第57話 うってつけの場所
家に帰り着いたら21時50分だった。
僕はすぐにパソコンの電源を入れた。
それから予約名簿を確認した。
安倍瑠璃の前回の来店は、
9月15日。木曜日。
となっていた。
最近の彼女は月に1度の来店頻度なので、
次の予約は
早くてもあと1週間は先になりそうだった。
それまでに
『どこで』
を決めなければならないが、
これは僕の中でほぼ決まっていた。
『野分岬』
通称、恋人岬。
稲置市の最東端にある岬だった。
そこには古い灯台があって、
恋人達が甘い時間を過ごす場所として
人気があった。
しかし。
今では日が落ちると誰も寄り付かない。
数年前に
そこで陰惨な殺人事件があったからだ。
ある夜。
そこに集いし恋人達が
鉈を持った1人の男によって惨殺されたのだ。
最初に車の中にいたカップルが犠牲に。
そして。
その近くにいたカップルは
鍵をかけた車の中にいたために難を逃れた。
犯人はそのまま灯台のほうへと歩いていった。
これは文字通り歩いていった
と生き残ったカップルが証言した。
そのカップルの通報で警察が駆けつけた時には、
灯台のところにいたもう1組のカップルも
男の手によって殺されていた。
男は捕まることを恐れたのか警察が来る前に
海へ身を投げた。
男の死体は未だに見つかっていなかった。
それ以来。
誰が言い出したのか
「恋」の字に「変」を当てて、
今では『変人岬』と呼ばれていた。
さらに最近では、
夜になると殺人鬼が灯台を徘徊している
という噂話まで流れていた。
襲った後の彼女を連れていくには
うってつけの場所と言えた。




