第46話 不安と恐怖
布団に入ったものの身体は火照っていた。
動画を見た後、
少し外を散歩したが、
高揚した気分は静まらなかった。
僕は真っ暗な天井を見たまま
頭の中で羊を数えた。
300匹を超えたあたりで
ようやく安武瑠璃の幻影が消えた。
1000匹に到達する頃には
徐々に瞼が重くなってきた。
ぼうっとした頭で1100匹を数えた時だった。
ふとある考えが頭をよぎった。
犯人が合鍵を持っているとしたら、
それはいつでもここに出入りができる
ということにならないか。
そして。
もし僕が眠っている時に犯人が侵入してきたら。
一瞬で目が覚めた。
心臓の鼓動が早くなる。
僕は全身が総毛立つような恐怖を感じた。
犯人はその気になればいつでも僕を殺せるのだ。
もしかすると。
これまでも僕の眠っている間に
侵入したことがあったのかもしれない。
失くした鍵がベッドの下から出てきたのも、
夜に犯人が侵入していたのだとしたら。
僕がこれまで生きているのは、
犯人の身代わり
という役割を与えられているからではないのか。
もしその必要がなくなり、
犯人にとって僕が用済みとなったら、
僕はどうなるのだろう。
大烏はこのことに気付いてるのだろうか。
あの大烏が気付いてないとは思えない。
きっとわかっていてなお大烏は、
僕に普段通りの生活を送れと言ったのだ。
僕を囮にして
犯人を捕まえるつもりなのかもしれない。
しかしその考えはすぐに否定される。
依頼人を危険に晒す探偵などいるはずがない。
いや・・大烏ならやりかねない。
悪い考えが次々と頭に浮かんだ。
そもそも大烏は犯人ではないのか?
疑心暗鬼だった。
他のことを考えようとすればするほど、
恐怖はどんどん大きくなっていった。
布団から出て、
僕はもう一度すべての戸締りを確認した。
そして入り口に空き缶と空き瓶を並べた。
万が一侵入されたら音が鳴るはずだ。
気休めかもしれないが
何もしないよりマシだった。
そして僕は布団に戻った。
不安と恐怖は拭い去れなかった。
僕は恐怖から逃げるように
必死で安倍瑠璃のことを考えた。




