第62話 誰かに視られてる・・
20時30分を過ぎていた。
先ほど施術が終わったばかりだった。
カーテンの向こうから
服を着替える音が聞こえていた。
僕は外の様子を確認するために表に出た。
辺りは闇に包まれていた。
誰もいない。
絶好のシチュエーションだった。
その時。
またしても疑問が頭をかすめた。
犯人は今もどこからか僕を視ているのだろうか。
視界の中に動くモノはなかった。
誰もいない。
高い所から観察しているのだろうか。
気になるのは通りを挟んで
斜め向かいにある古い2階建てのアパートだが、
窓から明かりが漏れているのは、
2階にある3部屋のうち
真ん中の1部屋だけだった。
1階はアパートを囲む塀が邪魔をしていた。
僕は中に戻った。
着替えを終えた彼女がベッドに腰掛けていた。
「す、すみません。
そ、外が少し騒がしかったもので・・」
僕は咄嗟に言い訳をした。
彼女は「聞こえませんでしたわ」と首を傾げた。
じわりと汗が滲んだ。
僕はドアを開けて彼女を外へ誘った。
そんな僕の行動に彼女は一瞬、
怪訝な表情を浮かべたが
「ありがとうございました」
と頭を下げてから踵を返して歩き出した。
僕は素早く周囲を見回した。
そして誰もいないことを確認して
僕は静かに彼女の後を追った。
心臓の鼓動が早くなり、
僅かに手が震えていた。
これまでにない感情の昂りだった。
僕は大きく息を吸ってから
彼女の背中へ向かって飛び掛かった。
彼女が振り返ろうとしたその瞬間、
僕の腕は彼女の首に絡みついていた。
「あっ!」
という彼女の一声が辺りに響いたものの、
すぐに静寂が戻ってきた。
彼女の身体を後ろへ引きながら首を絞めていく。
僕の腕を掴んだ彼女の手が
その力を失ったのがわかった。
家の前に着いた時には彼女は意識を失っていた。
彼女を中に入れてからもう一度外を確認した。
先ほどと何も変わった様子はなかった。
誰もいない。
ただ犯人だけが
どこからかこの様子を視ているのだろうか。




