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ストーカー  作者: Mr.M
四章 神無月

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第56話 視線の先・・

大通りに出ると街灯や車のライトが

ふたたび暗闇を照らしていた。

僕は改めて人工の灯りに感謝をした。

「あっ!

 信号が変わっちゃう。

 急ごう八木さん!」

突然もしほが走り出した。

見ると横断歩道の信号が点滅を始めていた。

僕は自転車に跨り急いでもしほの後を追った。

「あ、八木さん狡いっ」

小走りのもしほの横を並走して

僕達は無事に横断歩道を渡りきった。

そして僕は自転車を降りた。

その時。

何の前触れもなくふと思った。

今この時にも

犯人はどこからか僕を見ているのではないか。

それならば。

今ギリギリで横断歩道を渡った僕は、

犯人の尾行を振り切ったのではないか。

僕は振り返った。

横断歩道の向こう側には、

4人組のサラリーマンに2人組みのOL、

それから自転車に跨っている

学生服の男子が1人。

あとは少し離れたところに中年の男が1人いた。

あの中に犯人がいるのだろうか。

目を凝らして人々の顔を確認しようとしたが、

大通りの交差点とはいえ、

街灯と車のライトだけでは不十分で

はっきりと彼らの顔を確認することは

できなかった。

「どうしたの?」

「い、いや。

 知ってる人がいたような気がして」

咄嗟に僕は誤魔化した。

「あれ?」

するともしほが僕の視線の先を見て首を傾げた。

今度は僕が訊ねる番だった。

「ちょっと前に刑事さんが2人、

 お店に来たことがあって」

刑事という言葉に僕の足元が大きく揺れた。

「け、刑事が?」

「うん。

 ニュースでやってた

 殺人事件の聞き込みらしいんだけど・・」

僕は倒れそうになる体を踏ん張って、

もしほにその時の状況を訊ねた。



もしほが言うには、

店に来たのは刑事ドラマに出てくるような

たたき上げの中年の刑事と

20代前半の若い男の

2人組とのことだった。

中年の刑事は目明さっか あきら

若い刑事は不破関ふわ とおる

と名乗ったそうだ。

2人は連続暴行殺人事件の

聞き込みをしていると言った。

好奇心旺盛なもしほがあれこれと訊ねると

中年の刑事は渋い顔をしたが、

若い刑事は嬉々として答えてくれたらしい。

どうやら警察は

メシモリが自転車に乗っていたことから、

犯人も車ではなく自転車を使ったのではないか

と考えているらしかった。

つまり。

警察は犯人の生活圏に、

メシモリのバイト先であるコンビニが

含まれているという推理の元、

その周辺の聞き込みをしていたのだった。


それを聞いた時の僕の動揺は計り知れなかった。

一瞬、

目の前が真っ暗になり

平衡感覚が失われたような錯覚に陥った。

それをもしほに悟られないように

僕は足に力を入れて必死に踏ん張った。

「・・そ、それで?」

僕はもしほの言葉を

一言一句聞き漏らすまいと耳をそばだてた。

「『それで?』って言われても。

 怪しい人物は見かけなかったかって

 聞かれたけど、

 そんなの外見だけでわからないでしょ?」

「警察は犯人について何か言ってなかった?」

焦った僕は結論を急いだ。

「うん。

 年配の刑事さんが

 『喋り過ぎるな』

 って注意したからそれ以上は聞けなかったの」



結局。

交差点でもしほが見かけた男は

刑事ではなく人違いだったようだが、

もしほから話を聞いた後の僕は

すべてが上の空だった。

気付けば稲置駅まで来ていた。

駅の北口は明るく、

この時間でもチラホラと人が見受けられた。

もしほは駅の南側に建つマンションで

両親と暮らしていると言っていた。

彼女は

「ありがとう」と手を振って自転車に跨ると、

駅ビルの方へと消えていった。

僕はしばらくその場に立ち竦んでいた。


駅前の大きな時計を見上げると

21時35分だった。

僕はバス乗り場に向かった。

その時。

ふと以前安倍瑠璃を見かけた時のことを

思い出した。

僕はあの時の記憶を頼りに

彼女が立っていたバス乗り場を探した。

駅前のロータリーの西側には

1番乗り場から4番乗り場までが、

東側には5番乗り場から7番乗り場までがあった。

彼女を見たあの時間は人で溢れていた。

今と比べて随分とその景色が違っていた。

1番乗り場から2番、3番と順に通り過ぎ、

4番乗り場に差し掛かったところで

僕は足を止めた。

それからふたたび3番乗り場に戻った。

ここだ。

僕の記憶がそう告げていた。

僕は3番乗り場のバスが

どこに向かうのかを確認した。

バスの行先は明野方面だった。

その後。

僕は4番乗り場にきたバスに乗り込んだ。

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