第53話 事故を装って・・
大烏が帰って1人になった僕は
カップに残ったコーヒーを飲み干した。
それから大きく息を吐きだした。
とりあえず。
これで問題解決の目途は立った。
しかし。
そこでもう1つの問題に直面する。
見つけ出した犯人をどうするのか?
当然のことだが警察に引き渡すことはできない。
結局答えは1つしかないのか・・。
殺す。
しかしどうやって?
それに首尾よく殺せたとしても
僕自身が殺人の罪で捕まってしまっては
本末転倒である。
それならば。
偶然の不運を装うというのはどうだろう。
つまり。
事故を装って殺す。
まず思いつくのは交通事故だ。
轢き殺すか、
もしくは歩いている犯人を
車が通るタイミングで車道へ押すか。
どちらにせよこれはハードルが高い。
次に考えられるのは
交通事故に近いが鉄道事故だ。
駅のホームから突き落とす。
これは相手が電車を利用していることが
前提となっている。
たとえ利用しているとしても
立ち位置の問題が出てくる。
おまけに周りに多くの他人の目がある中で
実行するのは困難だ。
今の時代監視カメラもあるだろう。
他に思いつくのは水難事故か。
これは使えるのではないか。
事故に拘らずに海に沈めてしまえばいいのだ。
つまり。
死体がなければ事故でも事件でもない。
単なる失踪か行方不明者として扱われる。
それに死体を沈める場所もすぐに頭に浮かんだ。
その時。
気配を感じて僕は顔を上げた。
コーヒーを手にしたもしほが
僕の向かいに座っていた。
「も、もしほちゃん・・」
「もう。
八木さんったら全然気付かないんだもん」
そう言ってもしほは頬を膨らませた。
もしほは「お腹が空いた」と独り言ちた。
どうやらもしほはバイトが終わったようだ。
「もしほちゃん、何か食べるかい?
今日は僕がご馳走するよ」
もしほはその言葉を待ってましたとばかりに、
カウンターに向かって叫んだ。
「マスター、親子丼。
八木さんの驕りだって」
マスターはやれやれといった表情を浮かべて、
僕の方へ申し訳なさそうに頭を下げた。
僕は食欲がなかったので
もしほにコーヒーのお代わりを頼んだ。




