第37話 背に腹は代えられない
8月30日。火曜日。
午前中最後の客を送り出すと
自然と溜息が漏れた。
時刻は11時30分を過ぎていた。
ここ2日間。
僕の中では相反する考えが
せめぎ合っていた。
探偵である大烏に調査を依頼すべきか。
しかし。
その大烏は容疑者の1人でもある。
もし。
大烏が犯人であれば、
こちらの行動はすべて筒抜けのはずである。
それならば大烏に調査を依頼して、
彼の出方を窺いつつ
対応を考えるのも1つの手段だった。
問題は大烏が犯人ではない場合だった。
依頼をするとしてもどこまで話すか。
僕の犯罪行為のすべてを話すことには
やはり抵抗があった。
ならば『禁断の果実』の時のように
多少の嘘を交えて相談をするか。
だが。
それは悪手だろう。
真実を隠して真相に近づくことは難しい。
大烏に依頼する場合、
僕の性癖を含めてすべてを包み隠さずに
話す必要がある。
その時。
大烏はどんな反応をするだろうか。
探偵に守秘義務があるのかはわからないが、
どちらにせよ。
不法行為には適用されないだろう。
それでも。
大烏が警察へ通報することはない。
僕はそう確信していた。
大烏の価値観は世間一般のそれと
大きくズレているからだ。
警察が白の軽自動車を探している。
日々、
水面下で捜査は進んでいる。
報道されていないだけで、
警察は他にも情報を掴んでいるかもしれない。
その情報が正しいかどうかは別としても。
もはや一刻の猶予もない。
背に腹は代えられない。
僕はスマホに登録した大烏の連絡先を表示した。




