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ストーカー  作者: Mr.M
二章 葉月

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第27話 『Adam&Eve』

道路から少し奥に入ったところに

それは建っていた。

敷地を囲んでいる高い外壁からは

外界との接触を拒絶しているかのような

印象を受けた。

閉ざされたアーチ状の門が

より一層それを強調していた。

門の前には赤いミニクーパーがとまっていた。

僕はその隣に車をとめた。

そして車から降りて大きく背伸びをした。

門から中の様子を窺うと

緩やかに上った石畳の先に、

中世のお城にも似た洋館が見えた。

あれが探偵事務所なのだろうか。

その時。

表札があることに気付いた。

横長の表札にはアルファベットで

『Adam&Eve』

と書かれていた。

それを見て僕は急に不安になった。

「何か御用ですか?」

ふいに背後から声がした。

驚いて振り返ると、

そこには若い男がにこやかな笑顔で立っていた。


年の頃は20代半ばくらいだろうか。

真っ黒なサラサラのおかっぱ頭の下には

若いアイドルグループにいても

不思議ではない程に整った顔があった。

色白でモデルのように

スラリとした長身だったが、

若干頼りなさそうに見えた。

「どうなさいました?

 道に迷ったというわけではなさそうですし。

 『禁断の果実』に御用がおありでしたら、

 そちらの門からお入り下さい」

その声は男としてはやや高かった。

「あ、あの・・。

 事前に連絡ができなかったのですが・・」

突然の名探偵の登場に僕は緊張が隠せなかった。

「うちは飛び込みのお客様も多いですから、

 大歓迎です」

男はそう言うとにこりと微笑んだ。

その笑顔が爽やかで僕の緊張は僅かに解れた。

「私はちょっと買い忘れたものがあるので

 出てきますが、

 中に1人いますから、

 玄関で声をかけて下さい」

そして男はミニクーパーに乗り込むと

颯爽と走り去った。

僕はただ茫然とその車を見送った。

一体どこまで買い物に行くのだろう

という疑問が真っ先に頭に浮かんだ。

残された僕はふたたび門と対峙した。

今ならまだ引き返すこともできる。

しかし。

見えない力に引き寄せられるかのように

僕は門に手を掛けた。


敷地内に足を踏み入れると、

まるで別世界に来たかのような錯覚に陥った。

辺鄙な山奥に建っているとはいえ

随分と広大な敷地だった。

石畳を歩きながら

僕は右手に広がる庭に目を奪われた。

芝は綺麗に手入れがされていて、

奥に見える池には小さな橋が架かっていた。

建物は洋風なのに

庭は和風という不調和な光景に

僕は不思議と情趣を感じた。

玄関にはインターホンもなく、

呼び鈴らしきものも見当たらなかった。

しかし。

扉に手をかけるとすんなりと開いた。

恐る恐る中に入ると

目の前にホールが広がっていた。

「・・すみません」

しばらく待ったが反応はなかった。

「すみませーん」

次は少し大きな声を出した。

たしかに広い空間だが、

人がいれば聞こえていないはずはない

と思うのだが。

2階にいるとすれば

声が届いていないのかもしれないと思い、

僕はもう一度、

今度はさらに大きな声を出した。

「どなたかいらっしゃいませんか!」

その時。

右奥に続いている廊下の方に人影が見えた。

「あ~もう。

 うるさいっ!

 一度言えばわかるわよ!」

そう言いながらこちらに歩いてきたのは

文字通り影が現れたと表現するに

相応しい人物だった。

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