の服をたたんでから荷物と共に車へ運んだ。
それから用意しておいたロープを使って
彼女の両手両足を縛った。
念のために目隠しもした。
そうしておいてフルフラットにした助手席に
彼女を横たえた。
時計を見ると21時になっていた。
思いのほか時間がかかってしまった。
僕は運転席に身を沈めて
一度大きく深呼吸をした。
スマホを手に取って大烏へ連絡した。
すぐに大烏に繋がった。
「も、もしもし」
僕は自然と小声になった。
「ふむ。
どうかね?」
「い、今・・彼女を車に乗せたので、
これから『千代丸急送』へ向かいます」
「それなら21時20分には着くだろう。
後のことは心配しなくてもよい」
大烏の声は落ち着いていた。
「は、はい。
よろしくお願いします」
僕は電話を切ると急いでエンジンをかけた。
日曜日の夜ということもあってか、
走っている車の数は少なかった。
そして運の良いことに、
信号でとまることもなく
気付けば制限速度を大幅にオーバーしていた。
僕は慌てて速度を落とした。
今この状態で警察に捕まったら
目も当てられない。
小さく息を吐きだして気持ちを落ち着かせた。
前に2台の車が走っていた。
バックミラーで後ろを確認すると
数台のライトが見えた。
2つ目の橋を渡ると前を走る車がいなくなった。
バックミラーにはこの車線に1台。
そして隣の車線にも1つのライトが確認できた。
3つ目の橋を過ぎると
左手前方に見覚えのあるコンビニが見えてきた。
そのままコンビニを通り過ぎてさらに進んだ。
車線が一車線になる頃には
バックミラーに映るライトも消えていた。
ふと。
これまで何度も考えたことが頭をよぎった。
この状況で犯人はどうやって
こちらの行動を把握しているのだろうか。
自宅を出てから3度目となる赤信号に捕まった。
対向車線にも車はいない。
と。
後ろから近づいてくるライトが見えた。
さっきまでいなかったのに
一体どこから現れたのか。
車が後ろでとまった。
バックミラーを注視するも
ヘッドライトの光で車の色はおろか
車種すらわからなかった。
当然、運転手の顔は見えなかった。
時計を確認すると21時15分だった。
信号が青に変わった。
後ろに気を配りつつ僕はアクセルを踏んだ。
走り始めても気は抜けない。
後ろの車が警察の車ということも考えられる。
僕は制限速度を保ちつつハンドルを握った。
目印の信号が見えてきた。
今度は信号に捕まることはなかった。
僕は左にハンドルを切った。
後ろの車はそのまま直進したようだ。
2ブロック目を左折してさらに少し進むと、
右手に『千代丸急送』の倉庫が見えてきた。
僕は車のライトを消して
敷地内に車を乗り入れた。
その風景は下見に来た時とほとんど同じだった。
今は4台のトラックが
敷地内に整然と並んでいた。
僕は非常灯の小さな灯りが点いている
事務所の横に車をとめた。




