第28話 魔女
現れたのは黒を基調としたドレスに身を包んだ
若い女性だった。
赤ワインにちなんだマルサラカラーの長い髪。
その頭には黒いリボンが付いていた。
胸元の大きく開いたドレスは
腰から膝上までがフリルで覆われた
ミニスカートだった。
全体の黒の主張が強すぎるために、
その胸元から見える肌の白さが際立っていた。
くびれたウエストにボリュームのある胸。
そしてスカートから覗く
黒いストッキングに包まれた太ももが、
妙に官能的だった。
これは。
ゴシック・アンド・ロリータファッション。
通称ゴスロリ。
実際にお目にかかるのは初めてだったが、
その印象はまるで魔女のようだった。
しかし。
これほど美しい魔女ならば怖くはない。
おまけにこのプロポーション。
僕の目はどうしてもその胸元に惹きつけられた。
あの柔らかそうな胸に顔を埋めて・・。
などと邪な考えが僕の頭に浮かんだ。
「ちょっと。
どこ見てんのよ」
その言葉に僕は我に返った。
彼女はまるで汚いモノを見るかのような目で
こちらを睨んでいた。
完全に失態だった。
この洋館と
目の前の彼女の一種異様な雰囲気の中で、
僕は正常な判断力を失っていた。
「あ、あの・・!
た、武衣さんに・・
な、中で待つように言われた者です」
僕は咄嗟にここの主である
武衣の名前を出した。
「・・武衣さんですって?
なに馬鹿なことを言ってるのよ。
『た・け・い』は私だけど?」
「え、え・・え?
あ、あなたが・・
た、探偵の武衣さん?」
僕の頭は混乱した。
彼女が溜息を吐いた。
「・・違うわよ。
『め・い・た・ん・て・い』
の武衣実果よ。
まさか私のことを知らないで、
ここに来る大馬鹿者がいるとは
思わなかったわね。
世も末だわ」
「じゃ、じゃあ・・
さ、さっき表で会った男の人は・・」
「武のことかしら。
そういえば忘れ物とかで
慌ただしく出ていったわね。
それで。
何の用かしら?」
僕は改めて目の前に立つ黒い魔女を見た。
初めはその奇抜な恰好と、
ドレスの胸元から覗く白くふくよかな肌に
目を奪われたが、
その顔は
子供っぽい可愛らしさと大人の色気が、
絶妙なバランスで混じり合っていて、
これまでに見た誰よりも美しかった。
美しい。
その言葉以外形容しようがなかった。
安倍瑠璃の美しさが髪型や化粧、
そして服装などにより
造られたモノであるとした場合、
こちらは自然、
いや天然の美を備えていた。
そして。
一度その美しさを意識してしまうと、
僕は彼女の顔を直視することができなかった。
僕は俯いた。
「ま。
とりあえず上がりなさいよ」
それから武衣はホール左側の部屋を指差して
そこで待つように指示した。
僕は言われるがままに靴を脱いだ。




