第61話 10月16日。日曜日。
10月16日。日曜日。
僕は朝から落ち着かなかった。
この日の予約客は午後からの3人だけだった。
13時からは尾形剛が、
15時からは柏木督右衛門が入っていた。
そして最後の客が・・
19時からの安倍瑠璃だった。
14時30分。
尾形剛の施術が終わった。
16時50分。
柏木督右衛門を送り出した。
あとは安倍瑠璃を待つだけだった。
僕は部屋に戻ってテレビを点けた。
19時まであと2時間。
僕はもう一度頭の中で手順を確認した。
大丈夫だ。
何も問題はない。
19時になっても彼女は現れなかった。
僕は携帯を手にしたまま
室内をぐるぐると歩き回っていた。
彼女に連絡したほうがいいだろうか。
もしかしたら来る途中で
事故に遭ったのかもしれない。
まさかとは思うが
僕の企みに気付いたのだろうか。
様々な考えが浮かんでは消えていく。
時間だけが空しく過ぎていった。
いつの間にか時計は19時30分を指していた。
ついに耐えられなくなって
彼女に連絡しようとしたその時、
「こんばんは」
という声と共にドアが開いた。
「遅れてすみません」
彼女は入ってくるなり頭を下げた。
「じ、事故に遭われたのかと心配しました」
安倍瑠璃はもう一度
「すいませんでした」と頭を下げると、
薄手のコートを脱いでベッドへ向かった。
そして彼女は自分でカーテンを閉めた。
「ジャージをお借りしてもよろしいですか?」
カーテンの向こうから彼女の声が聞こえた。
僕はすぐにはその言葉の意味が
理解できなかった。
そして困惑しつつも、
カーテンの隙間から伸びている彼女の手に
ジャージを渡した。
すぐにカーテンの向こうから
服を脱ぐ音が聞こえてきた。
「・・着替えが終わりました」
僕は一度大きく深呼吸をしてから
カーテンを開いた。
ベッドに横になった彼女の姿を見て
僕の頭は激しく混乱した。
彼女は僕の渡したジャージに着替えていた。
水着でも裸でもなかった。
その時ふと、
バス停に佇んでいた彼女の後姿が思い出された。
その瞬間。
僕の頭の中で何かが弾けた。
今夜、
彼女の体にこのどす黒い欲望をぶちまける。
『鳴かぬなら鳴かせてみよう・・』
そして僕はベッドの横に立った。




