第48話 悪魔の囁き
店の外から車のエンジン音が聞こえてきた。
時計を見ると15時だった。
僕達は奥のテーブル席へと移動した。
席に着くなり大烏はコーヒーを注文した。
「そ、それで・・何かわかったんですか?」
僕ははやる気持ちを抑えきれず口を開いた。
「ふむ。
この1週間、
君は何か気付いたことがあるかね?」
大烏は僕の質問に質問を返した。
心当たりがなかったので僕は首を振った。
「この1週間、
私は君の自宅周辺を見張っていたのだがね。
気付いたかね?」
「えっ・・」
「ふむ。
どうやらその顔は
まったく気付いてなかったようだね。
まあ君に気付かれるようではプロ失格だがね」
「そ、それで・・何かわかったんですか?」
僕は同じ質問をした。
その時。
もしほがコーヒーを運んできた。
僕は慌てて口を噤んだ。
もしほが下がると
大烏はゆっくりと香りを楽しんでから
口をつけずにカップをテーブルに置いた。
「あの手の盗聴器の電波は
それほど遠くまでは届かない。
つまり。
犯人が君の行動を盗聴器から得るには、
ある程度近くにいなければならないのだ」
僕は頷いてからカップを手に取った。
「しかしこの1週間、
君の自宅周辺には怪しい人物は現れなかった」
「そ、それは、つまり・・」
「犯人はもう盗聴をしていないと思われる」
「ほ、本当ですか・・」
「ふむ。
確かにこの1週間に限ったことであるから、
完全にそうだとは言い切れないがね。
2件の殺人事件が
君の突発的な犯行に合わせて
起こったのであれば、
ストーカーが1週間もの間、
君の動向を探っていないというのはおかしい」
そして大烏はコーヒーを一口飲んだ。
それはつまり。
犯人はもう僕の近くにいないのだろうか。
ならば。
ふたたび夜の習慣を復活させたとしても・・。
僕は頭を振った。
問題はそこではない。
「そうなると。
もう犯人に辿り着く手掛かりは
なくなったということですよね・・」
「ふむ。
犯人は盗聴ではない別の方法で
君の動向を探っているのかもしれないね」
一難去ってまた一難。
つい溜息が漏れた。
「はっはっは。
そう気を落とすことはない。
犯人を見つけ出す方法ならある」
僕は驚いて大烏の顔を見た。
口元を歪めた大烏がこちらを見ていた。
その表情に僕は言いようのない胸騒ぎを覚えた。
「本来、
犯人を見つけるだけなら
回りくどい調査など必要なかったのだ」
「・・そ、そんな方法があるのなら
は、早く教えて下さいよ!」
僕は若干語気を強めて詰め寄った。
大烏は僕に目を向けたまま
もう一度コーヒーを飲んだ。
そして。
チラリとカウンターに目を配ってから
小声で囁いた。
「ふむ。
簡単なことだよ。
君がまた誰かを襲えばいいのだ」




