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ストーカー  作者: Mr.M
四章 神無月

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第55話 送り狼・・

気付けば『クリーンマート』が見えてきた。

店の横に見覚えのある自転車がとまっていた。

「私、飲み物を買ってこようかな」

そう言ってもしほは駆け出した。

「も、もしほちゃん。

 ぼ、僕は外で待ってるよ」

僕はもしほの背中に向かって呼びかけた。

駐車場の片隅から

僕はこっそりと中の様子を窺った。

コンビニの制服を着たショートカットの少女が

レジに立っていた。

メシモリの代わりに雇われた

新しいバイトの子だろうか。

もしほがレジに並ぶのが見えた。

その瞬間、

レジにいるショートカットの少女が

ヨタカであることに気付いた。

彼女は長く綺麗だった黒髪を

バッサリと切っていた。

ヨタカの心境に

何か大きな変化があったのだろうか。

それはメシモリの死か。

それとも単に失恋をしたのだろうか。

少女が髪を切れば、

そこに失恋の2文字を思い浮かべてしまう僕は、

やはり女心をわかっていないのかもしれない。


しばらくしてもしほが出てきた。

僕の方へ小走りでやってくるその姿は

小動物のようだった。

さながらリスといったところか。

「お待たせ、いこっ!」

僕達は歩き出した。

メシモリを尾行したときに通った道を、

こうしてもしほと2人で歩くことに

言い知れぬ抵抗を感じた僕は、

「もしほちゃん、1つ中の道にしない?」

ともしほに提案した。

もしほは不思議そうに首を傾げつつも

「いいよ」と僕の提案を受け入れた。


僕達は小さな交差点を右に曲がり、

住宅街の静かな通りへと足を踏み入れた。

『クリーンマート』の裏手を流れている

毘沙門川に沿って道が続いていた。

さきほどまでの大通りに比べると、

街灯もなく通りは真っ暗だった。

人も車もまったくいない。

まるで別世界に迷い込んでしまったかのような

錯覚に陥った。

足が重くなって僕はもしほから少し遅れ始めた。

ドクッ。

心臓が大きく踊った。

前を歩くもしほの後姿がぼやけた。

もしほの服の下には、

一体どんな体が隠されているのだろうか。

僕の中のどす黒い欲望が

周囲の闇に紛れて顔を覗かせた。

月の光さえも飲み込んでしまう深い闇を、

夜はその中に孕んでいる。

暗闇で人は恐怖を感じる。

闇が妄想を生み出すからだ。

闇の中でミる妄想を夢と呼ぶ。

夢から目覚めた現実で人は何を思うのか。

悪夢から目覚めてホッと胸を撫で下ろすのか。

それとも幸せの続きが中断されて

肩を落とすのだろうか。

どちらにせよ夜は人を狂わせる。

僕は頭を振って汚らわしい妄想を振り払った。

「・・さん?八木さん?」

ハッとして僕は声のする方へ目を向けた。

もしほが足を止めてこちらを振り向いていた。

「う、うん?

 ど、どうした?」

「『どうした?』じゃないわよ。

 ぼーっとしちゃって。

 ちゃんと前を見て歩かないと危ないわよ」

「あ・・う、うん」

僕は慌ててもしほの側へ駆け寄った。

僕達はふたたび並んで歩き出した。


いつの間にか

話題はもしほの恋愛話へと移っていた。

もしほは2年間彼氏がいないと不満を口にした。

女性と付き合ったことのない僕は

もしほの話をただ黙って聞いていた。

それでももしほは時折、

質問を投げてきた。

「八木さんは彼女はいないの?」

と聞かれた時は、

「いるわけないよ」と正直に答えた。

「嘘だ」ともしほは言ったが、

僕に嘘をつく理由がないことがわかると

それ以上は追及してこなかった。

それからもしほは自分の過去の男達が

どれほど最低だったかを力説した。

ふと。

もしほが立ち止まった。

「私、男の人を見る目がないのかな?」

もしほはぽつりと呟いて

僕の方をじっと見つめてきた。

その潤んだ瞳に吸い込まれそうになった僕は

ごくりと唾を飲み込んだ。

今夜のもしほはどこかおかしい。

夜の闇がもしほまでも狂わせているのか。

闇はあらゆる欠点を覆い隠す。

だから人は闇の中で大胆になる。

彼女の真っ直ぐな視線は

男を求めているのだろうか。

僕はもしほの視線から逃れて深呼吸をした。

それから。

もしほの方をチラリと盗み見た。

しかし。

もしほはもう前を向いて歩き出していた。

若干の肩透かしを食らった気もするが、

正直僕はホッと胸を撫で下ろした。

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